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民事訴訟

Q 訴訟物は異なるが、後訴が前訴の蒸し返しである場合に、前訴訟の既判力を及ぼすことはできないのか。(争点効)

2026/03/25 更新

既判力の客観的範囲

(1)既判力は、主文に包括するものに限り生じる(114条1項)。

(2)既判力は、当該確定判決に係る訴訟物たる権利又は法律関係の存否について及ぶ。

(3)訴訟物は異なれば、既判力は作用しない。しかし、後訴が前訴の蒸し返しである場合に、前訴訟の既判力を及ぼすことはできないだろうか。

争点効理論

1 前提

(ア)判決により訴訟物となる請求権が存在することが確定した。(イ)同じ当事者の間で、(ウ)後訴が提起され、後訴の内容が、後訴が前訴の蒸し返しであることです。

2 争点効の要件

(1)争点効理論によれば、以下の要素を満たす場合には、判決理由中の判断であっても拘束力を有するとされます。

①前訴後訴の係争利益がほぼ同じであること
②前訴で主要な争点となったこと
③前訴において当事者が主張立証を尽くたこと
④ 裁判所も当該争点について実質的に判断を下したこと
⑤後訴で当事者が争点効を援用したこと、

(2)既判力は判決主文中の判断に生じます。これに対して、争点効は判決理由中に示される判断に生じます。

3 争点効の根拠

(1)争点効の根拠は信義則です。個別の事案ごとに信義則を適用するのではなく、信義則を類型化して前訴訟の既判力を及ぶ範囲を明確にしようとしました。(長谷部由起子「基本判例から民事訴訟法を学ぶ」181頁)

(2)なお、判例は、争点効理論を採用しませんでした。

最判昭和44年6月24日判示569号48頁

 同判例は、争点効理論を採用しないと、明言しました。

信義則理論

1 最判昭51年9月30日民集30巻8号799頁

(1)後訴請求が実質的に前訴のむし返しであり、前訴で後訴請求をすることに支障はなく、 後訴提起時すでに問題となっている実体法上の処分行為後約20年も経過しており、 Yおよびその承継人の地位を不当に長く不安定な状態におくこと になることを理由に後訴を信義則に反するとして却下した。

(2)本判決は、前訴とは訴訟物も当事者も異なる後訴を信義則を理由に遮断しました。遮断とは本案判決をしない、訴訟要件を欠くということです。(長谷部由起子「基本判例から民事訴訟法を学ぶ」176頁)

(3)上記昭和51年判決は、特殊なケースであるとされて、その適用範囲は極めて限定的と理解されてきた。

2 その後の下級審判例

(1)その後、下級審判例は以下の事情を考慮して、信義則違反である控訴請求を遮断した。

(2)これによって、判決は信義則を理由に、訴訟物は異なるが、後訴が前訴の蒸し返しである場合に、控訴の請求や主張を却下することが判例法理となった。

①前訴における前訴における請求あるいは主張と後訴におけるそれとが実質上同一であること
②後訴で提出されている請求あるいは主張を前訴で提出し得たこと
③勝訴当事者が前訴判決により紛争が解決済みであるとの信頼を抱いており、 法的安定の要求を保護する必要があること
④前訴判決の正当性を確保するほどに前訴において充実した審理が行われていること、
⑤前訴において当事者が争う誘因を有していたこと
参考
 長谷部由起子ほか「基礎演習民事訴訟法  第3版」198頁以

3 争点効と信義則の関係

(1)争点効理論は要件が決まっており、その要件を欠けば、前訴の判断を後訴訟に利用できない。

(2)裁判所にとっては、信義則理論の方が、妥当な解決を下すのに便利だったと思われる。

(3)もっとも、信義則の適用の要素と争点効は重なり、争点効理論による分析は今も有効です。

(1)信義則の判断をするには、前訴の評価が不可欠です。
(2)既判力を生じさせるのと同じ効力を認めるのであれば、前の訴訟で手続保障が与えられ、後訴が蒸し返しである(実質的には同じ訴訟である)と評価できる事情があることが必要という意見もあります。

参考
 勅使川原和彦「読解 民事訴訟法」162頁

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