民事訴訟

Q 訴状送達前に、当事者(原告もしくは、被告)が死亡していた場合に、どのような対応が必要ですか。

2026/09/12 更新

死者名義訴訟

(1)訴状の到達時に、訴状に記載されていた原告または被告が死亡した場合(死者名義訴訟)、訴訟手続としてどのような問題があるでしょうか。
(2)まず、当事者の確定が問題となるが、訴状に記載された当事者(原告、被告)が訴訟の当事者となる(表示説)。
(3)次に、民事訴訟では、訴状が被告に送達されて訴訟事件が係属する。したがって、訴状の送達時に原告と被告が存在することが前提となっている。しかし、被告への訴状送達前に、訴状に記載されていた原告または被告が死亡した場合(死者名義訴訟)には、当事者を欠き、訴訟要件を欠くことになります。
(4)訴訟係属後に、当事者が死亡した場合には訴訟の受継(民事訴訟法124条)という制度があります。しかし、同制度は訴訟結後の承継制度です。
(5)訴訟係属前に、当事者が死亡した場合には、同制度の適用はない。原告は、本来の被告に対し訴状を送達し直すところからやり直す(任意的当事者変更)ことが原則です。

民事訴訟法124条 訴訟手続の中断及び受継
1項 次の各号に掲げる事由があるときは、訴訟手続は、中断する。この場合においては、それぞれ当該各号に定める者は、訴訟手続を受け継がなければならない。
一 当事者の死亡 相続人、相続財産の管理人、相続財産の清算人その他法令により訴訟を続行すべき者
二 当事者である法人の合併による消滅 合併によって設立された法人又は合併後存続する法人
三 当事者の訴訟能力の喪失又は法定代理人の死亡若しくは代理権の消滅 法定代理人又は訴訟能力を有するに至った当事者
 (省略)
2 前項の規定は、訴訟代理人がある間は、適用しない。
3 第一項第一号に掲げる事由がある場合においても、相続人は、相続の放棄をすることができる間は、訴訟手続を受け継ぐことができない。
 (省略)

任意的当事者変更

(1)訴状記載の当事者(原告、被告)とは別の者が、裁判所で当事者として活動したが、本来の当事者が、あえてその者の訴訟手続を引き継ぐ任意的当事者変更という手続きがあります。その手続の法的性質については、どのように考えるべきか。
(2)訴えの変更(民事訴訟法143条)は当事者の変更を含まない。また、当事者の変更を定める訴訟承継(民事訴訟法50条1項、51条)は、訴訟係属前に当事者が死亡した場合を法定していない。
(3)したがって、訴訟手続をはじめからやり直すのが適切であるから、任意的当事者変更については、新訴の提起と旧訴の取り下げを行う複合行為であるとされます。
(4)加えて、新訴訟について、双方、信義則上別の主張はできないとして、事実上、前の訴訟の訴訟結果の利用を求めていくことになります。

新訴の提起と旧訴の取り下げを行う複合行為であるとすると、第一審でのみしか許されないため、活用場面が乏しい、との指摘がある。
裁判所職員総合研修所「民事訴訟法講義案(三訂版)」42頁

コラム
 実務的な感覚としては、別訴訟となったとしても、前の訴訟の書面を出し直せば、前の訴訟から引き続いて審理を進めることができる。訴訟の遅延はほとんどないだろう。
 訴訟手続をはじめからやり直すのが一番手堅いとして、任意的当事者変更を「新訴の提起と旧訴の取り下げが併存する複合行為である。」と考えるのは納得である。

参考

 遠藤賢治「事例演習 民事訴訟法 第3版」27頁

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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