【民法】占有と、明渡し訴訟の被告
2025/04/22 更新
占有の有無
1 問題
(1)賃貸人は、賃借人Aとの賃貸借契約について、賃料不払いを理由に解除した。
(2)不動産にはAは居住しておらず、家族がだけが居住していた。
(3)Aを被告とする判決によって、Aの家族に対し、不動産の明渡しの強制執行ができるか、問題となる。
2 占有の有無
これは、占有の有無の問題である。
3 占有の判断材料
占有は、表札、建物内に残置されている動産の内容、建物の利用方法、建物を利用している者の属性等を考慮して判断される。
賃借人の家族
(1)賃借人が長期的に不在でも、賃借人の家族が居住している場合には、賃借人の占有が認められる。
(2)賃借人を被告とする明渡し訴訟の判決をもって、占有している賃借人の家族に対し、明け渡しの強制執行ができる。
(3)賃借人の家族は独立した占有が認められないが、これは占有補助者にあたるから、と説明される。
会社の従業員(職場)
(1)会社の従業員がその場所で会社の業務をしている場合には、会社の占有が認められる。
(2)会社を被告とする明渡し訴訟の判決をもって、占有している会社の従業員に対し、明け渡しの強制執行ができる。
会社の従業員(社宅)
(1)会社の従業員が、会社から社宅として賃料を支払っている場合には、その従業員の占有が、会社の占有とは独立したものとして認められる余地がある。
社員が世間並みの相当家賃を支払っていう場合について、その従業員の占有が、会社の占有とは別に認められるとした判例(最判昭和31年11月16日民集10巻11号1453頁)もある。
(2)会社を被告とする明渡し訴訟の判決をもって、占有している会社の従業員に対し、明け渡しの強制執行ができない余地がある。
この場合には、実際に建物を占有する人物も被告に加えて、不動産明渡し訴訟をすべきである。
参考
竹田光広(編)「裁判実務シリーズ10 民事執行実務の論点」300頁以下