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民事訴訟

【実務】管轄

2025/04/14 更新

事件の種類による管轄

(1)例えば、離婚事件については、家庭裁判所に離婚調停を提起してから(調停前置主義)、家庭裁判所で取り扱う。

(2)一般的な民事事件については、地方裁判所もしくは簡易裁判所が取り扱う。

事物管轄

(1)簡易裁判所は、140万円以下の訴訟について管轄を有する(裁判所法24条1項1号)。

(2)地方裁判所は、140万円を超える訴訟と、(140万円以下を含む)土地の訴訟について管轄を有する(裁判所法33条1項1号)。

(3)したがって、140万円以内であり、土地の訴訟については簡易裁判所と地方裁判所のどちらも管轄を持つ。

裁判所法  
第24条(裁判権)
1項 地方裁判所は、次の事項について裁判権を有する。
 一 第三十三条第一項第一号の請求以外の請求に係る訴訟(第三十一条の三第一項第二号の人事訴訟を除く。)及び第三十三条第一項第一号の請求に係る訴訟のうち不動産に関する訴訟の第一審
 (以下省略)  

第33条(裁判権)
1項 簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。
 一 訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。
 (以下省略)  

土地管轄

 原告は、以下で認められる管轄から、一つを選んでその裁判所に訴状等を提出することができる。

(1)普通裁判籍
 民事訴訟法4条は、被告の住所地等に土地管轄を認める(4条)。

民事訴訟法4条(普通裁判籍による管轄)
1項 訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
2項 人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。
3項 (省略)
4項 法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は、その主たる事務所又は営業所により、事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
5項 (省略)
6 国の普通裁判籍は、訴訟について国を代表する官庁の所在地により定まる。

(2)特別裁判籍
 民事訴訟法5条、6条、7条は、事件の内容を考慮して認められる管轄である。

 民事訴訟法5条で代表的なのは、義務履行地(5条1号)や不法行為地(5条9号)である。

 義務履行地については、金銭請求であれば民法484条1項及び商法516条により債権者の住所地となる。つまり、金銭請求をする場合には債権者(原告)の住所地等も義務履行地(5条1号)として管轄が認められる。

 もっとも、労働事件の賃金訴訟については、労基法24条が適用されて、義務履行地は会社の住所地となる。

民事訴訟法5条(財産権上の訴え等についての管轄)
第五条 次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。
一 財産権上の訴え        
 義務履行地

(省略)

九 不法行為に関する訴え
 不法行為があった地
民法484条(弁済の場所及び時間)
1項 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
(以下省略)

商法516条 (債務の履行の場所)
 商行為によって生じた債務の履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、特定物の引渡しはその行為の時にその物が存在した場所において、その他の債務の履行は債権者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)において、それぞれしなければならない。

(3)併合請求における管轄

 一つの訴えで複数の請求をまとめてする場合は、一つの訴えの管轄があれば、他の訴えもその裁判所に管轄が認められる(7条)。
 原告は、原告にとって一番都合がよい裁判所宛に訴状を出すことになる。

民事訴訟法7条(併合請求における管轄)
  一の訴えで数個の請求をする場合には、第四条から前条まで(第6条第3項を除く。)の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる。ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第38条前段に定める場合に限る。

合意管轄

(1)当事者は、第一審の土地管轄及び事物管轄について合意できる(11条)。

(2)実務上は、原告側の弁護士が被告側の弁護士に電話して、「◯◯の裁判所で、訴訟できないか」相談することである。

(3)原告は、被告と管轄合意書を取り交わして、その管轄合意書を添付して訴状を、その裁判所に提出する。

民事訴訟法11条 (管轄の合意)
1項 当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。
2項 前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。
3項 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

応訴管轄

(1)第一審の土地管轄及び事物管轄について本来、管轄がなかったとしても、被告が管轄の間違いについて指摘せずに、弁論や申述をした場合には、同裁判所で管轄が成立する(12条)。

(2)裁判所は、訴状を受け取った段階で、管轄がなければ、それを指摘して裁判所に出し直させるのが通例である。応訴管轄が成立する可能性があるから、そのまま手続を進めるようなことはしない。

(3)もっとも、管轄合意書は出せないが、「被告側弁護士も、当該裁判所の方が都合がよく、管轄違いとは主張しない。」という事情がある場合には、原告は、その旨を裁判所に上申し、そのまま訴状を送達させて、被告側弁護士が「管轄違い」を主張しなければ、応訴管轄が成立することがある。

 事後的な合意が見込めるケースで活用する管轄である。

民事訴訟法12条(応訴管轄)
被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判所は、管轄権を有する。

参考

 安西明子ほか「民事訴訟法(第3版) (有斐閣ストゥディア)」57頁以下

 

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