亡くなった方の預貯金口座を解約・払い戻す際、銀行などの金融機関から戸籍謄本や除籍謄本などの「戸籍の原本」の提出を求められます。しかし、これらの戸籍は他の金融機関での手続きや、法務局での相続登記、税務署での相続税申告など、あらゆる相続手続きで使い回す必要があります。
多くの金融機関を回る予定がある場合、戸籍の原本が手元に戻ってこないと、その都度発行手数料と時間がかかり大きな負担となります。今回は、金融機関に戸籍の原本をなかなか返してもらえない場合の対処法や、スムーズに原本を還付してもらうための方法、さらに手間を大幅に削減できる「法定相続情報証明制度」の活用法について分かりやすく解説します。
戸籍の原本還付とは何か?銀行窓口で拒否されないための知識
相続手続きを進める上で、戸籍謄本等は複数の窓口で必要となります。金融機関によっては、社内手続きの厳格さを理由に原本の回収に固執するケースもありますが、「法定相続情報証明制度」の普及や実務上の慣例として、原本還付請求は正当な権利です。
窓口で戸籍の原本還付をスムーズに受けるためには、以下のポイントを意識することが重要です。
- 手続きの書類を提出する際、窓口の担当者に「他の金融機関や法務局でもこの戸籍を使うため、原本を必ず返してほしい」と伝える。
- 金融機関所定の「原本還付申請書」がある場合はそれに記入する。
- コピーをあらかじめ用意し、「原本と相違ない」旨の証明を求められたら対応できるようにしておく。
金融機関が戸籍をなかなか返してくれない場合の理由と対策
預貯金の解約手続きを依頼したものの、「本部の審査中である」「社内規定の確認に時間がかかる」などの理由で、いつまで経っても戸籍の原本が返却されないトラブルが起こることがあります。
このような場合は、以下のステップで対応を促しましょう。
- 進捗状況の確認の連絡を入れる:窓口を担当した支店に対し、現在の進捗と戸籍の返却予定時期を問い合わせます。
- 返却期限を明確に尋ねる:「他の相続手続き(法務局での不動産の名義変更など)の期限が迫っているため、いつ頃返却可能か教えてほしい」と具体的な日程を確認します。
- 急ぎであることを強調する:2024年4月から相続登記が義務化され、法務局での手続きの期限(3年以内)も意識されているため、迅速な対応が必要である旨を伝えます。
なお、近年は不動産の所有者不明問題を解消するため、2026年4月からは住所変更登記の義務化や、法務局で保有する「所有不動産記録証明制度」のスタートなど、法制度が大きく変化しています。これらに伴い、正確な戸籍情報を迅速に揃えて各所に提出する重要性が一段と高まっています。
大量の戸籍を使い回すなら「法定相続情報証明制度」の活用がおすすめ
複数の金融機関や、法務局、税務署などでの手続きが同時並行で発生する場合、すべての窓口で戸籍の原本還付手続きを行うのは非常に大きなストレスになります。そこで強くおすすめしたいのが、法務局が発行する「法定相続情報一覧図の写し」の活用です。
この制度を利用するメリットは以下の通りです。
- 法務局で一度戸籍一式を提出して「法定相続情報一覧図」を作成してもらうと、その証明書(一覧図の写し)が無料で何枚でも交付されます。
- この一覧図の写しは、多くの金融機関において戸籍謄本の束の代わりとしてそのまま利用できるため、原本の還付待ちをする必要がなくなります。
- 複数の銀行や証券会社での口座解約手続きを、同時に並行して進めることが可能になります。
ただし、金融機関によっては一部独自の運用をしている場合や、依然として戸籍の原本確認を必須としている例外的なケースもあるため、事前に各金融機関の相続窓口へ「法定相続情報一覧図の写しで代用可能か」を確認しておくとより確実です。
スムーズな相続手続きのために専門家のサポートも検討を
金融機関とのやり取りや、膨大な戸籍の収集・還付手続きは、日々の仕事や家事と並行して行うには大変な労力を伴います。もし、仕事が忙しくて銀行の窓口に行く時間が取れない、あるいは複数の金融機関や不動産の相続手続きが複雑で自分一人では手に負えないと感じた場合は、司法行政書士などの専門家に代行を依頼することも有効な選択肢です。
専門家に依頼することで、戸籍の収集から法定相続情報一覧図の作成、金融機関の還付・解約手続き、さらには2024年に義務化された相続登記まで、一括してスムーズに完了させることができます。時間と精神的な負担を軽減するためにも、無理をせず専門家の力を借りることを視野に入れてみてください。
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