判例(建物の瑕疵について、主位的に請求として、建物としての基本的な安全性を欠くこと理由とする民法709条の請求がされ、予備的請求として、品確法による瑕疵担保の請求をされ、民法709条の成立が否定された瑕疵について、品確法の瑕疵にあたると認められた。)
2026/05/01 更新
このページを印刷東京地判令和6年8月23日
(1)建物の瑕疵について、主位的に請求として、建物としての基本的な安全性を欠くこと理由とする民法709条の請求がされ、予備的請求として、品確法による瑕疵担保の請求をされ、民法709条の成立が否定された瑕疵について、品確法の瑕疵にあたると認められた。
(2)損害については、補修による修理が可能であるとして、建替費用相当額の損害は認められないとして、修理代相当額が損害とされました。
判例タイムズ1542号213頁
解説
1 契約不適合(瑕疵担保)の請求
(1)建物の瑕疵については、契約不適合(瑕疵担保)の追及が考えられます。
(2)しかし、同請求は買主が不適合を知ったときから5年、目的物の引き渡しを受けたときから10年です。(岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 」81頁)
(3)瑕疵(契約に合致しないこと)の存在を知ってから1年以内に権利行使しなければ、契約不適合(瑕疵担保)を請求できなくなる。1年間の期間制限は除斥期間である。「内容証明で瑕疵担保責任を請求すると通知する」など、裁判外での権利行使すれば、訴訟的をしなくても、同権利は保全される。
(4)本件では、契約不適合(瑕疵担保)による請求はされませんでした。
2 建物としての基本的な安全性を欠くこと理由とする民法709条の請求
(1)民法709条の不法行為の客観的消滅時効は20年です。引き渡しより10年を経過している事案では(建物としての基本的な安全性を欠くこと理由とする)民法709条の請求を検討することになります。
(2)最判平成19年7月6日民集61巻5号1769頁)は、建物の設計者、施工業者は、建物の建築に当た
り、契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負う。建物としての基本的な安全性を損なう疵があり、それにより居住者等の生命、身体又は
財産が侵害された場合には、原則として、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負う、と判示しました。
(3)最判平成23年7月21日裁判集民237号293頁は、上記の建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵とは、居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい、建物の瑕疵が、居住者等の生命,身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず、当該瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する、と旨判示した。
また、同判決は、基本的な安全性を損なう瑕疵と認められるかについては、「当該瑕疵を放置した場合に、鉄筋の腐食、劣化、コンクリートの耐力低下等を引き起こし、ひいては建物の全部又は一部の倒壊等に至る建物の構造耐力に関わる瑕疵はもとより、建物の構造耐力に関わらない瑕疵であっても、これを放置した場合に、例えば、外壁が剥落して通行人の上に落下したり、開口部、ベランダ、階段等の瑕疵により建物の利用者が転落したりするなどして人身被害につながる危険があるときや、漏水、有害物質の発生等により建物の利用者の健康や財産が損なわれる危険があるときには、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当するが、建物の美観や居住者の居住環境の快適さを損なうにとどまる瑕疵は、これに該当しない」と旨判示されています。
(4)本件では、上記の判例を前提に、民法709条が成立する瑕疵にあたるか、判断されました。
3 品確法による瑕疵担保の請求
(1)品確法による瑕疵は、「新築住宅の構造耐力主要な部分又は雨水の侵入を防止する部分」の瑕疵に限られます。
(2)品確法による瑕疵担保の請求の事項は、建物の引渡しを受けてから、10年です(品確法94条1項)。
(3)本件では、民法709条の成立が否定された瑕疵について、品確法の瑕疵にあたると認められた。
4 建替費用相当額の損害
(1)建替費用相当額の損害が認められるかについて、最判平成14年9月24日裁判集民207号289頁は、「建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には、注文者は、請負人に対し、建物の建て替えに要する費用相当額を損害としてその賠償を請求することができる」と判示している。
(2)本件では、損害については、補修による修理が可能であるとして、建替費用相当額の損害は認められないとして、修理代相当額が損害とされました。






