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親が「要介護認定」を受ける前に家族信託・任意後見を結ぶべきタイミング

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

親の判断能力が低下する前に!家族信託と任意後見を検討すべきタイミング

Q 親が要介護認定を受ける前や、軽度の段階で家族信託や任意後見を検討すべき理由は?
A 認知症などで判断能力が低下すると、契約行為が法的に無効となる恐れがあるためです。判断能力が確かなうちに契約を結ぶことで、将来の財産管理や介護・施設入居の手続きをスムーズに行うことが可能になります。

親の老いを感じたとき、多くのご家族が真っ先に頭に浮かべるのは「介護サービスの手配」や「施設入居」といった生活面のことかもしれません。しかし、法律の専門家として強くお伝えしたいのは、「判断能力がしっかりしているうちに、財産管理の仕組みを整えておくこと」の重要性です。

認知症の症状が進み、法的な契約行為が困難になってからでは、利用できる制度が大幅に制限されてしまいます。本記事では、要介護認定を受ける前、あるいは要支援・要介護1といった軽度の段階で取り組むべき「家族信託」と「任意後見」の重要性について解説します。

なぜ「判断能力があるうち」が絶対条件なのか

法律上の契約(信託契約や任意後見契約)を結ぶには、契約の内容を理解し、自分の意思で署名・押印できる「意思能力」が必要です。認知症の進行により、この判断能力が失われてしまうと、以下のような事態に陥ります。

  • 不動産の売却や管理ができない(認知症になると、親名義の不動産は原則として凍結されます)
  • 預貯金の引き出しや運用ができない(銀行は口座名義人の判断能力低下を確認すると、不正防止のために口座を凍結します)
  • 相続税対策などの資産承継プランが実行できない

これらは「親が元気なうちに」対策を講じていれば防げた可能性が高い問題です。特に、2024年4月から始まった「相続登記の義務化」や、2026年4月から予定されている「住所変更登記の義務化」など、不動産管理の重要性は年々高まっています。判断能力を喪失した後にこれらの義務を果たすには、非常に複雑な手続きが必要となり、家族の負担は計り知れません。

家族信託:財産管理の柔軟な仕組み

家族信託とは、信頼できる家族(受託者)に財産の管理・処分権を託し、特定の目的のために運用してもらう制度です。

家族信託のメリット

家族信託の最大の強みは、その「柔軟性」にあります。後見制度と異なり、一度契約を結べば、受託者は親の認知症が進行しても、あらかじめ決めた目的(親の介護費用の捻出や施設入居費用の支払いのための不動産売却など)に従って、柔軟に財産を動かすことができます。

特に、親の所有する不動産が将来的に「空き家」になるリスクがある場合、家族信託を活用して管理や売却の権限を子に委ねておけば、相続登記の義務化に対応しつつ、スムーズな資産承継が可能になります。

任意後見制度:身上保護までカバーする安心感

任意後見制度は、将来判断能力が不十分になったときに備えて、あらかじめ「誰に、どのようなサポートを頼むか」を公正証書で契約しておく制度です。

任意後見でできること

家族信託が主に「財産管理」に特化しているのに対し、任意後見は「身上監護(しんじょうかんご)」をカバーできる点が特徴です。

  • 介護サービス契約の締結
  • 医療機関への入院手続き
  • 施設への入居契約

このように、生活に関わる契約行為全般を、親の代わりに後見人が行うことができます。家族信託と任意後見を組み合わせて活用することで、「財産管理は家族信託で効率的に、日々の生活の手続きは任意後見で法的に」という万全の体制を築くことが可能です。

要支援・要介護1の段階で動くべき理由

「まだ大丈夫だろう」という油断が、将来の大きなリスクに繋がります。要介護認定を受ける前、あるいは要支援・要介護1といった「認知機能の低下が軽微な段階」こそが、最も重要なタイミングです。

専門家が推奨する対策のステップ

  1. 家族会議の開催: 親の財産状況や、将来どのような生活を送りたいかという意向を共有する。
  2. 専門家への相談: 司法書士や弁護士などの専門家に、家族信託と任意後見のどちらが適しているか、あるいは併用すべきかを相談する。
  3. 契約の締結: 公正証書を作成し、契約を法的に確定させる。

特に、2023年より施行された「所有不動産記録証明制度」を活用すれば、親が所有している不動産を効率的に把握できるため、対策の準備がしやすくなりました。

まとめ:今すぐできる「親孝行」としての準備

家族信託や任意後見の契約は、単なる事務手続きではありません。それは、親の尊厳を守り、家族の絆を未来へ繋ぐための「法的サポート」です。

親が要介護認定を受ける前、あるいは軽度の段階であれば、まだ親自身の意思を尊重した契約を結ぶことができます。認知症が進行してからでは「法定後見制度」を利用せざるを得ず、家庭裁判所の監督下に置かれるため、家族が自由に財産を管理することは難しくなります。

「まだ元気だから大丈夫」ではなく、「元気なうちにこそ準備が必要」です。将来のトラブルを未然に防ぎ、親が安心して老後を過ごせる環境を整えるために、まずは専門家の無料相談などを活用し、家族の未来について話し合うことから始めてみてください。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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