ご質問・ご相談などお気軽にお問い合わせください。

TEL 06-6773-9114

FAX 06-6773-9115

受付時間 : 平日10:00 ~18:00 土日祝除く

メールでの
お問い合わせ
検索

民事訴訟

【重要判例】判例(信義則による後訴の遮断)

2026/03/25 更新

最判昭和51年9月30日民集30巻8号799頁

「右事実関係のもとにおいては、前訴と本訴は、訴訟物を異にするとはいえ、ひっきょう、Aの相続人が、Bの相続人及び右相続人から譲渡をうけた者に対し、本件各土地の買収処分の無効を前提としてその取戻を目的として提起したものであり、本訴は、実質的には、前訴のむし返しというべきものであり、前訴において本訴の請求をすることに支障もなかった のにかかわらず、さらにXらが本訴を提起することは、本訴提起時にすでに右買収処分後約20年も経過しており、 右買収処分に基づき本件各土地の売渡 をうけたB及びその承継人の地位を不当に長く不安定な状態におくことにな ることを考慮するときは、信義則に照らして許されないものと解するのが相当である。 」

解説1 前訴と後訴の訴訟物

(1)旧訴訟物理論で前訴訟の訴訟物は、売買契約に基づく所有権移転登記請求権であるのに、後訴の訴訟物は土地所有権に基づく所有権移転登記請求権であるから、訴訟物は別です。

(2)しかし、新訴訟物理論では、請求権競合の事案において、給付を求める法的地位(受給権)を訴訟物と考えます。

(3)新訴訟物理論では、訴訟物は同じと考える余地がありました。

(4)なお、控訴の控訴審で、原告は土地所有権に基づく建物収去土地明渡し請求権を行使しており、新訴訟物理論でも、訴訟物が同じだとは評価し得ない。

参考

  長谷部由起子「基本判例から民事訴訟法を学ぶ」175頁以下

解説2 本案件の特殊性 

1 本判決の特殊性

(1)本判決は、特殊なケースであるとされて、その適用範囲は極めて限定的と理解する余地があった。

(2)本判決は、「後訴請求が実質的に前訴のむし返しであり、②前訴で後訴請求をすることに支障はなく、③ 後訴提起時すでに問題となっている実体法上の処分行為後約20年も経過しており、 Yおよびその承継人の地位に長く不安定な状態におくこと になることを理由に後訴を信義則に反するとして却下する。」ものです。

(3)「②前訴で後訴請求をすることに支障がなか訴権のったのに、後日行使する。」ことは、「訴権の濫用」と評価しているようにも思えます。

(4)「③ 後訴提起時すでに問題となっている実体法上の処分行為後約20年も経過している。」ことは「権利失効の法理」を適用したとも思えるからです。

2 その後の下級審判例

(1)その後、下級審判例は以下の事情を考慮して、信義則違反である控訴請求を遮断した。

(2)これによって、判決は信義則を理由に、訴訟物は異なるが、後訴が前訴の蒸し返しである場合に、控訴の請求や主張を却下することが判例法理となった。

①前訴における前訴における請求あるいは主張と後訴におけるそれとが実質上同一であること
②後訴で提出されている請求あるいは主張を前訴で提出し得たこと
③勝訴当事者が前訴判決により紛争が解決済みであるとの信頼を抱いており、 法的安定の要求を保護する必要があること
④前訴判決の正当性を確保するほどに前訴において充実した審理が行われていること、
⑤前訴において当事者が争う誘因を有していたこと

参考

  長谷部由起子「基本判例から民事訴訟法を学ぶ」177頁以下

解説3 当事者が異なる

 本判決については、後訴の原告らの中には、訴訴の原告ではない者も含まれている。前訴に関与しない当事者についても、前訴の判断に拘束される理由がない、という批判があります。

参考 

  長谷部由起子「基本判例から民事訴訟法を学ぶ」177頁以下

解説4 請求却下となっている

(1)前訴では原告は敗訴しています。前訴の既判力が後訴に及ぶのであれば、後訴での原告の請求は棄却となります。

(2)しかし、本判決は、前訴とは訴訟物も当事者も異なる後訴を信義則を理由に遮断しました。遮断とは本案判決をしない、訴訟要件を欠くということです。

参考 

  長谷部由起子「基本判例から民事訴訟法を学ぶ」176頁以下

「民事訴訟」トップに戻る

Contact.お問い合わせ