【実務】時期に遅れた攻撃防御方法(期日の運用)
2025/04/13 更新
裁判の流れ
(1)民事裁判の期日は、原告と被告が交互に書面や証拠を出し合う期日を経て、尋問、その後に判決と進んで生きます。
(2)原告の弁護士、被告の弁護士は、双方が書面で反論し、これを裏付ける証拠を、期日まで提出に提出することで進んでいきます。
尋問手続への移行
(1)書面をお互いに提出していくと、同じ主張の繰り返しなったり、(裁判所に認定してほしい、と思う)事実の主張がつきたりします。
(2)お互いの主張で言いたいことが無くなるまでは、数回の文書のやりとりが必要です。例えば、原告が書面を一週間前に提出し、期日で、今後は、被告が書面を書くことや、いつまでに記載するかを返事します。
書面を出すには、依頼者とのアポ(一週間)、ヒアリングして書面作成(一週間)、依頼者に送ってチェックしてもらう(一週間)、微調整して提出する(一週間)だと考えれば、1ヶ月は必要です。
1回の期日は1ヶ月以上の間隔が必要となります。しかも、原告が書面を出して、被告が書面を出す、一往復には、2回の期日が必要で、現実的には3ヶ月以上の期間が必要となります。
(3)お互いに主張する書類や、提出する書類が無くなったと裁判所が判断して、尋問手続に移行するのが通常です。
時期に遅れた攻撃防御方法
(1)これらの期日を経て、争点整理が終わった後に、新たな主張(事実や、法的主張)や、新たな証拠が出てくることがあります。
この場合には、「時期に遅れた攻撃防御方法」が問題となります。
(2)これを認めると、3ヶ月から6ヶ月は裁判期間が伸びるだけです。
民事訴訟法156条(攻撃防御方法の提出時期) 攻撃又は防御の方法は、訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなければならない。 民意訴訟法156条の2(審理の計画が定められている場合の攻撃防御方法の提出期間) 第147条の三第一項の審理の計画に従った訴訟手続の進行上必要があると認めるときは、裁判長は、当事者の意見を聴いて、特定の事項についての攻撃又は防御の方法を提出すべき期間を定めることができる。 民事訴訟法157条(時機に後れた攻撃防御方法の却下等) 1項 当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。 2項 攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、前項と同様とする。 民意訴訟法157条の2 (審理の計画が定められている場合の攻撃防御方法の却下) 第147条の3第3項又は第156条の2(第170条第5項において準用する場合を含む。)の規定により特定の事項についての攻撃又は防御の方法を提出すべき期間が定められている場合において、当事者がその期間の経過後に提出した攻撃又は防御の方法については、これにより審理の計画に従った訴訟手続の進行に著しい支障を生ずるおそれがあると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。ただし、その当事者がその期間内に当該攻撃又は防御の方法を提出することができなかったことについて相当の理由があることを疎明したときは、この限りでない。 |
時期に遅れた攻撃防御方法
時期に遅れた攻撃防御方法であるかは、以下の事情を考慮して判断されます。
(1)控訴審理の場合には、第一審の経過も含めて判断する。
(2)相殺等については、追い込まれてからの主張であることや、判決後に請求異議等で争われる可能性があることも考慮すると、その主張を認める方向で考えることなる。
(3)不十分なまま裁判をした場合に、裁判所の釈明義務違反(既にできている事実主張を考えた場合に妥当な結論を出せるか、)という観点が問題なれば、その主張を認める方向で考えることなる。
参考
岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 総論・民法1」136頁