【実務】訴訟上の和解
2025/04/11 更新
訴訟上の和解
(1)裁判中に、裁判官が判決の見込みを伝え、このへんで和解しませんか、と和解を打診することがあります。
(2)裁判中に成立するのが、訴訟上の和解です。
民事訴訟法267条(和解調書等の効力) 和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する |
訴訟上の和解の例
和解案 1 被告は、原告に対し、本件解決金として70万円の支払義務があることを認め、これを令和7年2月28日限り、原告の指定する次の口座に振り込む方法で支払う。ただし、振込方法は被告の負担とする。 2 原告と被告は、本件に至る経緯及び本和解の内容(本和解条項を含む。)について、正当な理由なく第三者に口外しないことを約束する。 3 原告は、その余の請求を放棄する。 4 原告及び被告は、原告と被告との間には、この和解条項に定めるもののほかに、何らの債権債務がないことを相互に確認する。 5 訴訟費用は各自の負担とする。 |
和解で決めること(金額)
①和解金の総額、②一括か、分割か(分割回数)、③初回の支払日を決める必要があります。
和解で決めること(守秘義務条項)
下記のような守秘条項を入れるかどうかを考える必要があります。
原告と被告は、本件に至る経緯及び本和解の内容(本和解条項を含む。)について、正当な理由なく第三者に口外しないことを約束する。 |
和解で決めること(本件に関し)
(1)初めに
和解条項に「本件に関し」を入れるかどうか問題となります。
例えば、AさんとBさんが、借金問題で訴訟となっていたとします。また、AさんとBさんの間で、遺産について別の争いがあるとします。
(2)「本件に関し」を入れる
「本件に関し」が入れば、「訴訟となった本件についてのみ解決した。」という意味になりますので、「AさんとBさんの間で、遺産について別の争いがある」ことは、別に紛争が残っている、という意味になります。
原告及び被告は、原告と被告との間には、本件に関し、この和解条項に定めるもののほかに、何らの債権債務がないことを相互に確認する。 |
(3)「本件に関し」を入れない
「本件に関し」を入れない場合には、AさんとBさんの間の紛争を全て解決したという意味になります。
つまり、「AさんとBさんの間で、遺産について別の争いがあるが、これも解決済みです。」という意味になります。
原告及び被告は、原告と被告との間には、この和解条項に定めるもののほかに、何らの債権債務がないことを相互に確認する。 |
「その余の請求の放棄」の意味
(1)例えば、AさんとBさんが、借金問題で、訴訟となって、下記の文言で和解したとします。
(2)「原告は、その余の請求を放棄する。」というのは 「訴訟となった本件について、和解条項で記載されている請求を除いて、その余の請求を放棄する」という意味になります。
例えば、訴訟となっている件で、利息の請求が可能だったとしても、その利息の請求は放棄する、という意味になります。
3 原告は、その余の請求を放棄する。 4 原告及び被告は、原告と被告との間には、この和解条項に定めるもののほかに、何らの債権債務がないことを相互に確認する。 |
訴訟費用(訴訟上の和解)
(1)訴訟にて、「Aさんは、Bさんに100万円支払う。なお、訴訟費用は各自の負担とする。」という和解をすることがあります。
これは、原告のBさんが訴訟提起のために、訴訟費用収入印紙や切手を消費したとしても、「Bさんは100万円以外に、Aさんには請求できない。」ということを意味します。
(2)訴訟費用計算は複雑です。そのため、実務上、和解の場合には、双方負担となることになる(訴訟費用を負担した人がこれを支払うことになる)のがほとんどです。
5 訴訟費用は各自の負担とする。 |
支払い口座
(1)被告は、原告にお金を支払うとして、原告代理人の口座に支払う、という形になります。
(2)したがって、和解することが決まったら、もしくは、和解期日後に、「原告代理人の口座」を送ることになります。
和解のメリット
(1)判決が出ても、どちらかが控訴するかもしれません。そうなると、永遠に終わりません。
和解については、和解してしまえば、事件が終了します。
(2)判決で支払いが命じられても、結局回収できないことが多いのが現状です。心理的な問題なのか、和解の方が回収率が高い、といわれています。
和解交渉のテクニック
(1)被告が和解しても、実際に支払わない可能性があります。したがって、その履行を担保する方法を検討します。
(2)例えば、裁判所で和解するその場にて、被告代理人が現金でその場で原告代理人に支払う、という席上交付(せきじょうこうふ)をすることがあります。
(3)また、被告代理人が被告から和解金を預かって、それを報告する。被告代理人が和解金を預かってから、和解するということをすることもあります。