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民事訴訟

【実務】文書の真正(3)文書の真正を争う方法

2025/04/23 更新

印鑑と文書の真正

(1)判例(最判昭和39年5月12日民集18巻4号597頁)により、本人の印鑑の印影があるときには、本人の意思に基づいて、その印影が押印されたことが推定される。

(2)民事訴訟法228条4項により、本人の意思に基づいて、その印影が押印されたときには、その文書が本人の意思に基づいて作成されたと推定される。

本人の印影    

  ↓   判例(最判昭和39年5月12日民集18巻4号597頁)

本人の意思に基づいて、その印影が押印されたことが推定される。

   ↓   民事訴訟法228条4項  

その文書が本人の意思に基づいて作成されたと推定される。

文書の真正が争いになった場合の立証責任

(1)もともと、挙証者が、文書の作成者だとする人物の意思に基づいてその文書が作成したことの立証責任を負っている(民事訴訟法228条1項)。

(2)これに対して、 民事訴訟法228条4項は、本人の意思に基づいて、その印影が押印されたときには、その文書が本人の意思に基づいて作成されたと推定されると規定する。

 契約書等に押印する場合には、自分の意図と違う文書になっていないかチェックするのが通常である。同法は、本人の意思に基づいてその印影が押印されたときには、その文書が本人の意思に基づいて作成されたと推定される、という経験則を記載したものである。したがって、同法の「推定」は立証責任までは転換させない(法定証拠法則説)。

(3)民事訴訟法228条4項の「推定」を争う者(「文書の真正」を争う)相手方は、「文書の作成者だとする人物の意思に基づいてその文書が作成されたか」どうかについて、合理的疑いを抱かせれれば足りる。

争い方(第一段の推定の争い方)

(1)判例(最判昭和39年5月12日民集18巻4号597頁)により、本人の印鑑の印影があるときには、本人の意思に基づいて、その印影が押印されたことが推定される。

(2)この判例法理は、他人が本人の承諾なく本人の印鑑を使うことは難しい。したがって、本人の印鑑による印影があれば、本人の意思に基づいてその印影が押印されたと推察されることを根拠としている。

(3)したがって、これを争う者は以下の主張することが考えられる。

 ①印鑑を紛失または盗まれて、第三者が勝手に印鑑を使った。
 ②第三者に印鑑の利用を許可したが、その第三者が許可した範囲を超えて印鑑を使用した。
 ③第三者に印鑑を預けていたが、その第三者が無断で印鑑を使用した。
参考
 田中豊 「事実認定の考え方と実務〔第2版〕」103頁以下

争い方(第ニ段の推定の争い方)

(1)民事訴訟法228条4項により、本人の意思に基づいて、その印影が押印されたときには、その文書が本人の意思に基づいて作成されたと推定される。

(2)契約書等に押印する場合には、自分の意図と違う文書になっていないかチェックするのが通常である。同法は、本人の意思に基づいてその印影が押印されたときには、その文書が本人の意思に基づいて作成されたと推定される、という経験則を記載したものである。

(3)したがって、これを争う者は以下の主張することが考えられる。

 ①自分の意思で印鑑を押したのは事実であるが、第三者が勝手に文書を追加して文書を完成させた。
 ②自分の意思で印鑑を押したのは事実であるが、第三者が文書を改ざんした。
 ③自分の意思で印鑑を押したのは事実であるが、直前に文書をすり替えられて気が付かなかった。

争い方(意思能力、錯誤など)

(1)処分証書は、意思表示ないし法律行為が記載された文書である。契約書は処分証書である。

(2)処分証書について「真正成立した(形式的証拠能力がある)」、と認定されれば、「本人が(文書に記載された)当該意思表示ないし法律行為をした。」と認定される。

(3)つまり、本人には、そのような意思がないとしても、契約書等を作成してこれに署名等した場合には、当該意思表示ないし法律行為をした、と認定される(効果)。

(4)契約書等に押印する場合(法律文書を自分の意思で作成する者)は、これが契約の成立の証拠になることを自覚して押印する(法律文書を作成する)のが通常であるから、特段の事情がない限り、「本人が(文書に記載された)当該意思表示ないし法律行為をした。」と認定されるからである。

(5)そのような意思がないと主張する者は、当該意思表示ないし法律行為が存在することを前提に、抗弁として、意思能力がないことや、錯誤や、虚偽表示等の主張をすることになる。

参考
 田中豊 「事実認定の考え方と実務〔第2版〕」115頁以下

意思能力無能力という主張については、「文書が本人の意思に基づいて作成されたとはいえない、」という主張であり、抗弁になるだけでなく、意思表示不存在という否認の主張になる、という整理もありえる。

参考
 田中豊 「事実認定の考え方と実務〔第2版〕」94頁以下
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