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民事訴訟

【実務】文書の真正(2)要件と効果

2025/04/23 更新

私文書の種類

(1)処分証書は、意思表示ないし法律行為が記載された文書である。

 手形・小切手、遺言書、解約通知書、契約書は処分証書である。

(2)報告文書は、見聞きした事実や感想、判断が記載された文書である。

 商業帳簿、領収書、手紙、日記、陳述書は報告文書である。

民事訴訟法228条(文書の成立)
1項 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2項 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。
3項 公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。
4項 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5項 第二項及び第三項の規定は、外国の官庁又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。

形式的証拠力

(1)文書の記載内容を証拠とするには、文書が「真正に成立した」ことが必要である(民事訴訟法228条1項)。

(2)「真正に成立した」とは、その文書が本人の意思に基づいて作成されたことを意味する。

(3)「真正に成立した」ことが立証された場合、文書に形式的証拠力があるとされる。

実質的証拠力

(1)文書に形式的証拠力があるとしても、その文書の内容が真実であると認められるわけではない。

(2)文書の記載内容が、要証事実においてどの程度役立つかは、を実質的証拠力という。

(3)実質的証拠力は、裁判官の自由な判断に任されており(民事訴訟法247条)、他の証拠とも総合的に判断する。

印鑑と文書の真正

(1)判例(最判昭和39年5月12日民集18巻4号597頁)により、本人の印鑑の印影があるときには、本人の意思に基づいて、その印影が押印されたことが推定される。

(2)民事訴訟法228条4項により、本人の意思に基づいて、その印影が押印されたときには、その文書が本人の意思に基づいて作成されたと推定される。

本人の印影    

  ↓   判例(最判昭和39年5月12日民集18巻4号597頁)

本人の意思に基づいて、その印影が押印されたことが推定される。

   ↓   民事訴訟法228条4項  

その文書が本人の意思に基づいて作成されたと推定される。

参考
 田中豊 「事実認定の考え方と実務〔第2版〕」75頁以下

筆跡と文書の真正

(1) 本人の印鑑の印影があるとしても、第三者が勝手にこれを押印する可能性がある。しかし、本人の自筆による署名があるときについてはこれがない。

(2)(本人が署名をしたことを認めるなど、本人の署名であるが争いのないとき)本人の自筆による署名があるときには、民事訴訟法228条4項により、民事訴訟法228条4項により、その文書が本人の意思に基づいて作成されたと推定される。

処分証書の形式的証拠力が認めた場合の効果

(1)処分証書は、意思表示ないし法律行為が記載された文書である。契約書は処分証書である。

(2)処分証書について「真正成立した(形式的証拠能力がある)」、と認定されれば、「本人が(文書に記載された)当該意思表示ないし法律行為をした。」と認定される。

(3)つまり、本人には、そのような意思がないとしても、契約書等を作成してこれに署名等した場合には、当該意思表示ないし法律行為をした、と認定される(効果)。

(4)契約書等に押印する場合(法律文書を自分の意思で作成する者)は、これが契約の成立の証拠になることを自覚して押印する(法律文書を作成する)のが通常であるから、特段の事情がない限り、「本人が(文書に記載された)当該意思表示ないし法律行為をした。」と認定されるからである。

(5)そのような意思がないと主張する者は、当該意思表示ないし法律行為が存在することを前提に、抗弁として、意思能力がないことや、錯誤や、虚偽表示等の主張をすることになる。

参考
 田中豊 「事実認定の考え方と実務〔第2版〕」115頁以下

(1)文書に形式的証拠力があるとしても、その文書の内容が真実であると認められるわけではない。
(2)しかし、文書の形式体証拠能力が認められれば、認定されれば、「本人が(文書に記載された)当該意思表示ないし法律行為をした。」と認定される。つまり、特段の事情のない限り、実質的証拠力があるものと認められることになる。
参考
 田中豊 「事実認定の考え方と実務〔第2版〕」94頁以下

報告文書の形式的証拠力が認めた場合の効果

(1)報告文書は、見聞きした事実や感想、判断が記載された文書である。

(2)報告文書は、さまざまな文書があり、個別にその文書の実質的証拠力(文書の記載内容が、要証事実においてどの程度役立つか)を考慮することになります。

 例えば、商業帳簿、領収書については、処分証書と同程度の実質的証拠力を認めてよいと思われます。

参考
 田中豊 「事実認定の考え方と実務〔第2版〕」115頁以下

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