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民事訴訟

【重要判例】判例(権利能力なき社団)

2025/04/11 更新

当事者能力

(1)当事者能力とは、裁判で当事者となる一般的な資格である。

(2)民事訴訟法28条は、当事者能力については民法の権利能力の規定に従うとしている。民事訴訟法29条の「法人でない社団」も、民法の権利能力なき社団と同じ意味である。

(3) 法人格のないある団体について、当事者能力があるかは、「法人ではない社団」にあたるかという問題である。

民事訴訟法
28条(原則)
 当事者能力、訴訟能力及び訴訟無能力者の法定代理は、この法律に特別の定めがある場合を除き、民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令に従う。訴訟行為をするのに必要な授権についても、同様とする。

29条(法人でない社団等の当事者能力)
 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。

最判平成14年6月7日19日民集 56巻5号899頁

「上告人の総会は特別会員及び正会員をもって組織され、年1回の定時総会の決議事項は、前年度の重要事項の報告、新年度の運営方針、理事及び監事の選任並びに予算及び決算であり、出席会員の過半数をもって議決される。上告人の運営に関する諸事項については、総会において選任された理事をもって構成される理事会において、過半数の理事が出席し、出席理事の過半数により決定され、理事会の下に八つの分科委員会を設け、関係事項を分担処理している。また、理事会において互選された理事長が上告人を代表し、会務を統括処理することとされている。なお、上告人には、固有の事務所はなく、上告人の定時総会や理事会は、その都度適宜の場所を借り受けて開催されている。また、上告人には専属の従業員はなく、専ら理事らによって運営され、重要事項の報告、収支決算書及び収支予算書等を記載した事業報告と題する文書は、被上告人が作成している。」
 「上告人には固定資産はなく、規則又は細則にも上告人が財産を管理する方法等について具体的に定めた規定はない。細則によれば、上告人の会員の負担すべき年会費、使用料その他に関しては理事会において決定され、会員は年会費を前納するものとされている。他方、規則には、上告人の会計業務は、すべて被上告人が行い、上告人の総会において選任された監事の監査承認を受けるものと規定されている。また、協約書には前記(ウ)の定めがあるところ、上告人の運営に要する通常経費は、上告人が年間の活動計画に基づき、毎年、予算として一定額を計上するものの、年度当初に一括して支払われるのではなく、実際の上告人の活動状況に対応し、その要請に応じる形で被上告人から逐次支払われていた。」

民訴法29条にいう「法人でない社団」に当たるというためには、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していなければならない(最高裁昭和35年(オ)第1029号同39年10月15日第一小法廷判決・民集18巻8号1671頁参照)。これらのうち、財産的側面についていえば、必ずしも固定資産ないし基本的財産を有することは不可欠の要件ではなく、そのような資産を有していなくても、団体として、内部的に運営され、対外的に活動するのに必要な収入を得る仕組みが確保され、かつ、その収支を管理する体制が備わっているなど、他の諸事情と併せ、総合的に観察して、同条にいう「法人でない社団」として当事者能力が認められる場合があるというべきである。
 「これを本件について見ると、前記1の事実関係によれば、上告人は、預託金会員制の本件ゴルフ場の会員によって組織された団体であり、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、規約により代表の方法、総会の運営等が定められているものと認められる。財産的側面についても、本件協約書の前記(ウ)の定め等によって、団体として内部的に運営され対外的にも活動するのに必要な収入の仕組みが確保され、かつ、規約に基づいて収支を管理する体制も備わっているということができる。さらに、上告人と被上告人との間で本件協約書が調印され、それに伴って規則も改正されているところ、その内容にも照らせば、上告人は、被上告人や会員個人とは別個の独立した存在としての社会的実体を有しているというべきである。以上を総合すれば、上告人は、民訴法29条にいう「法人でない社団」に当たると認めるべきものであり、論旨は理由がある。


解説

(1)民事訴訟法28条は、当事者能力については民法の権利能力の規定に従うとしている。民法29条の「法人でない社団」も、民法の権利能力なき社団と同じ意味である。

(2)権利能なき社団は、社団としての実質を備えていながら、法令上の手続を経ていないために法人格を有しない存在である。

(3)具体的には、法人格を有しなくても、以下の4つを満たす団体をいうのが、現在の多数説である。
 ①対内的独立性 (構成員の脱退 加入に関係なく団体の同一性が保持されていること)
 ②対外的独立性 (代表者が定められ現実に代表者として行動しており、他の法主体から独立していること)
 ③内部組織性 (組織運営について規約が定められており、総会等の手段によって構成員の意思が団体の意思形成に反映していること)
 ④財産的独立性 (構成員から独立して管理されている団体独自の財産があること)

 を備える団体である。

(4)本判決では、財産的独立については、必ずしも固定資産ないし基本的財産を有することは不可欠の要件ではなく、そのような資産を有していなくても、(ア)必要な収入を得る仕組みと、(イ)その収支を管理する体制が備わっていれば足りるとされる。

(5)本件の団体には、固有の事務所がなかったが、年会費が徴収され、収支について決算報告が行われて、これについてルールについて規約が作成されていたことを考えると、(ア)必要な収入を得る仕組みと、(イ)その収支を管理する体制がある。その他の要件も備わっているとして、「法人でない社団」にあたる、とされた。

 

Q 民法29条の「法人でない社団」に該当しない団体はどのように権利行使をするべきか。
A 
(1)民法29条の「法人でない社団」に該当しない団体は、権利能力を有しない(28条)。
(2)団体の個々の構成員(成年)は権利能力を有する。したがって、この場合には、団体の構成員が、個々の権利を個別に訴訟提起することになる。

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