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民事訴訟

Q 二重起訴の禁止とは何ですか。

2026/04/12 更新

二重起訴の禁止

(1)①ある訴訟の係属中に、②訴訟物が同一の請求について、③当事者が同一の、④別の訴訟で訴え提起することは認められない(142条)。

民事訴訟法142条(重複する訴えの提起の禁止)
 裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。

①訴訟が係属中であること

(1)訴訟が係属している場合には、二重起訴の問題である。

(2)訴訟が確定していれば、既判力の作用の問題となる。

②訴訟物が同一であること

(1)二重起訴の趣旨としては、二重に審理をすることによる裁判所や被告の負担と、二つの訴訟の既判力が矛盾することによる混乱の回避である。

(2)既判力が抵触しないが、実質的にその判断内容が矛盾する場合には、被告の負担等を理由に、信義則上、別訴訟の提起を禁止することも考えられる。

(3)二重起訴を理由に別訴訟の提起を禁止するということは、「前訴訟が確定するまで、後訴訟を提起できない。前訴訟の確定後に後訴訟を提起する。」という結論となる。しかし、個別具体的な事情によっては、「前訴訟が先に審理することが適切で、前訴訟を確定後に後訴訟を提起するのが適切である。」とはいえない。

(4)二重起訴(142条)の場合には、既判力が抵触しない両事件については、別訴訟も当事者が同一となる事案であるから、既判力の抵触の可能性について見逃される可能性は少ない。

 むしろ、両訴訟を併存させた上で、裁判官が個別具体的な事情を考慮し、事件の移送、弁論の併合(152条1項)、訴訟の事実上の中止など、多様かつ柔軟な対応をすることを認めたほうが妥当な解決を図ることができる。

(5)これに対して、前訴訟が確定した後に、後訴訟が提起された場合には、前訴訟は既に終了しており、上記の方法で対応する余地はない。
 また、前訴訟が確定した後に、後訴訟が提起された場合、前訴訟の結果を踏まえて、後訴訟について進行を考える必要がある。後訴訟が提起された初期の段階で、訴訟物が同一ではなくても、信義則を理由に、前訴訟の判断と後訴訟が同一かどうかを判断すべきである。これと、二重起訴を同じく考える必要はない。

(6)したがって、訴訟物が違うために、既判力の抵触は起きないが、実質的に争点が同じで、両判決の判断が矛盾しそうなケースでは、二重起訴(142条)に該当するとして却下せずに、事件の移送、弁論の併合(152条1項)、訴訟の事実上の中止など、多様かつ柔軟な対応がされている。

参考
 名津井吉裕ほか「事例で考える民事訴訟法 」64頁、65頁以下

③当事者が同一であること


(1)既判力は、当該確定判決に係る訴訟の当事者に限って作用する。

(2)民事訴訟法115条1項に規定される者や訴訟脱退者(48条、50条、51条)も当事者が同一として扱われる。

民事訴訟法115条 (確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
1項 確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
 一 当事者
 二 当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
 三 前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
 四 前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
2項 前項の規定は、仮執行の宣言について準用する

④別の訴訟で訴え提起すること

(1)反訴することは、同一裁判所で審理されるために、二つの訴訟物の判断が矛盾することが有りえないので許される。

(2)別訴訟にて相殺の主張をする場合には、既判力(114条2項)が生じうるため、問題となる。

民事訴訟法114条 (既判力の範囲)
1項 確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。
2項 相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する。

参考
 名津井吉裕ほか「事例で考える民事訴訟法 」70頁以下

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