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遺産分割協議で決まった「代償金(例:1000万円)」を兄弟が支払わない時

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

遺産分割協議で決まった代償金が支払われないときの解決策

Q 遺産分割協議で決まった代償金(1000万円など)を兄弟が支払ってくれません。どうすれば回収できますか?
A まずは督促を行い、応じない場合は家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てや履行勧告を求めます。また、強制執行(差し押さえ)を行うことで、相手の給与や預金、相続不動産から回収することが可能です。

遺産分割協議において、特定の相続人が不動産をすべて相続する代わりに、他の相続人に対して金銭を支払う方法を代償分割と呼びます。例えば「長男が実家を相続し、次男に代償金として1000万円を支払う」というような取り決めです。

しかし、協議書に署名・捺印したにもかかわらず、約束の期日を過ぎても兄弟が代償金を支払わないトラブルが後を絶ちません。「お金がない」「そのうち払う」と言われて放置していると、時効によって請求できなくなるリスクもあります。

本記事では、遺産分割協議で決まった代償金が支払われない場合の法的な対処法と、強制執行による財産の差し押さえ手順について分かりやすく解説します。

代償金が支払われない場合の初期対応

約束された代償金が支払われない場合、感情的になって連絡を絶つのではなく、冷静に法的根拠に基づいたステップを踏むことが重要です。

内容証明郵便による催告

まずは、相手に対して代償金の支払いを強く促すため、内容証明郵便を送付します。口頭での催告では「言った・言わない」の水掛け論になるのを防ぐためです。

内容証明郵便には、以下の内容を明確に記載します。

  • 遺産分割協議書に基づき支払うべき金額(例:代償金1000万円)
  • 支払期限
  • 指定期日までに支払われない場合、法的手続(法的措置)に移行する旨

内容証明自体には強制力はありませんが、「将来の裁判を見据えた証拠作り」「相手への心理的プレッシャー」という大きな効果があります。

家庭裁判所による履行勧告・履行命令

遺産分割協議が「裁判所の調停や審判」で成立していた場合、あるいは「調停調書」や「審判書」を作成している場合は、家庭裁判所に履行勧告履行命令を申し立てることができます。

履行勧告は、裁判所から相手に対して「約束通り代償金を支払いなさい」と促してもらう手続きです。費用はかかりませんが、相手に強制力を及ぼすものではありません。これに対し、正当な理由なく従わない場合の履行命令には、過料(金銭罰)の制裁が科される可能性があります。

※なお、話し合いのみで作成した「遺産分割協議書」の場合は、この履行勧告の手続きを利用することはできません。

強制執行(差し押さえ)による回収手順

内容証明を送っても相手が支払いに応じない場合、最終的には裁判所を介した強制執行(差し押さえ)を行うことになります。ただし、強制執行を行うには、法的にお墨付きのある「債務名義」が必要です。

強制執行に必要な「債務名義」とは

ただの「遺産分割協議書(私文書)」だけでは、直ちに強制執行を行うことはできません。協議書に基づいて差し押さえをするためには、以下のいずれかの手続きを踏む必要があります。

  • 公証役場で作成する執行認諾文言付公正証書
  • 家庭裁判所での調停調書または審判書
  • 訴訟上の和解調書、または勝訴判決

もし最初の遺産分割協議書を普通の書面で交わしてしまっている場合は、裁判所に代償金請求の訴訟を提起するか、支払督促の申し立てを行って債務名義を取得する必要があります。

差し押さえの対象となる財産

債務名義を取得した後は、相手の財産を特定して裁判所に強制執行の申し立てを行います。主な差し押さえ対象は以下の通りです。

  • 給与・退職金:相手の勤務先を特定している場合、毎月の給与の一部を差し押さえて直接回収することができます(一定の上限あり)。
  • 銀行預金:相手が口座を持っている金融機関(支店名まで)が分かれば、預貯金を一括で差し押さえることが可能です。
  • 相続不動産:代償金の代わりに相手が単独で相続した不動産(実家など)がある場合、その不動産を差し押さえて競売にかけ、売却代金から回収することができます。

特に2024年以降の相続登記の義務化や、不動産に関する法整備が進む中、相続した不動産の登記状況や権利関係は明確になりつつあります。不動産の差し押さえは非常に強力なプレッシャーとなります。

代償金未払いを防ぐ・解決するための注意点

代償金の未払いトラブルを防ぐためには、遺産分割協議の段階から対策を講じておくことが極めて重要です。

公正証書の作成が最も有効

今後、遺産分割協議を行う場合、あるいは現在まさに協議中である場合は、必ず「強制執行認諾文言付き公正証書」として協議内容を残すことを強くおすすめします。

公正証書を作成しておけば、万が一相手が代償金を支払わなかった際、裁判を起こす手間と時間を省き、直ちに給与や預金の差し押さえ手続きに移ることができます。

専門家への相談の重要性

「相手が連絡を無視する」「不動産の名義だけ変えてお金を払ってくれない」といった状況に陥った場合、個人で相手と交渉し続けるのは精神的にも大きな負担となります。

弁護士などの専門家に依頼することで、正確な財産調査(給与や預金口座の特定)や、法的手続きの迅速な実行が可能になります。代償金の未払いでお悩みの方は、泣き寝入りする前に、早めに法律事務所へご相談ください。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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