ご質問・ご相談などお気軽にお問い合わせください。

TEL 06-6773-9114

FAX 06-6773-9115

受付時間 : 平日10:00 ~18:00 土日祝除く

メールでの
お問い合わせ

民事訴訟

【重要判例】判例(遺言者の死亡後、もしくは生存中の遺言無効確認の訴え)

2025/04/20 更新

最判昭和47年2月15日民集26巻1号30頁

(1)「遺言無効確認の訴は、遺言が無効であることを確認するとの請求の趣旨のもとに提起されるから, 形式上過去の法律行為の確認を求めることとなるが、請求の趣旨がかかる形式をとっていても、遺言が有効であるとすれば、それから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合で、 原告がかかる確認を求めるにつき法律上の利益を有するときは、適法として許容されうる」

(2)本判決については、「遺言者の死亡後に、相続人がした遺言無効確認の訴えは適法である。」と判断した判決であるとも理解されている。

解説
(1)本判決は、遺言無効確認確認の対象は、形式上、過去の法律行為の確認を求める訴えであるから、対象選択の適否を欠くものの、紛争解決の現実的必要性の有無を考慮して、③即時確定の利益を認めた判例である。
  形式上、過去の法律関係の確認を求める訴えであっても、その実質を見れば、現在の法律関係の不存在の訴えであると、請求の趣旨を書き直すことができることから、即時確定の利益が認めた。
(2)では、遺言無効確認確認の訴えにより、原告が保護を求めた利益は何か。
 遺言無効確認の訴えの趣旨は、(遺言が無効であることを前提として取得できる)相続財産の所有権の確認の訴えであるとも理解できます。仮に、遺言無効確認の訴えられないとすると、相続財産を全てリストアップして、これらの個々の財産の所有権の確認を求める訴えを適する必要があります。しかし、全ての財産をリストアップして確認の訴えを求めることは煩雑であり、かつ、漏れが出る可能性がある。したがって、即時確定の利益を認めた判例である、と説明されている。

参考
 名津井吉裕 「事例で考える民事訴訟法」47頁以下
 田中豊「論点精解民事訴訟法 要件事実で学ぶ基本原理」413頁以下

最判昭和61年3月13日民集40巻2号389頁

 「共同相続人間において、 相続人の範囲および各法定相続分の割合については実質的な争いがなく、ある財産が被相続人の遺産に属するか否かについて争いがある場合、その遺産帰属性を確定するため、自己の法定相続分に応じた共有持分を有することの確認を求める訴えを提起することは、もとより許されるのであるが、右訴えにおける原告勝訴の確定判決は、原告が当該財産につき右共有持分を有することを既判力をもって確定するにとどまり、その取得原因が被相続人からの相続であることまで確定するものでないから、右確定判決に従って当該財産を遺産分割の対象としてされた遺産分割の審判が確定しても、審判における遺産帰属性の判断は既判力を有しない結果 (最大判昭和41・3・2民集20巻3号360 頁)、後の民事訴訟における裁判により当該財産の遺産帰属性が否定され、ひいては右審判も効力を失うこととなる余地があり、それでは、遺産分割の前提問題として遺産に属するか否かの争いに決着をつけようとした原告の意図に必ずしもそぐわないこととなる一方、争いのある財産の遺産帰属性さえ確定されれば、 遺産分割の手続が進められ、当該財産についてもあらためてその帰属が決められることになるのであるから、当該財産について各共同相続人が有する持分の割合を確定することは、さほどの意味があるものとは考えられない。」
 「これに対し、 遺産確認の訴えは、右のような共有持分の割合は問題にせず、端的に、当該財産が現に被相続人の遺産に属すること、 換言すれば、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えであってその原告勝訴の確定判決は、 当該財産が 遺産分割の対象たる財産であることを既判力をもって確定し、したがって、これに続く遺産分割審判の手続においておよびその審判の確定後に 当該財産の遺産帰属性を争うことを許さず、 もって、 原告の前記意思により適った紛争の解決を図ることができるところであるから、 かかる訴えは適法というべきである。
 もとより、共同相続人が分割前の遺産を共同所有する法律関係は、基本的には民法249条以下に規定する共有と性質を異にするものではないが (最3小判昭和30・5・31民集 9巻6号793頁)、 共同所有の関係を解消するために採るべき裁判手続は、前者では遺産分割審判であり、後者では共有物分割訴訟であって (最2小判昭和50・117民集29巻10号1525頁)、 それによる所有権取得の効力も相違するというように制度上の差異があることは否定し得ず、 その差異から生じる必要性のために遺産確認の訴えを認めることは、 分割前の遺産の共有が民法249条以下に規定する共有と基本的に共同所有の性質を同じくすることと矛盾するものではない。」

