賃料増減額請求に対する対応方法
2023/06/02
賃料増減額請求に対する対応方法
家主から「近隣の家賃相場が上昇したので家賃を来月からアップする。」と言われました。どうすればよいでしょうか。
賃料増減額請求
(1)賃貸契約は、10年、20年と長期間にわたる契約です。
(2)契約した当時は適正な金額であったが、時間の経過とともに賃料が適正な金額でなくなっている場合があります。
(3)このような場合には、賃貸人(家主)は賃料の増額を、賃借人は賃料の減額を請求できます(借地借家法11条、32条)。
家主からの賃料増額請求
(1)家主(賃貸人)から「近隣の家賃相場が上昇したので家賃を来月からアップする」と言われました。どうすればよいでしょうか。
(2)賃借人としての選択肢は、3つです。
①言われるままの金額を今後支払う。
②従前どおりの金額を支払う。
③適正賃料について交渉する。
②従来通りの賃料を支払う
(1)適正賃料は、裁判手続によって決まります。したがって、適正賃料が裁判手続によって決まるまでは、従前の賃料を支払っておけば、賃貸借契約の解除はされません。
もっとも、従前の賃料が賃貸物件の固定資産税を下回るような極めて低額な場合には、賃料増額請求後には、固定資産税を上回る程度の金額の賃料を支払う必要があります。(最判平成5年2月18日、最判平成8年7月12日)
(2)例えば、20年以上、賃料がアップされておらず、賃料が不動産の固定資産税を下回るような例外的な場合を除いて、賃料増額請求の裁判手続をされるまでは、②賃借人は、従前どおりの賃料を支払えばよいわけです。
(3)なお、賃料増額請求の裁判手続にて、適正賃料が決まれば、賃借人は適正賃料の差額を一括して支払う義務があります。
③適正賃料について交渉する。
(1)賃借人としては、従前どおりの賃料を支払いつつ、「③適正賃料について〇円ぐらいでどうですか。」と交渉することが考えられます。
(2)適正賃料について合意できれば、その額が新しい賃料額(の合意)となります。
新しい賃料の合意がされれば、当然、家主(賃貸人)は、もはや、賃料の増額の請求ができません。
裁判手続を経なければ適正賃料が決まらない(現実的には、賃料増額請求ができない)ので、賃借人が提案した金額について、家主(賃貸人)が承諾する可能性はあります。
(3)賃借人側の交渉としては、従前どおりの賃料を支払いつつ、「③適正賃料について〇円です。合意書を締結できるなら、〇円にアップします。」「合意書を締結できないのであれば、従前どおりの賃料しは支払いません。」と交渉することになります。
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