Q 確定判決の訴訟物となっていた請求権について、後訴訟にて、「形成権の行使によって消滅した。」と主張することは許されるか。
2026/03/23 更新
既判力
(1)既判力は、主文に包括するものに限り生じる(114条1項)。既判力は、当該確定判決に係る訴訟物たる権利又は法律関係の存否について及ぶ。
(2)既判力とは、確定判決が後日の訴訟に及ぼす拘束力です。
既判力の作用としては、後日の訴訟にて、当事者が、訴訟物たる権利又は法律関係の存否について争えません(消極的作用)。
また、後日の訴訟にて、裁判所が訴訟物たる権利又は法律関係の存否について矛盾した判断ができません(積極的作用)。
既判力の時的範囲
(1)既判力の基準時は、当該確定判決に係る訴訟の口頭弁論終結時です。
(2)例えば、原告の代金支払義務を認める判決が下され、それが確定すれば、被告は口頭弁論が終結する前にすでに弁済していたことや、売買契約の無効、時効(による消滅)といった、口頭弁論終結時にすでに存在していた事実を主張しても認められません。
基準後の形成権行使
1 前提
(ア)判決により訴訟物となる請求権が存在することが確定した。(イ)その裁判の口頭弁論終結前に発生した事情を理由に、(ウ)口頭弁論終結後に、取消権や解除権等を行使した。(エ)後訴において、確定判決の訴訟物となっていた請求権について消滅したと主張できるか。
2 後訴
確定判決の訴訟物となっていた請求権が消滅したと主張するものであるから、後訴訟としては、請求異議の訴え等が考えられます。
3 学説
(1)形成権の行使を認める考え方
実体法上は、訴訟の結果によって、取消権や解除権の行使を制限する理由はない。
既判力の基準時は、当該確定判決に係る訴訟の口頭弁論終結時です 。これらを行使したのは基準日後であるから、これらの行使は既判力では遮断されなくてもよいはずである。
(2)形成権の行使を認めない考え方
これらの行使を自由に認めては、紛争が蒸し返される結果、原告にとって大きな負担となります4(法的安定性)。
被告はこれらを行使できたのにしなかったのであるから、これらの権利行使を認める必要はありません(提出責任)。
| 1 既判力の本質 (1)既判力とは、確定判決が後日の訴訟に及ぼす拘束力である(訴訟法説)。 (2)既判力によって訴訟物となった権利関係が変化する(実体法説)さけではない。 2 遮断効 遮断効は、あくまでも、口頭弁論終結後に、取消権や解除権等を行使したとしても、後訴という訴訟の場において、確定判決の訴訟物となっていた請求権について消滅したと主張することができないだけである。 |
形成権
基準時前に発生した事情に基づく取消権の行使は、既判力によって遮断され、後訴で取消しの主張をすることはできない。
最判昭和36年12月12日民集15巻11号2778頁
書面によらない贈与の取消については、同取消権を行使せずに判決が確定したときには、既判力の効果として取消権を行使できない。
最判昭和55年10月23日民集34巻5号747頁
(1)前訴訟の基準日以前に発生した事情に基づく詐欺取消権しについては、前訴訟で行使できたのにこれをしなかったものであるから、既判力により制限される(詐欺取消し)。
(2)同判決は提出責任の観点から、取消権の行使を遮断した判例だとされる。
解除
解除の場合にも、同様に考えることになるだろう。
(岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 総論・民法1」134頁では、基準時前に履行遅滞になっていたが、催告はしていなかった場合、解除権が発生していないから、 基準時後に催告をして解除したことを後訴で主張することができる、との判例が紹介されている。しかし、一般的には、取消しと解除で特に別に考える必要はない、と考えられている。)
相殺と、建物買取請求権
最判昭和40年4月2日民集19巻3号539頁
相殺については、基準日後でも行使できる。相殺は自働債権が消滅する。前訴訟で確定した原告の請求によって、被告が不利益を受ける結果は変わらない、という特徴がある。
最判平成7年12月5日民集49巻10号3051頁
建物買取請求権は基準時に発生していた事情にあたるとしても、基準日後に行使することができる。
建物買取権の行使も建物等の明け渡しが認められている。前訴訟で確定した原告の請求によって、被告が不利益を受ける結果は変わらない、という特徴がある。
| 借地借家法第13条は、借地権の存続期間が満了した際に、契約の更新がない場合に借地権者が建物買取請求権を行使できることを定めています。被告からすれば、借地権の存続期間が満了という不利益が事実が認定されたうえで、被告が請求できる権利となります。 |
白地手形補充権
白地手形の所持者が手形金請求訴訟を提起し、請求棄却の判決が確定した後に、この白地を補充して後訴にて、手形上の権利の存在を主張することは既判力により遮断される(最判昭和57年3月30日民集36巻3号501頁)。
参考
岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 総論・民法1」131頁以下






