民事訴訟

Q 通常共同訴訟において、共同訴訟人の主張が一致しないために、裁判所が認定する事実が実体法上矛盾することに問題はないのか。

2026/10/29 更新

通常共同訴訟

(1)通常共同訴訟の要件は、「権利・義務が共通している場合や、同一の事実・法律上の原因に基づいている」場合に成立します(民事訴訟法38条)。

(2)通常共同訴訟では、個別の事件が一定の関連性があるため (民事訴訟法38条)、 1つの手続に併合されているに過ぎない。
 証拠共通の原則を除いて、共同訴訟人の1人の訴訟行為は、他の共同訴訟人に影響を与えない(民事訴訟法39条)(共同訴訟人独立の原則)。

民事訴訟法39条 共同訴訟人の地位
 共同訴訟人の一人の訴訟行為、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の一人について生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない。

共同訴訟人独立の原則

(1)共同訴訟人の一人がした事実主張について、他の共同訴訟人が援用しない場合には、その事実主張は他の共同訴訟人に影響を与えない(民事訴訟法39条)。

(2)通常共同訴訟でも、裁判所が認定する事実が実体法上矛盾することは避けるべきである。

(3)通常共同訴訟において、共同訴訟人の主張が一致しないために、裁判所が認定する事実に違いが出る場合には、裁判所は共同訴訟人に、主張の整理を釈明すべきである。

(4)しかし、共同訴訟人の一人が欠席した場合には、他の共同訴訟人の一人がした事実主張について、援用しないために、弁論主義の第一テーゼによって、裁判所が認定する事実が実体法上矛盾することがありえます。

実体法との矛盾

(1)例えば、主債務者と保証人が共同被告人となっている通常共同訴訟において、保証人が欠席すれば、裁判所が認定する事実が実体法上矛盾することがありえます。

実体法上の問題
 例えば、主債務者と保証人を共同被告人とする通常共同訴訟にて、主債務者の勝訴が確定したが、保証人は欠席したために敗訴した。保証人が敗訴して履行した後に、主債務者に対し求償請求をすることは考えられ、「主債務者は勝訴した意味がなくなる。」という批判があります。(令和8年司法試験で出題)

「主張共通の原則」を認める見解(令和8年司法試験で出題)

(1)共同訴訟人の一人のした主張は、他の共同訴訟人がこれと抵触する主張をせず、かつ、他の共同訴訟人にとって利益である場合に限り、その者にも効力を生じる、とする見解もあります。
(2)肯定説の根拠は、効果が及ぶのが嫌な他の共同訴訟人は独自に訴訟行為をすればよいし、共同訴訟人の一人が否認して争う以上は、その点を争うことについて相手方にとって不意打ちになるわけではないし、その点の審理が必要となるから、裁判の不当な遅延に繋がるわけではないことにあります。(高橋宏志「重点講義民事訴訟法(下) 第2版補訂版」373頁)
(3)実務は、「主張共通の原則」を否定しています。
(4)否定説の根拠は、当事者の主張しない事実を認定してはならないという弁論主義に反する(安西明子ほか「民事訴訟法〔第3版〕 (有斐閣ストゥディア)」223頁以下)。さらに、当事者にとって予想されない事実を裁判所が認定することになりかねず、他の共同訴訟人が援用していない事実を認定することは、不意打ちとなるからです(小林秀之「新法学ライブラリ10 民事訴訟法 第2版」170頁以下)。

(1)主張共通を認める見解も、共同訴訟人の一人のした主張は、他の共同訴訟人がこれと抵触する主張をせず、かつ、他の共同訴訟人にとって利益である場合に限り、その者にも効力を生じる、とする。
(2)したがって、共通訴訟人の一人がした自白は、不利益であるから、主張共通の対象とならない(令和8年司法試験で出題)

(1)通常共同訴訟の主張共通は、司法試験令和8年で出題されれた。
(2)司法試験・予備試験では、判例で否定されている反対説(有力説)についても出題されている。
(3)「主張共通の原則」は実務上否定されたマイナー論点である。もっとも、下記の「当然の補助参加」の理論は、「補助参加の利益の要件を無視すれば、その効果は主張共通の原則と同じであった。」したがって、したがって、判例(最判昭和43年9月12日民集22巻9号1896号)が出題された、と考えるべきだろう。

当然の補助参加

(1)そこで、学説において、「主債務者には保証人のために補助参加する利益があるので、補助参加の申し出をしなくても、補助参加をしたのと同一の効力を認めてよい(当然の補助参加理)」という考え方があります。
(2)しかし、判例(最判昭和43年9月12日民集22巻9号1896号)は、補助参加の申出がない限り、補助参加がされたのと同じ効力は認められない、と判断しました。

最判昭和43年9月12日民集22巻9号1896号

(1)判例(最判昭和43年9月12日民集22巻9号1896号)は、当然の補助参加の理論を否定しました。
(2)通常の共同訴訟においては、共同訴訟人の一人のする訴訟行為は他の共同訴訟人のため効力を生じない。
(3)共同訴訟人に補助参加の利益があっても、補助参加の効力を得るのには補助参加の申出が必要である。補助参加の申出がないのにあるとして扱うと、明確な基準を欠き訴訟が困難する、という理由です。
(3)本判決は、補助参加の利益が認められないために、補助参加は認められない事案でした。しかし、本判決は一般として、補助参加の申出がない限り、補助参加がされたのと同じ効力は認められない、と判断しました。

参考

 長谷部由起子「基本判例から民事訴訟法を学ぶ」256頁以下

(1)当然の補助参加(申出不要説)によれば、主張共通の原則の効果と同じものを得ることができます。
(2)しかし、主張共通の原則は、補助参加の利益のない共同訴訟人間でも生ずる点で当然の補助参加よりも広く、また、上訴行為には及ばないという点で当然の補助参加よりは狭い。
(3)補助参加の利益の判断は必ずしも容易でないことと比べると、主張共通の原則の方が要件と効果が明確であるという利点がある。しかも、当然の補助参加は判例が否定しており(最判昭和43年9月12日民集22巻9号1896号)、その関係でも「主張共通の原則」が有力説だとされている理由となります。

参考
 高橋宏志「重点講義民事訴訟法(下) 第2版補訂版」374頁
弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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