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民事訴訟

【重要判例】判例(文書提出命令)

2026/04/26 更新

4号文書

(1)4号文書は、民事訴訟法220条4号が定める除外事由がない限り、文書の提出義務を負うという一般的な提出義務が認められていることを定めています
(2)4号文書として、文書提出命令の対象となる文書にあたるかは、主に、民事訴訟法220条4号ニの「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(自己利用文書)にあたるかが争点となってきました。

最決平成11年11月12日民集53巻8号1787頁

「1 ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情
から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書
であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりす
るなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがある
と認められる場合には、特段の事情
がない限り、当該文書は民訴法220条4号ハ(平成13年改正後の同号ニ] 所定の「専ら文書の所特者の利用に供する
ための文書』に当たると解するのが相当である。
 2 これを本件についてみるに、記録によれば、銀行の貸出 議書とは、支店長等の決裁限度を超える規模、内容の融資案件について、本部の決裁を求めるために作成されるものであって、通常は、融資の相手方、融資金額、資金使途,担保・保証、返済方法といった融資の内容に加え、銀行にとっての収益の見込み、融資の相手方の信用状況、融資の相手方に対する評価、融資についての担当者の意見などが記載され、それを受けて審査を行った本部の担当者、次長、部長など所定の決裁権者が当該貸出しを認めるか否かについて表明した意見が記載される文書であること、本件文書は、貸出 議書及びこれと一体を成す本部認可書であって、いずれもY銀行がAに対する融資を決定する意思を形成する過程で、右のような点を確認、検討、審査するために作成されたものであることが明らかである。
 3 右に述べた文書作成の目的や記載内容等からすると、銀行の貸出議書は、銀行内部において、融資案件についての意思形成を円滑、適切に行うために作成される文書であって、法令によってその作成が義務付けられたものでもなく、融資の是非の審査に当たって作成されるという文書の性質上、忌たんのない評価や意見も記載されることが予定されているものである。したがって、貸出議書は、専ら銀行内部の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定されていない文書であって、開示されると銀行内部における自由な意見の表明に支障を来し銀行の自由な意思形成が阻害されるおそれがあるものとして、特段の事情がない限り、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書』に当たると解すべきである。そして、本件文書は、前記のとおり、右のような貸出 議書及びこれと一体を成す本部認可書であり、本件において特段の事情の存在はうかがわれないから、いずれも『専ら文書の所持者の利用に供するための文書』に当たるというべきであり、本件文書につき、Y銀行に対し民訴法220条4号に基づく提出義務を認めることはできない。」

(1)上記の判例は以下の明確にした判例です。
(2)民事訴訟法220条4号ニの「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(自己利用文書)とは、①文書が外部に公開することを予定していない文書であること(内部文書性)、および②開示することで、個人のプライバシーや団体の自由な意思決定が阻害されるなど、所持者の所持者側に看過し難い不利益が生ずるおそれがある(不利益性)場合には、③特段の事情がない限り、自己利用文書に当たるとされました。
(3)①、②の要件のどちらかを欠けば、自己利用文書にあたりません。また、①②については、、「文書の作成目的、記載内」等を考慮するが、「証拠としての重要性、当事者の公平、事案の公益性等」は考慮の対象となりません。
参考
 田中豊 「論点精解 民事訴訟法〔改訂増補版〕」 248頁以下

最決平成19年11月30日民集61巻8号3186頁

「ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、①専ら内部の者の利 用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていな い文書であって、②開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個 人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって 所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合 には、特段の事情がない限り、当該文書は民訴法220条4号ニ所定の 「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たると解するのが
相当である。
 銀行は、法令により資産査定が義務付けられているところ、本件文書は、Y 銀行が、融資先である A社について、前記検査マニュアルに沿って、同社に対して有する債権の資産査定を行う前提となる債務者区分を行うために作成し、事後的検証に備える目的もあって保存した資料であり、このことからすると、本件文書は、前記資産査定のために必要な資料であり、監督官庁による資産査定に関する前記検査において、資産査定の正確性を裏付ける資料として必要とされているものであるから、Y銀行自身による利用にとどまらず、Y 銀行以外の者による利用が予定されているものということができる。そうすると、本件文書は、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であるということはできず、民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらないというべきである。

