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労使紛争

判例(入社1年目の社員が自殺したところ、精神障害の発症とこれによる自殺について、業務起因性が認められた。)

2025/06/29 更新

福岡地裁令和6年7月5日

1 概要

(1)入社1年目の労働者(以下、「本件労働者」という。)が、精神障害(うつ病)を理由に自殺したところ、精神障害の発症とこれによる自殺について、業務起因性が認められた。

(2)本件労働者の母親が、本件労働者が精神障害を発症したことと、これによる自殺について、業務起因性が認められるとして、遺族補償一時金を請求した。

(3)労働基準監督署は、不支給の決定をした。本件労働者の父親が不支給の決定の取消訴訟を提起した。

2 精神障害の労災認定について

(1)精神障害の労災認定について厚生労働省の認定基準がある。

(2)同基準を参考に、平均的労働者を基準として、業務の心理的ストレスが「強」と評価される場合には、精神障害の発症やこれによる自殺について相当因果関係が認められる。

3 精神的負荷

(1)本件労働者の死亡前の言動を考慮して、医師の件を参考に、うつ病であったと認定した。

(2)本件労働者が自殺した時点からの直近の時間外労働について、1ヶ月前は91時間、2ヶ月前は104時間、4ヶ月前は93時間である。
 1ヶ月に80時間以上の時間外労働を行っったに当たるから、心理的ストレスは、「中」と判断する。
 なお、直近2ヶ月でも、時間外は100時間であるから、心理的ストレスは、「強」と判断する余地もあった、と述べている。

(3)本件労働者を指導していた者の指導については、嫌がらせや不当な要求はなかったが、否定的なコメントをするのみで、具体的かつ適切な指導もされていないことから、心理的ストレスは、「中」と判断する。

(4)本件労働者に課せられていた目標については、本件労働者が自殺した時点からの直近で3件の受注があり、紳士的ストレスは「弱」と判断する。

(5)本件労働者が恋人と破局したことや、本件労働者の自律神経失調症(既往症)は個体脆弱性とは認められない。

(6)これらを総合的に考えると、全体的評価としても業務の心理的負荷は「強」に該当する。

(7)したがって、入社1年目の社員が自殺したところ、精神障害の発症とこれによる自殺について、業務起因性が認められる。

(8)よって、労働基準監督署の不支給の決定を取り消す、と判決した。

名古屋高裁令和5年4月25日

判例タイムズ1532号149頁

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