民事訴訟

Q 二重起訴の禁止とは何ですか。

2026/08/22 更新

二重起訴の禁止

(1)二重起訴の禁止は、既判力が衝突する二つの訴えについて、二重に審理をすることによる裁判所や当事者負担や、二つの請求の既判力が矛盾することによる混乱を回避することにある。
(2)①ある訴訟の係属中に、②当事者が同一で、③訴訟物が同じ訴えが、別訴や反訴で提起されることは認められない(民事訴訟法142条)。

民事訴訟法142条(重複する訴えの提起の禁止)
 裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。

①訴訟が係属中であること

(1)訴訟が係属している場合には、二重起訴の問題である。

(2)訴訟が確定していれば、既判力の作用の問題となる。

②当事者が同一であること


(1)既判力は、当該確定判決に係る訴訟の当事者に限って作用する。

(2)民事訴訟法115条1項に規定される者や訴訟脱退者(48条、50条、51条)も当事者が同一として扱われる。

民事訴訟法115条 (確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
1項 確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
 一 当事者
 二 当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
 三 前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
 四 前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
2項 前項の規定は、仮執行の宣言について準用する

③訴訟物が同一であること

(1)既判力が抵触する可能性があれば、二重起訴の問題となる。

(2)相殺の抗弁は、裁判所が審理したときには、その理由中の判断として既判力が及ぶ(民事訴訟法114条)ので、二重起訴の問題となる。

民事訴訟法114条 (既判力の範囲)
1項 確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。
2項 相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する。

既判力は抵触しないが実質的に争点が同一な場合には二重起訴の問題ではない

(1)二重起訴の禁止は、既判力が衝突する二つの訴えについて、二重に審理をすることによる裁判所や当事者負担や、二つの請求の既判力が矛盾することによる混乱を回避することにある。

  しかし、訴訟物が違うために既判力の抵触は起きない場合には、実質的に争点が同じで、両判決の判断が矛盾しそうな場合でも、二重起訴(142条)に該当しない。

(2)もっとも、実質的に争点が矛盾しそうな場合には、事件の移送、弁論の併合(152条1項)、訴訟の事実上の中止など、多様かつ柔軟な対応がされることになる。

訴訟物が同じ場合に反訴でも、二重起訴の問題となる

(1)反訴であれば、同一裁判所で審理するので、二重起訴にあたらないという考え方もあります。

(2)もっとも、判例は、弁論の分離等の可能性もあることから、反訴であっても、二重起訴となると考えています。

参考 
 勅使川原和彦 「読解 民事訴訟法」118頁以下

 

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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