Q 刑事事件の尋問で、位置を関係を示すために、図面に記入してもらうときに、どんな手順を守る必要がありますか。
2026/06/06 更新
証言を明確にするための証拠の提示
(1)証人の供述を明確にするため必要があるとして、書面等を提示するには裁判所の許可が必要です(刑事訴訟法規則199条の12の1項)。
(2)なお、提示する書面等について、事前に検察官に示していることが必要である(刑事訴訟法規則199条の12の2項)。
| 刑事訴訟法199条の12 図面等の利用 1項 訴訟関係人は、証人の供述を明確にするため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、図面、写真、模型、装置等を利用して尋問することができる。 2項 前項の場合には、第199条の10第2項の規定を準用する。 |
実際の尋問
弁護人
Aさんは、Bさんの玄関から入ってどの部屋に移動しましたか。
証人
居間です。
弁護人
今の次はどこに移動しましたか。
証人
台所です。
(省略)
| 刑事訴訟では、突然、書面を提示することは許されない。 あくまで、証言を明確にするために、書面を利用する、ということにりなります。 |
弁護人
「Aさんの移動経路を明確にするために、Bさんの家の間取りの図面に移動経路をAさんに記載してもらうことで、Aさんの証言を明確にする必要があります。Bさんの家の間取りの図面を示して尋問させて頂きます。なお、同図面は、事前に検察官に示させて頂いております。」
裁判官
許可します。
| 証言の明確化のために証拠を示す場合には、裁判官の許可が必要です。 |
弁護人
まず、図面を見てください。これは何ですか。
証人
Bさんの家の間取りです。
弁護人
なぜ、そう言い切れるのですか。
証人
何回も行ったことがあるので分かります。
| (1)証拠を提示したときには、その証拠が何なのか、分かるかという質問をすることが必要になります。 (2)証人がその証拠を見て、その証拠を理解できているか、確かめる必要があります。 |
弁護人
AさんがBさんの家に入ったどき、どこから入られましたか。
証人
ここです。
弁護人
玄関ですね。そこに①と書いてください。
弁護人
Aさんが玄関からどこに移動しましたか。
証人
居間です。
弁護人
居間でね。そこに②と書いてください。
弁護人
玄関から居間まで、Aさんの移動経路を→で示してください。
弁護人
Aさんが居間からどこに移動しましたか。
証人
台所です。
弁護人
台所に③と書いてください。
弁護人
居間から台所まで、Aさんの移動経路を→で示してください。
弁護人
書記官、この図面のコピーを尋問調書に添付して下さい。
| 証言の明確化のために証拠を示す場合には、裁判官の許可が必要です。 |
弁護人
弁護人は証人に甲〇号(写真)を示す。
証人が見た車両は、この写真の車両ですか。
証人
はい。
弁護人
なぜ、そう言い切れるのですか。
証言を明確にするために、証拠等を見せることが許される他の場合
1 位置関係を明確にする例(地図・見取図)
(1)言葉だけで「交差点の北西の角から南に向かって……」と説明されても、裁判官や裁判員には正確な位置が伝わりにくいことがあります。
交通事故や傷害事件で、「被告人と被害者がどこに立っていたのか」「証人はどこからそれを見ていたのか」を明確にするため、現場の見取図や地図を証人に示し、「この図のどこですか?」と指差しさせながら証言してもらいます。
(2)現場の地図を示した場合には、地図を使った質問をする前に、「この地図が何の地図なのか。」「それがなぜ分かるのか。」を聞いて、現場の地図であることを確認する。
その後に、地図を使って話を聞く等の対応をします。
2 形状や同一性を明確にする例(凶器などの証拠品)
(1)「刃物を見た」という証言だけでは、それが果物ナイフなのか、サバイバルナイフなのか、包丁なのかが分かりません。
(2)殺人や強盗事件で、押収された実際の凶器(包丁など)を法廷で証人に示し、「あなたが犯行現場で見た刃物はこれですか?」「被告人はこれをどのように握っていましたか?」と確認し、証言の解像度を上げます。
3 現場の状況を明確にする例(写真)
(1)「部屋の中が荒らされていた」という抽象的な表現を、より客観的で具体的なものにするために使われます。
(2) 空き巣事件などで、犯行直後の現場写真を被害者(証人)に示し、「この写真に写っているタンスの引き出しは、あなたが家を出たときは閉まっていましたか?」などと質問し、被害に遭った状況を正確に浮かび上がらせます。
(3)「同一性の問題なのか」「証言を明確にするため」なのかは、立証の趣旨によって変わります。現場の状況を証人が証言してもらうことが目的で、現場の写真を示すのであれば、現場の状況を明確にするために写真を示したと考えることになるでしょう。






