Q 判決が、原告の請求(申立事項)を超えないか、はどうやって判断しますか。
2026/03/22 更新
申立事項
(1)裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない(民事訴訟法246条)。
(2)民事訴訟で審理の対象となる実体法上の権利は、もともと当事者は自由に処分する権限がある。したがって、民事訴訟においては、当事者は、訴えを提起するかどうか、審判対象をどうするか、訴訟でいくら請求するか、訴訟を終わらせるかどうかの決定権を有している(処分権主義)。民事訴訟法246条の根拠は処分主義です。
(3)また、民事訴訟法246条は、原告の請求を超えた判決は出されないという形で、判決による不利益を被告に対し予告する機能も持っています。
(4)民事訴訟法246条違反にあたるかは、ある判決が請求の一部認容判決として認められるかどうかは、判決の内容が原告の合理的意思の範囲に含まれるか、 そのような判決をすることが被告にとって不測の負担を課すことになるか、観点から判断されます。
| 民事訴訟法246条(判決事項) 裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。 |
請求額を超えること
原告の請求が150万円であるのに、裁判所が100万円の支払いを命じることは、民事訴訟法246条違反となります。
訴訟物を異なること
(1)例えば、訴訟物が不法行為に基づく損害賠償請求であるのに、債務不履行に基づく損害賠償請求権が認めることは、 新訴訟物理論によれば処分権主義に反しないが、旧訴訟物理論によれば、訴えの選択的併合がされていない限り、処分権主義に違反することになります (最判昭和53年6月23日判時897号59頁 参照)。
(2)これに対して、交通事故の訴訟について、人損と物損の訴訟物は別であるが、人損は一つの訴訟物です。原告が治療費として30万円、慰謝料として30万円を請求した場合に、治療費20万円、慰謝料40万円であると認定することは、治療費も慰謝料も人損である以上は、その総額で訴訟物の額を超えない限りは処分権主義に違反しない (最判昭和48年4月5日民集 27 巻 3号419頁)。
| (1)判決は、不法行為に基づく損害賠償請求権の訴訟物の個数を、人損と物損に分けて2つと考えている。 (2)例えば、不法行為に基づく合計50万円の損害賠償について、同額を認めても処分権主義には違反しない。 (3)しかし、原告が慰謝料として30万円を請求する場合に、判決が慰謝料を40万円と認定することは弁論主義に違反するかも、別に問題となります。 参考 高田裕成「民事訴訟法判例百選〔第6版〕」146頁 勅使川原和彦「読解 民事訴訟法」 26頁 |
一部認容判決
ある判決が請求の一部認容判決として認められるかどうかは、①判決の内容が原告の合理的意思の範囲に含まれるか、 ②そのような判決をすることが被告に不測の不利益を課すことにならないか、という2つの視点で判断される。
引換給付判決
(1)無条件の給付請求に対して、 留置権の抗弁が認められるとして、引換給付判決をすることは許される。(最判昭和47年11月16日民集 26巻9号1619 等)。
(2)家屋明渡請求訴訟において,、一定金額の立退料の支払と引換えでの、またはこれを条件とする明渡しが請求されたのに対して、賃貸人による立退料支払の申出の趣旨に反しない限度で立退料を増額して引換給付を命じることも許される (最判昭和46年11月25日民集 25巻8号1343頁) 。
債務不存在訴訟
(1)債務不存在確認請求訴訟において、原告が「100万円の債務全部が不存在であることの確認を求めた」のに対して、裁判所が「債務のうち 20万円は存在する」と認める場合には「債務は20万円を超えては存在しない」ことを確認し、その余の請求を棄却することになります。
(2)原告が「10万円を超える債務の不存在の確認を求めた」のに対して「債務が20万円を超えては存在しない」ことを確認することも、一部認容判決として認められます。
一時金賠償方式と定期金賠償方式
(1)損害賠償請求で原告が一時金による支払いが求められているのに対し、定期金による支払を命じることは処分権主義に反する(最判昭和62年2月6日判時1232号100頁)。
(2)しかし、 損害賠償請求で原告が一時金による支払いを求めているのに対し、逸失利益については一時金、将来の介護費用については定期金による支払を命じることは処分権主義に反しない、とした判例もある(東京高判平成15年7月29日判時1838号69頁)。
参考
田中豊 「論点精解 民事訴訟法〔改訂増補版〕」 97頁






