Q 刑事事件の尋問で、証拠等を証人等に見せるのが原則禁止されるのはなぜですか。
2026/06/29 更新
証人に証拠を提示することの問題
(1)公判中心主義は、刑事訴訟において、裁判官は法廷で行われた証拠調べに基づいて判断しなければならないとする考え方です。刑事事件の場合には、警察が被疑者の取り調べをして、自白調書が作成されることもあります。 仮に、裁判の前に、裁判所が書証(証人が被疑者の犯行を目撃した内容の調書、防犯カメラの映像、被告人が自白した調書)を全て見てしまうとどうなるでしょうか。実際の裁判が形骸化する、というリスクがあります。
(2)刑事裁判では、「伝聞証拠については、その作成者が法廷で証言することを原則とすること」「伝聞証拠については相手方の同意のない限り、証拠とできないのが原則とすること」になっています。 証人に対して、「調書には『●●』と書かれていますね。」という形で書面の引用を自由に認めると、書面の中身が証人の証言に代わってしまいます。そうなれば、伝聞法則は潜脱されてしまいます。
(3)人の記憶は非常に脆く、外部からの情報によって簡単に影響を受けてしまいます。客観証拠や過去の調書を見せられることで、「あぁ、そうだったに違いない」と証拠に合わせて記憶が書き換えられてしまうおそれがあります。
(4)書面や証拠物をいきなり提示することは、「ここにこうあるから、こう答えなさい」という強力な誘導尋問として機能してしまいます。
刑事訴訟法規則
刑事事件の尋問で、証拠等を証人等に見せることは、刑事訴訟法規則199条の10等で禁止されている。
| 刑事訴訟法第199条の10 書面又は物の提示 1項 訴訟関係人は、書面又は物に関しその成立、同一性その他これに準ずる事項について証人を尋問する場合において必要があるときは、その書面又は物を示すことができる。 2項 前項の書面又は物が証拠調を終つたものでないときは、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。ただし、相手方に異議がないときは、この限りでない。 刑事訴訟法第199条の11 記憶喚起のための書面等の提示 1項 訴訟関係人は、証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、書面(供述を録取した書面を除く。)又は物を示して尋問することができる。 2項 前項の規定による尋問については、書面の内容が証人の供述に不当な影響を及ぼすことのないように注意しなければならない。 3項 第1項の場合には、前条第2項の規定を準用する。 刑事訴訟法199条の12 図面等の利用 1項 訴訟関係人は、証人の供述を明確にするため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、図面、写真、模型、装置等を利用して尋問することができる。 2項 前項の場合には、第199条の10第2項の規定を準用する。 |






