建物の明渡しと、立ち合い
2023/01/24
建物の明渡しと、立ち合い
原状回復等のために、建物の立ち合いを行うことがあります。
立ち合いと写真撮影
(1)立ち合いのときには、証拠を残すために写真撮影を行います。
(2)写真撮影の目的は、争点部分の撮影、(争点部分に関する)当事者の言い分を証拠化することです。
(3)お互いが問題になりそうな部分を指摘し、お互いの言い分をメモし、その部分の写真を撮影します。
(「建物明渡し」と)よくある争点
1 賃借人が設置したもの
(1)賃借人が設置したものについては、原状回復義務(元に戻す義務)として撤去義務を負います。賃借人が空けた穴の修繕費は賃借人が負うのが原則です。
(2)例えば、穴、ねじ穴、(賃借人が設置した)間仕切り、エアコンがその例です。
(3)もちろん、賃貸期間が長く、穴を空けていなくても経年劣化により取り換えが必要な場合には、賃借人は修繕義務を負いません。
2 前賃借人が設置したもの
(1)賃借前から存在したものは、撤去義務を負いません。
(2)例、前賃借人が置いて行った看板、前賃借人が空けた穴がその例です。
3 前賃借人が設置したものを賃借人が交換したもの
(1)例えば、前賃借人が設置したドアを取り壊して、賃借人がドアを新設した場合に、賃貸人としては、前のドアと今のドアでは経済価値が変わらないときには、賃借人はドアを新調する費用の負担を負いません。
(2)もちろん、前賃借人の原状回復義務を引き継いでスケルトン状態に戻す旨の合意がある場合には、賃借人がこれらの撤去義務を負います。
立ち合いで確認すべきこと
(1)賃貸人が撤去費用や、修繕費用を求める部分を明確にしてもらい、その部分(その物)の写真を撮りながら、お互いの言い分を確認していきます。
(2)また、賃借人が残置する動産で、賃貸人が撤去しないことに同意するものについて、その部分(その物)の写真を撮りながら、お互いの言い分を確認していきます。
(3)お互いの言い分については、以下のどれに当たるかを明確にしておきます。
〇賃借人が設置したもの
〇前賃借人が設置したもの
〇前賃借人が設置したものを賃借人が交換したもの
〇賃借人が残置する動産で、賃貸人が撤去しないことに同意するもの
報告書の作成とそのポイント
(1)報告書の作成の目的は、撮影日、撮影方向、被写体に対する当事者の言い分を記録化することです。
(2)例えば、サンプルのような資料の作り方があります。
(3)なお、(撮影方向を明記するための)建物の図面があると、報告書を作成のために役立ちます。
サンプル1
サンプル2
下記は、エクセルのサンプルです。
https://yuhigaoka-law.com/wp-content/uploads/2023/01/90ec45c9d1e6987c1e96e84aa2a433d7.xlsx
立ち合いの進行
立ち合いの進行は以下のように勧めます。
1 話の進め方
「まずは、建物全体を見てみましょう。」
「次に、賃貸人の側で、修繕が必要だと思う箇所や、賃借人側が撤去する必要がある箇所について指摘して下さい。」「その部分を中心に写真を撮影して記録を残しましょう。」
「例えば、ある部分について傷があるとして、『その傷が借りる前からあったのか。』それとも、『借りた後でできたのか』、当事者の言い分を確認していきましょう。」
というか価値で進めて行きます。
2 写真
もちろん、写真は撮れるだけ多めに撮影した方がよいでしょう。
記録の残し方
(1)「立ち合いのときに、賃貸人が『貸す前から空調設備があった。』と認めていた。」「いいえ。認めていません。」という争いが起きることがあります。これを記録化する必要があります。
(2)一つは、当日のやり取りを全て録音しておく方法、ビデオ等で録画しておく方法等がありえます。
(3)もう一つは、立ち合いの記録を文書化して、相手方にメールで送り、「今回の立ち合いの結果を文章化しました。間違いがあれば指摘して下さい。」と記載して、日付を記録化することも考えられます。
当日の話し合いでは言い間違いや、記憶違いもあります。本来的には、後者の方法で確かめるのが適切だと考えます。
持ち物
(1)賃貸借契約書
(2)ビデオカメラ、ICレコーダー
(3)(撮影方向を明記するための)建物の図面