判例(委託契約については、契約書等で、契約期間満了前の解除ができないと明記しない限り、民法651条(民法656条)による途中解除が認められる)
2025/05/30 更新
このページを印刷東京地判令和6年7月8日
1 事案
(1) ユーチューバーが、マネージメント会社とマネージメントの委託契約を締結した。
(2) 委託契約には以下のような文言があった。
①マネージメント会社は、ユーチューバーのスケジュール管理、体外的な窓口業務を行う。 ②契約期間は3年とする(マネージメント契約書の第12条1項)。 ③上記期間内であっても、合意により解除することができる(マネージメント契約書の第12条2項)。 |
(3) 上記の契約書は、マネージメント契約の定型的な契約書書式であった。
(4) ユーチューバーは、契約期間満了までに、一方的にマネージメントの委託契約を解除した(民法656条、民法651条1項)。
(5) マネージメント会社は、マネージメント契約書の第12条は、合意解除以外の解除を認めないものであると主張した。
2 判決
(1) 委任契約では、依頼された事務やサービスの遂行が求められ、その過程で成果物が生じることは必須ではありません。委任契約は、信頼関係を重視する契約であるから、いつでも解除できるのが原則です(民法651条1項)。
(2) 委託契約については、契約書等で、契約期間満了前の解除ができないと明記しない限り、民法651条(民法656条)による途中解除が認められる。
(3) したがって、マネージメント契約について、民法656条が準用する民法651条1項による解除を認めました。
東京地判令和6年7月8日
判例タイムズ1531号247頁
解説
1 途中解除権
(1)本件のマネージメント委託契約では、以下のような文言しかなく、民法651条による解除が認められるのか、認められないのか不明確でした。
①マネージメント会社は、ユーチューバーのスケジュール管理、体外的な窓口業務を行う。 ②契約期間は3年とする(マネージメント契約書の第12条1項)。 ③上記期間内であっても、合意により解除することができる(マネージメント契約書の第12条2項)。 |
(2)本判決は、契約書その他で、委託者が解除権を放棄すると明記していない以上は、民法651条に基づく解除が認められるとした判例であると評価されています(判例タイムズ1531号250頁)。
2 本マージメント委託契約(定型書式)
また、本マージメント委託契約は定型書式であるので、この判断はこの契約書一般に適用されるとされています(判例タイムズ1531号250頁)。