【論点】判例(遺言者の死亡後、もしくは生存中の遺言無効確認の訴え)
2025/04/05 更新
確認の利益
確認の訴え
(1)確認の訴えとは、ある権利関係、法律関係について本案件判決をすることが、原告の権利、法律関係に現存する不安危険を除去するために、必要かつ適切であることをいう。
(2)確認の訴えは、以下の3つに分けて考えられる、とされています。
①確認の訴えが紛争の解決方法として適切どうか(方法選択の適否)。
②確認の対象として選択された訴訟物か適切か(対象選択の適否)。
③確認判決をすべき現実的必要性が認められるか(即時確定の必要性)。
(1)①②の基準は、独立した基準ではなく、総合的に考慮して③即時確定の必要性の有無が問題となります。 (2)確認対象が「現在の」 「現在の権利関係、法律関係」 ではない場合には、かつての判例は直ちに確認の利益を否定してきました。 しかし、現在の判例は、紛争解決の現実的必要性の有無を考慮して、③即時確定の必要性が認められば、訴えの利益が認められる余地がある、というのが判例の考え方です。 |
①方法選択の適否
他の紛争解決方法がより適切であるとすれば、確認の利益は認められない。給付の訴えには執行力がある。給付の訴えが可能な場合には、訴えの利益は認められないのが原則です。
②対象選択の適否
確認の対象は現在の権利関係、法律関係でなければならない、というのが原則です(対象選択の適否)。
③即時確定の必要性
(ア)原告が確認を求めている権利関係、法律関係が具体的かつ現実的なものであり、(イ)その地位が被告等の行為により、不安や危機にひんしていることをいう(即時確定の必要性)。
遺言者の死亡後、もしくは生存中の遺言無効確認の訴え
最判昭和47年2月15日民集26巻1号30頁
(1)「遺言無効確認の訴は、遺言が無効であることを確認するとの請求の趣旨のもとに提起されるから, 形式上過去の法律行為の確認を求めることとなるが、請求の趣旨がかかる形式をとっていても、遺言が有効であるとすれば、それから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合で, 原告がかかる確認を求めるにつき法律上の利益を有するときは、適法として許容されうる」
(2)本判決については、「遺言者の死亡後に、相続人がした遺言無効確認の訴えは適法である。」と判断した判決であるとも理解されています。
解説 (1)本判決は、遺言無効確認確認の対象は、形式上、過去の法律行為の確認を求める訴えであるから、対象選択の適否を欠くものの、紛争解決の現実的必要性の有無を考慮して、③即時確定の必要性を認めは判例であると、言われています。 (2)では、遺言無効確認確認の訴えにより、原告が保護を求めた利益はなんでしょうか。 遺言無効確認の訴えの趣旨は、(遺言が無効であることを前提として取得できる)相続財産の所有権の確認の訴えであるとも理解できます。仮に、遺言無効確認の訴えられないとすると、相続財産を全てリストアップして、これらの個々の財産の所有権の確認を求める訴えを適する必要があります。しかし、全ての財産をリストアップして確認の訴えをて求めることは煩雑であり、かつ、漏れがでる可能性がある。したがって、即時確定の利益を認めた判例である、と説明されます。 参考 名津井吉裕 「事例で考える民事訴訟法」47頁以下 「民事訴訟法判例百選(第6版)」52頁以下 |
最判平成11年6月11日家月52巻1号81頁
(1)「Xが遺言者である Yの生存中に本件遺言が無効であることを確認する旨の判決を求める趣旨は、 Yが遺言者である Yの死亡により遺贈を受けることとなる地位にないことの確認を求めることによって、推定相続人であるXの相続する財産が減少する可能性をあらかじめ除去しようとするにあるものと認められる。
(2)「遺言は遺言者の死亡により初めてその効力が生ずるものであり (民法985条1項)、遺言者はいつでも既にした遺言を取り消すことができ (同法1022条)、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときには遺贈の効力は生じない (同法 994条1項)のであるから、遺言者の生存中は遺贈を定めた遺言によって何らかの法律関係も発生しないのであって、受遺者とされた者は、何らかの権利を取得するものではなく, 単に将来遺言が効力を生じたときは遺贈の目的物である権利を取得することができる事実上の期待を有する地位にあるにすぎない (最高裁昭和30年 (オ) 第95号同31年10月4日第一小法廷判 決・民集10巻10号1229 頁参照)。 したがって、このような受遺者とされる者の地位は、確認の訴えの対象となる権利又は法律関係には該当しないというべきである。
(3)遺言者が心神喪失の常況にあって、回復する見込みがなく、 遺言者 による当該遺言の取消し又は変更の可能性が事実上ない状態にあるとしても,、受遺者とされた者の地位の右のような性質が変わるものではない。 」「したがって、Xが遺言者である Yの生存中に本件遺言の無効確認を求める本件訴えは、不適法なものというべきである。」
解説 (1)最判昭和47年2月15日民集26巻1号30頁によれば、「遺言無効確認確認の対象は、形式上、過去の法律行為の確認を求める訴えであるために、対象選択の適否を欠くが、紛争解決の現実的必要性の有無を考慮して、遺言確認の訴えについて、即時確定の必要性を認められば、確認の利益が認められることもあります。 (2)判例は、確認対象が「現在の」 「現在の権利関係、法律関係」 ではない場合(方法選択の適否が否定される)場合でも、紛争解決の現実的必要性の有無を考慮して、③即時確定の必要性が認められば、確認の利益を認めています。 (3)したがって、遺言者が心神喪失の常況にあって、回復する見込みがなく、遺言者による当該遺言の取消し又は変更の可能性が事実上ないことを加味すれば、遺言によって、推定相続人が相続財産を失う、不安、危険を排除するという利益が法律上保護に値する地位だとすれば、即時確定の必要性を認めよい、という考え方もできます。 (4)本判決の文言を素直に読めば、Xがその不存在の確認を求めた受遺者の地位が、対象選択の適否を欠く、という理由で、確認の利益を否定したように理解できます。 (5)しかし、このように理解しては、前述の「最判昭和47年2月15日民集26巻1号30頁」と整合的に理解できません。 (4)そこで、本判決については、遺言の無効によって保護しようとしている、遺言の無効を求めている推定相続人の地位について、被相続人が生存中は法律上保護に値する地位を有しないことを根拠に、「即時確定の必要性」が否定した判例であると理解する考えたもあります。。 参考 名津井吉裕 「事例で考える民事訴訟法」46頁、47頁以下 長谷部由起子「基本判例から民事訴訟法を学ぶ」69頁行か 「民事訴訟法判例百選(第6版)」52頁以下 |