ハラスメントの相談者に説明すべこと
2022/06/17
ハラスメントの相談
(1)ハラスメントの相談があれば、企業はその調査をしなければなりません。
(2)しかし、調査によって相談者が不利益を受けることもあります。したがって、企業は相談者に以下のことをしっかりと説明する必要があります。
相談者への説明
相談があった場合には、相談者に以下のことを説明します。
(1)パワハラ・セクハラと認定するには、加害者、第三者にも話を聞く必要があること。相談者の名前は伏せるが、もちろん、加害者にも分かる可能性があること。
(2)パワハラ・セクハラと認定をした場合に、加害者にどのような処分をするかは会社が決めること。相談者の意見を参考にするが、相談者の意見だけで決まるものではないこと。
(3)上記の(1)のパワハラの調査をしなくても、「異動、指導係の変更、職務の変更」の変更希望を出すことはできること。なお、同対応を検討するには、相談者の上司への報告が必須である。つまり、パワハラ・セクハラとしてではなく、単なる「異動、指導係の変更、職務の変更」の変更及び相談として受け付けることもできること。なお、相談内容については、相談者の同意がある範囲で職場の責任者に伝えて、希望をとおすように口添えすることも可能であること。
(4)加害者に過失が認められたとしても、会社が加害者を懲戒解雇できるケースはまれです。現実的には、相談者も加害者も会社内に残るケースが多いこと、調査によって、両者の関係がさらに悪化することもありること。
(5)ハラスメントには要件がある。本窓口は「ハラスメントの相談窓口」であるから、不適切な行為であると認定したとしても、これらの要件を満たさないことがありえる。その場合に、相談窓口としてどこまで動けるか不透明であること。
(6)相談窓口としては、相談者の調査依頼を書面でもらうことによってはじめて調査に動くことになること。
(7)(1)の調査をしても結果がでるまでは3か月以上かかることがあり、調査と同時並行で(3)の方法で別の対応をすることも可能であること
(8)相談窓口での相談内容は、個人を特定する形では外部にもらさないこと、自由に相談してもらってよいこと、逆に、個人を特定しない形に抽象化して、注意喚起等の資料に使うか可能性があること。
(9)相談窓口には何度、相談に来てもいいことを説明します。
直接攻撃方の場合の追加説明
(1)例えば、結婚している上司が、未婚の部下を食事に誘うようなケースや、ある上司が特定の部下への指導が行き過ぎているようなケースでは、事実確認をすれば、加害者から見て相談者が誰かが分かってしまいます。
(2)このようなケースでは、相談者に対し調査する上でのデメリットを説明する必要があります。
相談者には 「相談者も加害者も会社内に残るケースが多いこと」「加害者に相談者が会社に申告したことが判明すること」を説明したうえで、どうするか相談する必要があります。
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