1 最決平成19年11月30日民集61巻8号3186頁
(1)本判決は、「資産査定を行う前提となる債務者区分を行うために銀行が作成した自己査定文書につき、監督官庁による査定結果の正確性についての事後的検証に備えて作成し保存されている文書であることや、資産査定をすることが法定によって義務付けられていることから、①の要件を欠くとして文書提出義務を肯定した。」判例です。
(2)具体的には、以下のとおりの検討をしたものと考えられます。

2 具体的な事案の検討
(1)①内部だけで利用することを目的に作成し保存する文書であったか。
 自己査定文書は、監督官庁による査定の際に金融機関は監督官庁に提出することを予定していた文書であった。
(2)②Y銀行に著しい不利益があったか。
 自己査定文書には、A社の信用状況の評価と債務者区分が記載されていたが、その資産状況を一定のルールで決めるものであり、Y社の決定過程が明らかになっても、Y社に著しい不利益はありません。
(3)③A社に著しい不利益があったか。
 A社は民事再生手続が決定されており、A社の財務状況が明確になったとおしても、A社に著しい不利益はありません。
 以上を考慮して、 自己査定文書について、「自己利用文書」にあたらず、文書提出義務が肯定されました。

3 自己利用文書の検討方法
 なお、平成19年最高裁決定は、文書としての作成・保存目的に着目して、「自己利用文書」にあたらないとして、文書提出義務を肯定しました。したがって、証拠としての重要性、当事者の公平、事案の公益性等を比較考慮したものではありません。

参考
 田中豊 「論点精解 民事訴訟法〔改訂増補版〕」 250頁以下

参考
 長谷部由起子「基礎演習 民事訴訟法 第3版補訂版」146頁以下。

最決平成12年12月14日民集54巻9号2709頁
 信用組合の会員代表訴訟という、企業内部の監視・監督機能が期待される訴訟類型においても、貸出稟議書は、自己利用文書にあたり、文書提出命令は認められないとしました。 

最決平成13年12月7日民集55巻7号1411頁
(1)金融機関が破綻した事例で、貸出稟議書は自己利用文書にあたらず、文書提出命令が認められた。
(2)しかし、これは、例外的な事例であると理解されていた。このため、貸出議書は定型的に文書提出義務が否定され、団体の意思決定に関係する他の社内文書も、同様に否定されると考えられていた。

最決平成18年2月17日民集60巻2号496頁
 銀行の本部から各営業店長宛に発出されたいわゆる社内通達文書で、その内容が一般的な業務遂行上の指針を示し、あるいは客観的な業務結果報告を記載したものにつき、②の要件を欠くとして文書提出義務を肯定した。

最決平成19年11月30日民集61巻8号3186頁
 資産査定を行う前提となる債務者区分を行うために銀行が作成した自己査定文書につき、監督官庁による査定結果の正確性についての事後的検証に備えて作成し保存されている文書であることや、資産査定をすることが法定によって義務付けられていることから、①の要件を欠くとして文書提出義務を肯定した。

①内部だけで利用することを目的に作成し保存する文書であったか。
 自己査定文書は、監督官庁による査定の際に金融機関は監督官庁に提出することを予定していた文書であった。

②Y銀行に著しい不利益があったか。
 自己査定文書には、A社の信用状況の評価と債務者区分が記載されていたが、その資産状況を一定のルールで決めるものであり、Y社の決定過程が明らかになっても、Y社に著しい不利益はありません。

③A社に著しい不利益があったか。
 A社は民事再生手続が決定されており、A社の財務状況が明確になったとおしても、A社に著しい不利益はありません。
 以上を考慮して、 自己査定文書について、「自己利用文書」にあたらず、文書提出義務が肯定されました。

 なお、平成19年最高裁決定は、文書としての作成・保存目的に着目して、「自己利用文書」にあたらないとして、文書提出義務を肯定しました。したがって、証拠としての重要性、当事者の公平、事案の公益性等を比較考慮したものではありません。

参考
 田中豊 「論点精解 民事訴訟法〔改訂増補版〕」 250頁以下

参考
 長谷部由起子「基礎演習 民事訴訟法 第3版補訂版」146頁以下。

 

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