【重要判例】判例(引継承継)
2026/04/20 更新
最判昭和41年3月22日民集20巻3号484頁
1 引継承継の手続
(1)Xは、Aに対し土地を賃貸し、Aはその土地上に建物を建築した。
(2)Xは、Aに対し土地の賃貸借契約の終了に基づく建物収去土地明渡訴訟を提起していた。
(3)上記の訴訟中にAはYに対し建物を賃貸した。
(4)Xは訴訟引受けの申立てをした(民事訴訟法50条、51条)。
(5)なお、XはYに対し土地所有権に基づいて(建物から退去せという)土地明渡し請求をした。
(田中豊 「論点精解 民事訴訟法〔改訂増補版〕」 399頁以下。)
2 判決
「賃貸人が 土地賃貸借契約の終了を理由に、賃借人に対して地上建物の収去、土地の明渡を求める訴訟が係属に、土地賃借人からその所有の前記建物の一部を賃借し、これに基づき、当該建物部分および建物敷地の占有を承継した者は、旧民訴法74条(民事訴訟法50条)にいう『其ノ訴訟ノ目的タル債務ヲ承継シタル』者に該当すると解するのが相当である。けだし、土地賃借人が契約の終了に基づいて土地賃貸人に対して負担する地上建物の収去義務は、右建物から立ち退く義務を包含するものであり、 当該建物収去義務の存否に関する紛争のうち建物からの退去にかかる部分は、第三者が土地賃借人から係争建物の一部および建物敷地の占有を承継することによって、第三者の土地賃貸人に対する退去義務の存否に関する紛争という型態をとって、右両者間に移行し、第三者は当該紛争の主体たる地位を土地賃借人から承継したものと解されるからである。これを実質的に考察しても、第三者の占有の適否ないし土地賃貸人に対する退去義務の存否は、帰するところ、土地賃貸借契約が終了していないとする土地賃借人の主張とこれを支える証拠関係(訴訟資料)に依存するとともに、他面において、土地賃貸人側の反対の訴訟資料によって否定されうる関係にあるのが通常であるから、かかる場合、土地賃貸人が、第三者を相手どって新たに訴訟を提起する代わりに、土地賃借人との間の既存の訴訟を第三者に承継させて、従前の訴訟資料を利用し、争いの実効的な解決を計ろうとする要請は、旧民訴法74条(民事訴訟法50条)の法意に鑑み、正当なものとしてこれを是認すべきであるし、これにより第三者の利益を損うものとは考えられないのである。そして、たとえ、土地賃貸人の第三者に対する請求が土地所有権に基づく物上請求であり、土地賃借人に対する請求が債権的請求であって、前者と後者とが権利としての性質を異にするからといって、叙上の理は左右されないというべきである。されば、本件土地賃貸借契約の終了を理由とする建物収去土地明渡請求訴訟の係属中、土地賃借人であった第一審被告亡Aからその所有の地上建物中の判示部分を賃借使用するにいたったYに対してXがした訴訟引受の申立を許容すべきものとした原審の判断は正当であり、所論は採用できない。」
解説
1 承継の判断
(1)Xは訴訟引受けの申立てをした(民事訴訟法50条、51条)。
(2)承継の主張に理由があるかは本案の問題であるから、審理の結果、承継に理由があると判断されなかった場合には請求棄却判決となります。 (田中豊 「論点精解 民事訴訟法〔改訂増補版〕」 399頁以下。)
2 紛争の主体
(1)承継人は、承継原因が生じた時までに形成された従前の当事者(前主) と相手方の間の訴訟状態を、全面的に(有利・不利を問わず) 引き継ぎます。
(2)判決は、紛争主体たる地位を承継した者であるかについて、従前の当事者(前主)と相手方の間の訴訟状態を、全面的に(有利・不利を問わず)引き継くべき第三者にあたるかで判断しています。
(3)判決は、承継人が、従前の当事者(被承継人) の当事者適格を承継したかどうかではという観点では、紛争主体たる地位を承継した者であるかについて判断していません(田中豊 「論点精解 民事訴訟法〔改訂増補版〕」 403頁)。
3 前主の相手方に対する請求と、承継人への請求の同一性(訴訟の実質的同一性)
(1)前訴訟では、Xは、Aに対し土地の賃貸借契約の終了に基づく建物収去土地明渡訴訟を提起していた。
(2)承継後の後訴訟では、XはYに対し土地所有権に基づいて(建物から退去せという)土地明渡し請求となる。これは、土地賃借人が契約の終了に基づいて土地賃貸人に対して負担する地上建物の収去義務は、右建物から立ち退く義務を包含する関係にある。(田中豊 「論点精解 民事訴訟法〔改訂増補版〕」 399頁以下)。
4 主張な争点(攻撃防御方法)が共通(承継人の手続保障)
(1)訴訟中にAはYに対し建物を賃貸している。実体法上、Yの占有権限はAに依存しており、AはYとは別の法的な主張をできる立場ではない。
(2)主張な争点(攻撃防御方法)が共通していることから、Aの主張はYが代わりに主張しておりYにAの訴訟状態を承継させても、Yの手続保障にかくものではない。
(3)以上から、承継人Yは、紛争主体たる地位を承継した者であたる。
| (3)判決は、主張な争点(攻撃防御方法)が共通であることから、承継人(第三者)の利益を損わないと認定している (田中豊 「論点精解 民事訴訟法〔改訂増補版〕」 404頁以下)。 |
5 訴訟承継の効果
(1)判決は、①訴訟物の目的が同一であるか(相手方の利益)、②主張な争点(攻撃防御方法)が共通であり、承継人の主張は前主が代わりに主張しており被承継人の訴訟状態を承継させても、承継人の手続保障に欠くものものではない場合に、訴訟承継を認めています。
(2)例えば、訴訟承継が認められるとしても、従前の当事者(被承継人と相手方)が慣れない訴訟をしていた場合には、信義則の観点から、従前の訴訟状態からの拘束を免れる。
(3)しかし、上記の場合を除いて、承継人は従前の当事者(被承継人) と相手方の間の訴訟状態を、全面的に(有利・不利を問わず) 引き継ぐことになります。したがって、承継人は前主がした自白に反する主張をすることができず、時機に後れたものとして前主がすでに提出できなくなっている攻撃防御方法を提出することもできません。
参考
田中豊 「論点精解 民事訴訟法〔改訂増補版〕」 405頁






