被害者によりそって考える技術(ハラスメント問題)
2022/06/21
ハラスメント調査の問題
(1)例えば、ハラスメントが認められるとしても、加害者を懲戒処分できることはまれです。調査後(処分後)も、加害者と被害者は社内で一緒に働くことにいなります。
(2)現実問題として、ハラスメント問題については、100%の満足は難しいといえます
(3)したがって、企業としては、相談者と一緒に考えるスキルが必要になります。
結果が出る前に、見通しを説明する。
(1)人が怒りを爆破させるのは、期待と現実が異なるからです。したがって、ハラスメント調査の前に、調査後の見通しを告げることが大切になります。
(2)特に、相談者の希望に叶う形で解決ができない可能がある場合には、定期的に現状の報告をした方がよいでしょう。
悪い結果を報告することは心理的にはつらいものです。しかし、悪い結果が予想される事案でこそ、相談者に定期的に報告すべきです。
(3)調査前に、相談者の申告が事実であるとしても重い処罰ができないことを説明し、調査の結果についても、同様の結果であったとしても、そのことを説明するようなイメージです。毎回、説明することで、相談者の心の準備をすることができます。
(4)私の造語ですが、「悪い結果が出る前に、途中説明をする」という意味で、私は、「二段階説明」と呼んでいます。
相談者に決定権を与える。
(1)相談者に決定権を与えます。いろいろな選択を考慮する方法を教えて、相談者に決めてもらいます。
(2)例えば、直接の上司との関係に悩んでパワハラ相談に来ているケースでは、①パワハラに該当するかどうか、調査する方法のほかに、②異動の希望として処理する方法もあるかもしれません。③当該上司のさらに上司が信頼できる立場であれば、その人に直接相談して、何となく、釘を刺してもらう方法もあるかもしれません。
(3)各選択肢について、メリットデメリットを考慮してどのようにして選べばよいかをレクチャーします。
(4)あくまで、相談者に決めてもらうことを大切にしますので、不適切な選択肢であっても、初めから排除せずに、議論の席上に乗せた上で、相談者にその選択肢を排除してもらいます。
自分が相談者の立場であったら、どうするか、を答える。
「相談者のメリット」で説明をする。
(1)勇気がいることですが、親身になるということは、自分が相談者の立場であれば、「自分だったか〇〇する。」と答えることです。
(2)プロとして最善の解決の提案をし、仮に、相談者がその意見を採用しない場合には、その不利益をしっかりと説明することです。
(3)相談者が「最善の解決」以外の選択をすることもあります。そうなった場合には、多くは不利益な結果に終わります。
この場合には、「結果の結果が出る前に、見通しを説明する。」こと、「悪い結果が予想される事案でこそ、相談者に何度も報告をする。ことが大切になってきます。
相談者
「それは、私に泣き寝入りしろ、ということですか。」
担当者
「そうではありません。私は〇〇様のメリットを考えて、〇〇を進めています。」
相談者
「それは、私が悪いということですか。」
担当者
「失礼ながら、〇〇様は、▲さんの行動が正しいかどうかを問題にしています。しかし、私は、〇〇様にとって何かメリットを考えて説明してます。」
私見ですが、相談者が「最善の解決」以外の選択をすることもあります。そうなった場合には、多くは不利益な結果に終わります。そうなった場合には、結局、トラブルになりかねません。ぎりぎりまで説得をすべきだと思います。
弁護士に相談
(1)難しそうな案件であれば、弁護士に一緒に入ってもらうのも一つの手です。
(2)例えば、訴訟であれば勝つ結果ばかりではありません。弁護士は負ける案件(期待どおりにいかない事案)の相談を得意にしています。
参考
ハーバートビジネスレビュー2022年4月号98頁以下
センスメイキングを利用した営業の説得方法が書かれています。
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