解説
(1) 上記判例は「遺産確認の訴えは、被相続人の死亡時(過去の)法律関係を確認する訴えではなく、現在(遺産分割協議前の)、相続人の共有状態の遺産の確認の訴えである。」として、過去の法律関係の確認を求める訴えではなく、実質的には、現在の法律関係の確認を求める訴えである(対象選択の適否)とする。
(2)さらに、同訴えは、「当該財産が 遺産分割の対象たる財産であることを既判力をもって確定し、したがっ て、これに続く遺産分割審判の手続においておよびその審判の確定後に 当該財産の遺産帰属性を争うことを許さず、 もって、 原告の前記意思により適った紛争の解決を図ることができる」として、③即時確定の利益を認めた。

参考
 田中豊「論点精解民事訴訟法 要件事実で学ぶ基本原理」418頁以下

最判平成11年6月11日家月52巻1号81頁

(1)「Xが遺言者である Yの生存中に本件遺言が無効であることを確認する旨の判決を求める趣旨は、 Yが遺言者である Yの死亡により遺贈を受けることとなる地位にないことの確認を求めることによって、推定相続人であるXの相続する財産が減少する可能性をあらかじめ除去しようとするにあるものと認められる。 

(2)「遺言は遺言者の死亡により初めてその効力が生ずるものであり (民法985条1項)、遺言者はいつでも既にした遺言を取り消すことができ (同法1022条)、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときには遺贈の効力は生じない (同法 994条1項)のであるから、遺言者の生存中は遺贈を定めた遺言によって何らかの法律関係も発生しないのであって、受遺者とされた者は、何らかの権利を取得するものではなく, 単に将来遺言が効力を生じたときは遺贈の目的物である権利を取得することができる事実上の期待を有する地位にあるにすぎない (最高裁昭和30年 (オ) 第95号同31年10月4日第一小法廷判 決・民集10巻10号1229 頁参照)。 したがって、このような受遺者とされる者の地位は、確認の訴えの対象となる権利又は法律関係には該当しないというべきである。

(3)遺言者が心神喪失の常況にあって、回復する見込みがなく、 遺言者による当該遺言の取消し又は変更の可能性が事実上ない状態にあるとしても,、受遺者とされた者の地位の右のような性質が変わるものではない。 」「したがって、Xが遺言者である Yの生存中に本件遺言の無効確認を求める本件訴えは、不適法なものというべきである。」

解説
(1)最判昭和47年2月15日民集26巻1号30頁によれば、「遺言無効確認確認の対象は、形式上、過去の法律行為の確認を求める訴えであるために、対象選択の適否を欠くが、紛争解決の現実的必要性の有無を考慮して、遺言確認の訴えについて、即時確定の必要性を認められば、確認の利益が認められる。
(2)この点、遺言者が心神喪失の常況にあって、回復する見込みがなく、遺言者による当該遺言の取消し又は変更の可能性が事実上ないことを加味すれば、遺言によって、推定相続人が相続財産を失う、不安、危険を排除するという利益が法律上保護に値する地位だとすれば、即時確定の必要性を認めてよい、という考え方もありえる。
(3)しかし、遺言者が存命中であって、遺言は何の効力も持たない。したがって、本判決は、「Xがその不存在の確認を求めた受遺者(遺贈を受け取る者)の地位が、現在の法律的な地位とは評価できず、対象選択の適否を否定した」判例である。
(4)しかし、「最判昭和47年2月15日民集26巻1号30頁」との関係であれば、相続人である原告の現在の法律関係としして理解きできるか、という観点で考えるほうがより整合的である。
 つまり、本判決については、遺言の無効によって保護しようとしている、遺言の無効を前提とする推定相続人の地位が、被相続人の生存中は法律上保護に値しないという理由で、「即時確定の必要性」が否定した判例であると理解する考え方もあります。


参考
 名津井吉裕 「事例で考える民事訴訟法」46頁、47頁以下
「民事訴訟」トップに戻る

Contact.お問い合わせ

    ※個人情報の取り扱いについては、プライバシーポリシーをご覧ください。