判例(「代理人は株主に限る」との定款があったとしても、株主ではない弁護士を代理人とする議決権行使を拒否することはできない。)
2024/11/02 更新
判例
(1)「代理人は株主に限る」との定款があるとしても、株主が会社に対してあらかじめ、株主ではない弁護士に議決権を代位行使させると申し出てたときには、同弁護士によって株主総会の円滑な運営を阻害される等の特段の事情がないかぎり、弁護士を代理人とする議決権行使を拒否することは会社法310条に違反する。
(2)上記違反は、決議の方法の違反である(会社法810条1項1号)であるから、株主総会決議は取り消される。
東京地裁 令和3年11月25日
判例タイムズ1503号196頁
解説
(1)会社法310条は、株主が代理人に頼み、代理人が株主に代わって株主総会で議決権を行使することを認めている。
(2)これに対して、「代理人になるには株主であることが必要である」と旨の定款も有効である(最判昭和43年11月1日民集22巻12号2402頁、判タ229号154頁)。しかし、同趣旨の定款があるとしても、一定の場合には、株主ではない者が株主の代理人となることを認めなければならない。
例えば、会社が株主である場合に、会社の従業員が会社の意向を受けて議決権を行使をする場合には、当該従業員が代理人になることを拒否することは違法となる。
(3)ところで、株主ではない弁護士が、株主から依頼を受けて株主の代理人として議決権を行使をする場合に、「代理人になるには株主であることが必要である」と旨の定款を理由に拒否することはできるか問題となる。
弁護士を代理人とする議決権行使の拒否を適法とする判例もあれば、違法とする判例もある。
(4)しかし、少なくとも、株主が会社に対してあらかじめ、株主ではない弁護士に議決権を代位行使させると申し出て、当該会社が同弁護士によって株主総会の円滑な運営を阻害するかどうか検討する機会が与えられ、そのような危険性を具体的に指摘できない限り、弁護士を代理人とする議決権行使を拒否することはできない(判例タイムズ1503号200頁)。
本件判決は、そのことを示した判例である。