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民事訴訟

Q 文書提出命令と自己使用文書について教えて下さい。

2026/04/26 更新

4号文書

(1)4号文書は、民事訴訟法220条4号が定める除外事由がない限り、文書の提出義務を負うという一般的な提出義務が認められていることを定めています
(2)4号文書として、文書提出命令の対象となる文書にあたるかは、主に、民事訴訟法220条4号ニの「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(自己利用文書)にあたるかが争点となってきました。

民事訴訟法220条 文書提出義務
 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。
 一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。
 二 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。
 三 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。
 四 前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。
 イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書
 ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの
 ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書
 ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)
 ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書

最決平成11年11月12日民集53巻8号1787頁

(1)民事訴訟法220条4号ニの「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(自己利用文書)とは、①文書が外部に公開することを予定していない文書であること(内部文書性)、および②開示することで、個人のプライバシーや団体の自由な意思決定が阻害されるなど、所持者の所持者側に看過し難い不利益が生ずるおそれがある(不利益性)場合には、③特段の事情がない限り、自己利用文書に当たるとされました。
(2)①、②の要件のどちらかを欠けば、自己利用文書にあたりません。また、①②については、、「文書の作成目的、記載内」等を考慮するが、「証拠としての重要性、当事者の公平、事案の公益性等」は考慮の対象となりません。

参考

 田中豊 「論点精解 民事訴訟法〔改訂増補版〕」 248頁、253頁

最決平成11年11月12日民集53巻8号1787頁
 銀行の貸出稟議書(銀行の融資をするかどうか判断する銀行内の文書)については、①もっぱら銀行内部で利用することが予定された文書で、②開示されると銀行内部で自由な意見表明が出来なくなるとして、自己利用文書にあたり、文書提出命令は認められないとされました。

最決平成12年12月14日民集54巻9号2709頁
 信用組合の会員代表訴訟という、企業内部の監視・監督機能が期待される訴訟類型においても、貸出稟議書は、自己利用文書にあたり、文書提出命令は認められないとされれました。 

最決平成13年12月7日民集55巻7号1411頁
(1)金融機関が破綻した事例で、貸出稟議書は自己利用文書にあたらず、文書提出命令が認められました。
(2)しかし、これは、例外的な事例であると理解されていた。このため、貸出議書は定型的に文書提出義務が否定され、団体の意思決定に関係する他の社内文書も、同様に否定されると考えられていた。

最決平成18年2月17日民集60巻2号496頁
 銀行の本部から各営業店長宛に発出されたいわゆる社内通達文書で、その内容が一般的な業務遂行上の指針を示し、あるいは客観的な業務結果報告を記載したものにつき、②の要件を欠くとして文書提出義務を肯定した。

最決平成19年11月30日民集61巻8号3186頁
 資産査定を行う前提となる債務者区分を行うために銀行が作成した自己査定文書につき、監督官庁による査定結果の正確性についての事後的検証に備えて作成し保存されている文書であることや、資産査定をすることが法定によって義務付けられていることから、①の要件を欠くとして文書提出義務を肯定した。

①内部だけで利用することを目的に作成し保存する文書であったか。
 自己査定文書は、監督官庁による査定の際に金融機関は監督官庁に提出することを予定していた文書であった。

②Y銀行に著しい不利益があったか。
 自己査定文書には、A社の信用状況の評価と債務者区分が記載されていたが、その資産状況を一定のルールで決めるものであり、Y社の決定過程が明らかになっても、Y社に著しい不利益はありません。

③A社に著しい不利益があったか。
 A社は民事再生手続が決定されており、A社の財務状況が明確になったとおしても、A社に著しい不利益はありません。
 以上を考慮して、 自己査定文書について、「自己利用文書」にあたらず、文書提出義務が肯定されました。

 なお、平成19年最高裁決定は、文書としての作成・保存目的に着目して、「自己利用文書」にあたらないとして、文書提出義務を肯定しました。したがって、証拠としての重要性、当事者の公平、事案の公益性等を比較考慮したものではありません。

参考
 田中豊 「論点精解 民事訴訟法〔改訂増補版〕」 250頁以下

参考
 長谷部由起子「基礎演習 民事訴訟法 第3版補訂版」146頁以下。

 

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