Q 会社が従業員から定期健康診断の結果を受け取るにはどのような手続が必要ですか。
2026/05/17 更新
1 会社の義務
(1)労働安全衛生法は、事業者に 対して、労働者への健康診断の実施を義務付け(66条1以降)、その結果について記録を作成し、保管することも義務付けています(安衛則51条)。
(2)会社は、従業員から、定期健康診断の結果のうち、法令の項目についてその結果を保存する義務を負います。
(3)しかし、健康診断書の内容は要配慮個人情報です(個人情報保護法2条3項)。
会社が会社が従業員から定期健康診断の結果を受け取るにはどのような手続が必要でしょうか。
2 健康診断の結果と個人情報保護法
(1)健康診断書の内容は要配慮個人情報です(個人情報保護法2条3項)。
(2)要配慮個人情報の取得には、原則として本人の同意が必要です(個人情報保護法20条2項)。しかし、健康診断結果の取得は法律(労働安全衛生法)の定めがあるために、本人の同意が不要となります。
しかし、定期健康診断の結果のうち法定の項目ではない診断結果については、本人の同意がなけえば取得できません。
| 胃・食道検査: 胃カメラ(内視鏡)や胃バリウム、ピロリ菌検査 大腸検査: 便潜血反応検査、大腸カメラ 腫瘍マーカー検査: がんの早期発見の指標となる血液検査(CEA, AFP, CA19-9など) 甲状腺検査: TSH, FT3, FT4などの血液検査 肺機能検査: スパイロメーター(肺活量や呼吸のしやすさの測定) 眼底検査・眼圧検査: 緑内障や網膜症などのリスク確認 腹部超音波(エコー)検査: 肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓などの臓器の形態確認 頸動脈超音波検査: 動脈硬化の進行度やプラークの有無 |
3 定期健康診断の結果のうち法定の項目ではない診断結果と、本人の同意
(1)定期健康診断の結果のうち法定の項目ではない診断結果について、会社が取得する方法としては、本人から個別の同意書を取得する方法があります。
(2)そのほかに、「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」によれば、労使で十分に話し合いのうえ、就業規則に健康情報等の取扱いに関する規程を盛り込み、労働者に周知している場合には、労働者本人が当該健康情報等を提出したことをもって、労働者本人からの同意があったとすることができる、とされていいます。
参考
ビジネスガイド2026年6月号105頁
| 労働安全衛生法66条(健康診断) 1項 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。 (以下、省略) |
| 厚生労働省令で定めるところとしては、労働安全衛生規則が以下の定めをおいています。 第43条 雇入時の健康診断 第44条 定期健康診断 第45条 特定業務(坑内労働・深夜業等の有害業務)従事者の健康診断 第45条の2 海外派遣労働者の健康診断 第47条 給食従事者の検便 |
Q 一般的な企業では、どんな健康診断が必要ですか。
A
(1)以下の2つの健康診断が必要です。
雇入時の健康診断
定期健康診断
(2)以下の健康診断は、特殊な業種では、必要になるという理解で大丈夫です。
| 第45条 特定業務(坑内労働・深夜業等の有害業務)従事者の健康診断 第45条の2 海外派遣労働者の健康診断 第47条 給食従事者の検便 |
Q 雇入時の健康診断とはどんなものですか。
A
(1)雇い入れ時の健康診断の費用は、1万円前後です。
(2)実際に、雇入時の健康診断をやっている企業は少ないのが現状です。
(3)社員の負担で健康診断を受けさせて、入社書類として、健書類診断の結果を提出させる企業もあります。
なお、法律上は、雇い入れる企業が健康診断の費用を負担する義務がありますが、入社書類として、健康診断の書類を提出させるときには、会社が負担しなくても法律上は違法ではありません。
Q 健康診断の費用負担は誰がするのか。
A
(1)法律で義務付けられている健康診断の費用については、法律上、会社の負担となるとされています。
(2)なお、再検査や精密検査の必要性が指摘された場合、再検査等に必要な費用を誰が負担するかについては、法律に特別な定めがありません。
この場合の費用については、就業規則等で社員の負担とされている企業が多いです。
Q 会社が指定した病院でなく、自身のかかりつけの病院で健康診断をしたいと言っている従業員がいる。認めて良いか。
A
(1)認めて問題ありません。
(2)その場合の費用については、本人負担としてもよいとされます。
Q 健康診断の受診時間は労働時間ですか。
A
(1)健康診断の受診は、労働時間とすることが望ましいとされていますが、必ずしも、労働時間とする必要はありません。
(2)会社が指定した病院での健康診断は労働時間とし、自身のかかりつけの病院で健康診断をする場合には、労働時間としない会社が多いようです。
| (1)法律上、「特殊健康診断については、労働時間となる」とされています。 (2)特殊健康診断とは、労働安全衛生法第66第2項、3項で定められた健康診断(じん肺法第3条に定められている健康診断を含む)です。労働衛生対策上、特に有害であるといわれている業務に従事する労働者等を対象として実施するものです。 じん肺健康診断、鉛健康診断、特定化学物質等健康診断、電離放射線健康診断、有機溶剤健康診断、石綿健康診断、高気圧業務健康診断、四アルキル鉛健康診断、歯科健康診断がこれにあたります。 |
Q 小規模な事業所であれば健康診断は免除されないのか。
A
(1)法律上は、すべての会社に対し、常時使用する労働者については、毎年定期的に健康診断を実施しなければなりません(労働安全衛生法第66条)とされています。
(2)50人以上の従業員を使用する事業所で定期健康診断を実施した場合、労働基準監督署への結果報告が義務付けられています。
50人以下なら報告義務は免除されますが、定期健康診断の実施が免除されたわけではありません。
Q 企業が健康診断を受けさせる義務が発生する常時使用する労働者について教えて下さい。
A
以下のいずれかの要件を満たす労働者をいいます。
①期間の定めのない労働契約により使用される者
②雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上使用される予定の者(過去1年間に引き続き雇用されている者を含む)
③その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。
Q 定期健康診断はいつ実施すればよいのか。
A
(1)法律上は1年に1度実施するとしか定めていません。
(2)「1年以内に受診せよ。」では、会社としては管理できません。したがって、「7月から9月」の間に受信して下さい、と期間を制限して管理するのがよいでしょう。
このようにすることで、毎月7月から9月に実施することで、1年に1度のタイミングを管理します。
Q 定期健康診断の実施結果はどのように管理すればよいですか。
A
(1)従業員から定期健康診断の結果を受け取って管理をして下さい。
(2)PDF等にして管理するのが簡便です。
(3)会社は、従業員の配偶者の定期健康診断の結果を受け取ってはいけません。
従業員の配偶者の定期健康診断の費用を補助してもよいですが、その結果を受け取ることは個人情報の問題があります。






