株券発行会社の株式の譲渡
2025/03/01 更新
株券発行会社の株式譲渡
会社法は、株券発行会社の株式譲渡について、株券の交付がない場合には、譲渡の効力がない旨を規定している(会社法128条1項)。
会社法128条 株券発行会社の株式の譲渡 1項 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。 2項 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。 |
譲渡した当事者間での問題
(1)株券発行会社が株式を発行する前に、株式の譲渡が行われた場合(株券の交付がないことになるが)株式を譲渡した当事者間(譲渡人と譲受人の間)では、株式譲渡は有効です。
(2)しかし、株券の交付がない場合に、株式の譲受人は会社に対し株主たる地位を主張できないのか。
株式会社が不当に株式の発行を遅滞した場合
最判昭和47年11月8日民集26巻9号1489頁
株券発行会社が株式を発行する前に、株式の譲渡が行われた場合において、株式会社が不当に株式の発行を遅滞しているときには、株券の交付がなくても、株式の譲受人は、会社に対し株主たる地位を主張できます。
株式会社に株式の発行を請求することはできないのか
最判令和6年4月19日判例タイムズ1528号43頁以下
株式が発行される前に株式が譲渡された場合、株式の発行前の株式譲渡は当事者間では有効です。しかし、この場合には、株券の交付がなく、株式の譲受人は会社に対し株主たる地位を主張できないのが原則です。
もっとも、株式の譲受人は、会社に対し(民法423条により株式の譲渡人の株式発行請求権の代位行使することにより)株式の発行を請求できます。
(その後、会社から株式の交付を受ければ、株式の譲受人は会社に対し株主たる地位を主張できることになります。)
参考
判例タイムズ1528号43頁以下
株券発行会社が株式を発行する前に、株式の譲渡が行われた場合について詳しく記載されています。