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国庫に帰属した後に「近隣からの倒木や不法投棄クレーム」が発生した場合の責任

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

相続したものの使い道のない土地を手放すため、国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」の利用を検討している方も多いのではないでしょうか。土地を手放せるだけでなく、その後の管理負担から解放される点が大きなメリットですが、気になるのは「国庫に帰属した後にトラブルが発生したらどうなるのか」という点です。

例えば、放置された庭木が近隣の家屋を傷つけたり、土地が不法投棄のターゲットにされたりした場合、元の所有者が責任を問われることはないかという不安は尽きません。

結論からお伝えすると、国庫に帰属した土地でそのような問題が発生した場合でも、元の所有者に管理瑕疵責任や損害賠償義務が及ぶことは原則ありません。本記事では、国庫帰属後の法的責任の所在について詳しく解説します。

相続土地国庫帰属後に近隣トラブルが発生した際の責任は?

Q 国庫に帰属した土地で倒木や不法投棄が起きた場合、元の所有者が責任を問われますか?
A いいえ、問われません。土地が国庫に帰属した時点ですべての所有権および管理責任は国に移転するため、その後に発生した倒木や不法投棄などのトラブルについて、元の所有者が損害賠償義務を負うことは原則としてありません。

相続した不動産の管理に長年悩まされてきた方にとって、「国が管理責任を引き継ぐ」という点は最大の安心材料と言えます。

従来は、不要な土地であっても所有し続けるか、あるいは固定資産税を払いながら管理を続けるしかありませんでした。しかし、制度を利用して国庫に帰属が完了すれば、所有権を手放すのと同時に、法的責任からも完全に解放されます。

国庫帰属完了後は国がすべての管理を担う

土地の所有権が国に移転(国庫帰属)すると、民法上の所有者としての管理義務も当然に国(財務省および各財務局など)へと移行します。

したがって、国庫帰属の承認を受けた後に以下のような事態が起きても、それは国の管理下で発生したトラブルとみなされます。

  • 強風などで敷地内の木が倒れ、隣家の塀を壊した
  • 管理が行き届いていないとみなされ、ゴミの不法投棄場所に使われた
  • 雑草が繁茂し、害虫が発生して近隣から苦情が寄せられた

これらに対する対応や、万が一の損害賠償責任は国が負うことになりますので、元の所有者が個別に連絡を受けて金銭的な賠償を求められる心配はありません。

なぜ元の所有者に責任が及ばないのか

法律上、不動産の管理責任(工作物責任など)は、その時点における「占有者」または「所有者」が負うこととされています。

国庫帰属のプロセスを完了し、登記簿上の名義が国に移った瞬間から、その土地の所有者は「国」です。そのため、将来的にどのような災害や近隣トラブルが発生したとしても、その時点の所有者である国が責任主体となります。

国に引き渡す時点までの「事前準備」には注意が必要

ただし、ここで注意しなければならないのは、「国庫に帰属するまでの間」に発生したトラブルや、申請時の虚偽申告等についてです。

国庫帰属制度を利用するためには、法務大臣(法務局)の審査や承認が必要であり、引き渡し時には一定の要件を満たしている必要があります。

  • 建物が建っていないこと(解体が必要)
  • 土壌汚染や埋設物がないこと
  • 境界が明確であり、他の土地との間に争訟がないこと

もし、これらの要件を満たすために適切な管理を怠った結果として、申請段階や審査期間中にトラブルが起きた場合、それはまだ「元の所有者の管理下」にあった期間の出来事として責任を問われる可能性があります。

また、故意に重大な瑕疵(有害物質の埋設など)を隠して国庫帰属させたことが後から判明した場合には、承認の取消しや損害賠償請求に発展するリスクもゼロではありません。

2024年以降の法改正と不動産管理の重要性

近年の法改正により、所有者不明土地問題の解消に向けたさまざまな制度が整備されています。

  • 2024年4月:相続登記の申請が義務化(正当な理由なく放置すると過料の対象)
  • 2026年4月:住所変更登記の申請も義務化
  • 所有者不明土地に関する法整備や新・所有者記録証明制度の導入

このように、国は土地の所有者を明確にし、適正な管理を促す方針を強めています。放置された不動産は、そのままにしておくだけで固定資産税の負担だけでなく、将来的な行政からの指導や周囲への損害リスクを高める原因になります。

こうした背景から、どうしても活用予定のない土地については、放置してリスクを抱え続けるよりも、相続土地国庫帰属制度を正しく利用して国に引き取ってもらう選択肢が非常に有効です。

まとめ:正しく国庫帰属を終えれば、将来の不安から完全に解放される

相続した土地の管理に悩む方にとって、近隣からの倒木や不法投棄のクレームは大きな精神的プレッシャーです。

しかし、相続土地国庫帰属制度を利用して適法に手続きを完了させ、国庫への帰属が済んでしまえば、その後に発生するトラブルの責任はすべて国が負うことになります。元の所有者に管理瑕疵責任が及ぶことは原則ありませんので、安心して手続を進めることができます。

とはいえ、申請前の準備段階や書類の不備、境界の確定など、個人で判断するには複雑なプロセスも少なくありません。確実にトラブルのない形で土地を手放すために、相続や不動産法務に詳しい専門家に一度相談してみることをおすすめします。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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