判例(不法行為の客観的消滅時効の20年の適用には、当事者の権利主張が必要である。また、同時効の主張については信義則違反もしくは権利の濫用となることがある)
2026/03/26 更新
このページを印刷令和6年7月3日 判例タイムズ1528号25頁
民法改正前の724条後段の除斥期間(不法行為の客観的消滅時効の20年)の適用には、当事者の権利主張が必要である。また、除斥期間の主張については信義則違反もしくは権利の濫用となることがある。
解説
(1)最判平成元年12月21日民集43巻12号2209頁は、「民法改正前の724条後段の除斥期間(不法行為の客観的消滅時効の20年)の適用には、当事者の権利主張は不要である。つまり、当事者が同主張をしなくても、裁判所は除斥期間の20年の経過による除斥期間の成立を認定できる。また、除斥期間について信義則違反もしくは権利の濫用であるという主張はできない。」としていた。
(2)令和6年7月3日判例タイムズ1528号25頁(以下、「令和6年判決」という。)は、上記の平成元年判決を変更して、「①民法改正前の724条後段の除斥期間(不法行為の客観的消滅時効の20年)の適用には、不法行為の客観的消滅時効の20年の適用には、当事者の権利主張が必要である。また、除斥期間の主張については信義則違反もしくは権利の濫用となることがある。」とした。
なお、令和6年判決は、令和元年判決を変更したが、その内容は、上記の(1)(2)の内容であることを確認した判例としては、大阪高判令和7年令和6月6日判例タイムズ1541号109頁がある。
(3)なお、民法改正前の724条後段の除斥期間(不法行為の客観的消滅時効の20年)の主張について、信義則違反もしくは権利の濫用となるのは例外的な場合に限られる。今後も、信義則違反もしくは権利の濫用となるのは令和6年判決と同様の不正義がある程度に限られる。(判例タイムズ1528号30頁)
(4)判例タイムズ1528号29頁では、令和6年判決で、「信義則違反もしくは権利の濫用となる」と認めたのは、下記の事情があるからであると説明されている。
「本判決は、まず、国民の憲法上の権利を違法に侵害することが明白な立法によって国民が重大な被害を受けたという本件事案の特殊性を強調し、本件には、不法行為をめぐる法律関係の速やかな確定という改正前民法724条の趣旨が妥当しない面があることを指摘する。その上で、Y(国)は、約48年間にわたり、国家の政策として、本件規定に基づく施策を実施してきたこと、②Y(国)は、当該施策の実施に当たり、審査を要件とする優生手術を行う際に身体の拘束、麻酔薬施用又は欺岡等の手段を用いることも許される場合がある旨の厚生事務次官通知を各都道府県知事宛てに発出するなどして、優生手術を行うことを積極的に推進していたこと、③当該施策が実施された結果として、少なくとも約2万5000人の者が本件規定に基づいて生殖を不能にする手術を受け、これにより生殖能力を喪失するという被害を受けたこと、④Xらについて、損害賠償請求権の速やかな行使を期待することができたと解すべき事情があったことはうかがわれないこと、⑤Y(国)は、平成8年に本件規定が削除された後、長期間にわたって、本件規定により行われた不妊手術は適法であり、補償はしないという立場をとり続けてきたこと(本件訴えが提起された後に一時金支給法が成立し、施行されたものの、その内容は、Y(国)の損害償責任を前提とすることなく一時金320万円を支給するというにとどまるものであったこと)などの事情を摘示し、これらの諸事情に照らすと、本件訴えが除斥期間の経過後に提起されたということの一事をもってYが損害賠償責任を免れることは、著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない。」とした。
| 民法724条 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。 二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。 民法724条の2 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。 |






