共同利益違反者と、その対応策
2025/03/02 更新
このページを印刷共同利益違反者
(1)区分所有者が、他の区分所有者の共同利益に違反する行為(区分所有法6条1項)をする場合には以下の手続きができます。
(2)具体的には、行為の停止(区分所有法57条)、専有部分の使用禁止(区分所有法58条)、区分所有権の競売(区分所有法59条)等の手続があります。
行為の停止等(区分所有法57条)
(1)相手方となる区分所有者が、他の区分所有者の共同利益に違反する行為(区分所有法6条1項)をすること(する可能性があること)が必要です(区分所有法57条1項)。
(2)本手続は訴訟による必要がないが、訴訟で手続するためには集会の決議が必要です(区分所有法57条2項)。
(3)請求権者は、(違反者を除く)他の区分所有者又は管理組合法人です(区分所有法57条1項)。
(違反者を除く)他の区分所有者は、集会の決議によって、特定の区分所有者に対し、訴訟の原告となる権限を授権することができます(区分所有法57条3項)。
- 区分所有法57条 共同の利益に反する行為の停止等の請求
1項 区分所有者が第6条第1項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
2項 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
3項 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第1項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
4項 前3項の規定は、占有者が第6条第3項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。
専有部分の使用禁止(区分所有法58条)
(1)相手方となる区分所有者が、他の区分所有者の共同利益に著しく違反し(区分所有法6条1項)、他に手段がないことが必要です(区分所有法58条1項)。
(2)本手続は訴訟による必要があります。訴訟で手続するためには集会を開き、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数での決議が必要です(区分所有法58条2項)。
この決議の際に、違反者に弁明の機会を与えなければなりません。
(3)請求権者は、(違反者を除く)他の区分所有者の全員又は管理組合法人です(区分所有法57条1項、同58条4項)。
(違反者を除く)他の区分所有者は、集会の決議によって、特定の区分所有者に対し、訴訟の原告となる権限を授権することができます(区分所有法57条3項、同58条4項)。
- 区分所有法58条 使用禁止の請求
1項 前条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。
2項 前項の決議は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数でする。
3項 第1項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
4項 前条第3項の規定は、第1項の訴えの提起に準用する。
区分所有権の競売(区分所有法59条)
1 請求手続
(1)相手方となる区分所有者が、他の区分所有者の共同利益に著しく違反し(区分所有法6条1項)、他に手段がないことが必要です(区分所有法59条1項)。
(2)本手続は訴訟による必要があります。訴訟で手続するためには集会を開き、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数での決議が必要です(区分所有法58条2項、同法59条2項)。
この決議の際に、違反者に弁明の機会を与えなければなりません。
(3)請求権者は、(違反者を除く)他の区分所有者の全員又は管理組合法人です(区分所有法57条1項、同59条2項)。
(違反者を除く)他の区分所有者は、集会の決議によって、特定の区分所有者に対し、訴訟の原告となる権限を授権することができます(区分所有法57条3項、同59条2項)。
2 注意点
(1)被告は共同利益違反行為を行っている区分所有者です。
(2)口頭弁論終結時に、共同利益違反者が区分所有権を有していることが有していることが必要であり、第三者に譲渡された場合には、訴え却下となります。
(3)口頭弁論終結後に、第三者に譲渡された場合にも、その譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできない(最判平成23年10月11日集民238号1頁 判例タイムズ1361号128頁)。
なぜなら、共同利益違反者が区分所有権を有しておらず、その危険が去ったからです。
また、口頭弁論終結後に、共同利益違反者が死亡した場合にも、その相続人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできない(大阪地判令和6年9月5日 判例タイムズ1528号175頁)。
- 区分所有法59条 区分所有権の競売の請求
1項 第57条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
2項 第57条第3項の規定は前項の訴えの提起に、前条第2項及び第3項の規定は前項の決議に準用する。
3項 第1項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から6月を経過したときは、することができない。
4項 前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。
- 区分所有法60条 占有者に対する引渡し請求
1項 前条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。
2項 前項の決議は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数でする。
3項 第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
4項 前条第3項の規定は、第一項の訴えの提起に準用する。