Q 検察官が、取調べ時の録音録画された際の被告人の発言を引用をすることは許されますか。
2026/08/26 更新
被告人の取調べと録音録画
(1)被告人の取調べでは、被告人の発言が録音録画されています。
(2)被告人の反対尋問のときに、検察官が録音録画された際の被告人の発言を引用をすることがあります・
検察官の反対尋問の実例
検察官
取調べは録音録画されていたことは覚えていますか。
被告人
はい。
検察官
被告人は、取調べのときには、警察官に 「かっとなって、腹部を刺した。」「やってやった。」と発言していませんか。
被告人
初日の取調べだったので、頭が混乱していたんです。
| 検察官が被告人の反対尋問の際に、取調べ時の録音録画された被告人の発言を引用してくることがあります しかし、これは、被告人の供述を録音録画して、これを裁判所にそのまま提出するのと同じになります。 |
弁護人
(1)異議があります。
(2)まず、会話の一部だけを取り上げて、質問することは誤解を招きます。
(3)次に、検察官の手法は、質問の形をとって、密室での取調べの内容を持ち込むことになります。
検察官の質問は、手続保障がされた公判において取調べを行うべきという、公判中心主義に反します。
裁判官
検察官、ご意見は?
検察官
弁護人の異議には理由がありません。
裁判官
異議を却下します。
検察官質問を続けて下さい。
| 裁判所の見解 質問したことが証拠となるのではなく、被告人の回答が証拠になります。したがって、検察官が過去の発言を引用して質問することは、禁止されていない、というのが裁判所の公式で見解となります。 裁判所としては、検察官の質問を供述の変遷についての質問と理解し、争点に対する判断にどのような影響を与えるか、質問の必要性を判断することになる。(判例タイムズ1546号57頁から59頁) |
検察官の質問が続く。
弁護人
(1)異議があります。
(2)検察官の質問ですが、会話の一部だけを取り上げて質問しており、その一言があったか、なかったということだけで、被告人の供述の信用性を判断することは不可能です。
(3)次に検察官の質問が、取り調べ状況を正確に反映させた質問であるかも、弁護人にはチェックできません。
(4)録音録画は長時間となり、どの部分がポイントとなるのか、を要点をしぼらなければチェックはできません。
裁判官
検察官、ご意見は?
検察官
検察官としては忠実に反映しており、誤導の形では質問していません。
仮に、誤導だとすれば、反対尋問で聞けばよいことです。
裁判官
検察官の質問は、供述の変遷についての質問と理解していますが、争点に対する判断にどのような影響を与えるか、ということを考えると、これ以上の質問の必要性を認めることはできません。
検察官
分かりました。質問を変えます。
| (1)反対尋問の際に、検察官が取調べ時の録音録画された際の被告人の発言を引用をすることは許されるか。 (2)例えば、供述の信用性が問題となった場合には、 取り調べ状況の録音録画そのものを取り調べることもあります。(判例タイムズ1545号44頁)。 裁判所としては、以下の理由をから、取り調べ状況の録音録画そのものの取り調べには慎重であるが、必要性次第だと考えている。 (3)反対尋問の際に、検察官が「取調べ時に、被告人は〇〇と発言してませんでしたか。」という質問(検察官が取調べ時の録音録画された際の被告人の発言を引用をすること)は、「供述の変遷についての質問である。」と理解し、争点に対する判断にどのような影響を与えるか、このような質問の必要性を判断している。(判例タイムズ1546号57頁から59頁) (4)したがって、裁判所としては、一定程度このような質問を認めることになる。 (5)もっとも、取り調べ状況の録音録画の取り調べには長時間の時間が必要となる。また、調書にもなっていない被告人の供述を質問の形で事実上、証拠として提出してしまうことになることも問題である。 (6)裁判官としては、一定程度の検察官の質問を許容することになる。 (7)弁護人から異議が出て、「検察官の質問が、取り調べ状況の録音録画を適切に反映した質問であるか」問題となることがが多い。これに対して、裁判官からは、その判断のためには、 取り調べ状況の録音録画の再生して確認することが必要だと思った場面を経験したことはない、との指摘がされている(判例タイムズ1546号59頁、60頁)。 |




