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遺言で「すべて寄付」と書かれていた!
家族を路頭に迷わせないための遺留分請求

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

亡くなった親や配偶者が遺言書で「全財産をNPO法人や特定の団体に寄付する」と遺言を残していた場合、残された家族は大きなショックを受けるとともに、生活の基盤を揺るがされる事態になりかねません。

しかし、日本の民法では、残された家族の生活を守るために遺留分(いりゅうぶん)という最低限の取り分が保障されています。たとえ遺言書に「すべて寄付する」と書かれていても、泣き寝入りする必要はありません。本記事では、寄付先に対して直接金銭請求を行う方法や注意点を分かりやすく解説します。

遺言書で「すべて寄付」と書かれていた場合、どうすればよいか?

Q 遺言で全財産をNPO法人へ寄付すると書かれていましたが、家族は一銭ももらえないのですか?
A 全額を失うわけではありません。配偶者や子、親などの法定相続人には「遺留分」という最低限の遺産取得分が法律で認められているため、寄付先に対して「遺留分侵害額請求」を行うことで金銭を取り戻すことができます。

遺言書は故人の最後の意思表示として尊重されますが、残された家族の生活保障という観点から、その自由には一定の制限が設けられています。それが遺留分の制度です。

もし「すべて寄付する」という遺言が見つかった場合でも、相続人は受遺者(財産を受け取るNPO法人などの団体)に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを求めることができます。これを遺留分侵害額請求と呼びます。

遺留分が認められる相続人とその割合

すべての相続人に遺留分があるわけではありません。遺留分が認められるのは、配偶者、子(およびその代襲相続人)、直系尊属(親や祖父母)です。

兄弟姉妹およびその甥姪には、遺留分は一切認められません。そのため、兄弟姉妹以外の相続人がいない状況で「すべて寄付する」という遺言があった場合は、原則としてその通りの寄付が実行されてしまいます。

一般的な遺留分の割合は以下のとおりです。

  • 直系尊属のみが相続人の場合:遺産の3分の1
  • その他の場合(配偶者や子がいる場合):遺産の2分の1

なお、具体的な遺留分額は、法定相続人の人数や構成によって複雑に変動するため注意が必要です。

NPO法人等の寄付先へ「遺留分侵害額請求」を行う方法

遺留分侵害額請求を行うにあたっては、相手が個人ではなくNPO法人などの団体や組織である点が特徴です。感情的な対立を避け、冷静かつ法的に正しい手続きを進めることが求められます。

1. 相続財産の全容と遺留分額の調査

まずは、故人が遺したプラスの財産(不動産、預貯金など)だけでなく、マイナスの財産(借金など)も含めた正確な総額を把握しなければなりません。その上で、ご自身の正確な遺留分侵害額(請求できる金銭の金額)を計算します。

不動産が含まれている場合は、固定資産評価額や実際の市場価格(査定額)を基準に評価を算定する必要があります。

2. 寄付先(NPO法人等)への意思表示

遺留分を請求する権利は、口頭で伝えるだけでは法的な効力に不安が残ります。通常は、受遺者であるNPO法人等の代表者宛てに、内容証明郵便(配達証明付き)を送付して請求の意思表示を行います。

内容証明郵便を用いることで、「いつ、どのような内容の請求を行ったか」を法的な証拠として残すことが可能です。

3. 話し合い(示談交渉)と金銭の支払い

内容証明郵便が届いた後、NPO法人の担当者や代理人弁護士と具体的な解決に向けた話し合いを行います。

遺留分侵害額請求権は、基本的には金銭で支払うことを求める権利です。そのため、NPO法人が保有する現金から支払われるのが一般的ですが、不動産が寄付されているようなケースでは、不動産を売却した代金から精算するなどの協議が行われることもあります。

合意に至った場合は、後々のトラブルを防ぐために必ず合意書(示談書・公正証書)を作成します。

家族を路頭に迷わせないために知っておくべき重要事項

遺言による寄付問題に直面した際、時間的制限や法的手続きにおいて見落としがちなポイントがあります。

請求には厳格な「時効(消滅時効・除斥期間)」がある

遺留分侵害額請求権には、行使できる期間に厳しい制限が設けられています。

  • 相続の開始および遺留分を侵害する遺言があったことを知った日から1年間
  • 相続開始のときから10年経過したとき

この期間を1日でも過ぎてしまうと、時効によって権利が消滅してしまい、二度と請求できなくなります。遺言書の存在や「全額寄付」という内容を知った場合は、速やかに動き出すことが肝心です。

寄付先との交渉が難航する場合の対応

相手が組織(NPO法人など)である場合、法的な手続きや規約を盾に交渉がスムーズに進まないケースも散見されます。また、遺言執行者が選任されている場合は、その執行者との協議が必要になることもあります。

話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所への遺留分侵害額請求調停を申し立てることになります。調停でもまとまらない場合は、訴訟(裁判)へと移行します。

個人間での感情的な衝突を避け、法的な根拠に基づいて適正な金額を取り戻すためには、相続問題に強い弁護士などの専門家に早い段階で相談し、代理交渉を依頼することを強くおすすめします。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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