判例(自動で必要な人員数を割り出して、年次有給休暇を認めるかどうかを判定するシステムがあっても、恒常的に人手不足で年次有給休暇を取得することが難しい場合には、同システムを利用して時季変更権を主張することは違法である、とされた。)
2025/03/03 更新
東京地判令和5年3月27日
東京地判令和5年3月27日
労判1288号18頁
事案
新幹線の乗務員が前月の20日前に、パソコン上で年次有給休暇を申請した。
システム上、新幹線の運行に必要な乗務員の数を割り出すことになっており、勤務日の5日前に、必要人数が足りないとして、年次有給休暇の申請を拒否した(時季変更権を行使した)。
乗務員が、年次有給休暇を不当に拒否されたとして、慰謝料請求をした。
判例
社員が年次有給休暇を請求した場合、会社には、①時季変更権を行使するかについて判断する合理的な期間でかつ、②年次有給休暇を希望する日の相当期限前に、時季変更権を行使する必要がある。
会社は、慢性的な人手不足を原因として、時期変更権を行使することはできない。
したがって、会社の対応は違法であるとして3万円から20万円の範囲で慰謝料請求を認めた。
解説
(1)労働者は年次有給休暇を請求できますが、会社は時季変更権があります。会社と労働者のバランスの上で時季変更権を適切に運用する必要があります。
(2)自動で必要な人員数を割り出して、年次有給休暇を認めるかどうかを判定するシステムがあっても、恒常的に人手不足で年次有給休暇を取得することが難しい場合には、同システムを利用して時季変更権を主張することは違法である、とされた判例です。
参考
ビジネスガイド2024年4月号26頁
ビジネスガイド2024年4月号70頁