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被相続人に「内縁の妻(事実婚)」がいる場合:内縁配偶者への特別分与

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、遺産分割・遺留分侵害額請求・相続放棄・不動産登記義務化等の相続実務経験に基づき、最新の民法および裁判所実務に沿ってわかりやすく解説しています。

被相続人に内縁の妻がいる場合の相続問題

Q 内縁の妻(事実婚)には法律上の相続権がありますか?遺産を受け継ぐ方法はあるのでしょうか?
A 【結論】法律上の婚姻関係がないため、内縁の妻に原則として相続権はありません。被相続人が遺言書を残さず亡くなった場合、長年連れ添ったパートナーであっても法定相続人にはなれず、財産を受け継ぐことができないため注意が必要です。
【対策とポイント】確実に財産を残すためには、被相続人が生前に「遺言書」を作成して自宅等を遺贈する形をとるのが最も有効です。また、相続人が誰もいない場合には、家庭裁判所に「特別縁故者」としての財産分与を申し立てる方法があります。法的な手続きや遺言書の不備を防ぐためにも、相続問題に精通した弁護士への早期の相談をおすすめします。

長年連れ添ったパートナーであっても、籍を入れていない「内縁関係(事実婚)」の場合、法律上の婚姻関係とは異なる扱いを受けます。特に、被相続人が亡くなった際の相続において、大きな法的壁に直面することが少なくありません。

日本の民法上、遺産を受け継ぐことができる「法定相続人」は、配偶者と血族(子、直系尊属、兄弟姉妹)に限定されています。そのため、内縁の妻には原則として相続権が認められていないのです。

例えば、被相続人が遺言書を残さずに亡くなった場合、長年生活を共にしていても、すべての財産は法律上の相続人(子供や親、兄弟姉妹など)に引き継がれ、内縁の妻は自宅から立ち退きを迫られるリスクすらあります。

このように、法的な保護が十分に受けられない内縁の妻が財産を取得するためには、生前の対策や死後の法的手続きを正しく理解しておく必要があります。

生前対策の切り札:遺言書による自宅遺贈

内縁の妻に確実に財産を残すための最も確実で有効な手段は、被相続人が生前に遺言書を作成しておくことです。

法律上の配偶者には「遺留分(相続人が最低限受け取れる権利)」が認められていますが、内縁の妻には遺留分がない反面、法定相続人以外の第三者として遺産を「遺贈」してもらうことができます。

遺言書による遺贈のメリットと注意点

遺言書によって自宅や預貯金などを内縁の妻に遺す場合、以下のポイントに留意する必要があります。

  • 遺言書の形式(自筆証書遺言または公正証書遺言)を法律の定めに従い正確に作成する
  • 法定相続人から「遺留分侵害額請求」が行われる可能性があるため、全体の財産バランスを考慮する
  • 不動産を遺贈する場合、相続登記と同様に名義変更の手続きが必要となる

特に注意すべきなのは、被相続人に子供などの法定相続人がいる場合です。法定相続人には遺留分があるため、全財産を内縁の妻に遺す内容の遺言書であっても、相続人から遺留分相当額の金銭請求を受けるトラブルに発展するケースがあります。

このような事態を防ぐためには、専門家のサポートを受けながら、遺留分に配慮した遺言書を作成することが不可欠です。

相続人がいない場合の「特別縁故者」としての申立て

被相続人に子供や親、兄弟姉妹といった法定相続人が一人もいない場合、遺産の行方はどうなるのでしょうか。このようなケースでは、最終的に国庫に帰属することになりますが、内縁の妻は「特別縁故者」として財産分与を請求する道が開かれています。

民法では、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者は、家庭裁判所に申し立てることによって、清算後の残余財産の全部または一部の分与を受けることができると定めています。

特別縁故者として認められるための要件と手続き

特別縁故者として財産分与を受けるためには、いくつかの厳しいハードルをクリアしなければなりません。

  • 被相続人に法定相続人が一切存在しないこと
  • 相続人捜査の公告期間(通常6ヶ月以上)が満了していること
  • 被相続人と事実上の夫婦同然の生活を送っていた客観的な実績があること
  • 家庭裁判所に対して「特別縁故者に対する相続財産分与の申立て」を行うこと

申立てにあたっては、長年同居していた事実を証明する住民票の除票や、家計を共にしていたことを示す証拠書類などを収集・提出する必要があります。裁判所が「特別の縁故」があると認めた場合に初めて、遺産の分与を受けることが可能になります。

最新の法改正と不動産手続きに関する注意点

相続や不動産登記に関する法制度は近年大きな転換期を迎えており、内縁関係における財産問題にも少なからず影響を与えます。

2024年4月からは相続登記が義務化されており、遺言書によって不動産を取得した場合でも、正当な理由なく登記を放置すると過料の対象となるため注意が必要です。さらに、2026年4月には住所変更登記の義務化も予定されており、不動産の権利関係を迅速にクリアにしておく重要性が増しています。

内縁の妻が自宅の遺贈を受けた場合、速やかに名義変更を行わなければ、その後の売却や活用時に法的なトラブルが生じるおそれがあります。

また、2024年には「所有者不明土地・建物管理制度」や「遺産分割の期間制限(原則として相続開始から10年)」などの新しいルールも導入されています。相続人がいない場合の特別縁故者の申立てにおいても、これらの法改正を踏まえたスケジュール管理が求められます。

内縁関係における相続や財産分与の問題は、法的な要件が複雑であり、個別の事情によって最適なアプローチが異なります。ご自身やパートナーの生活基盤を守るためにも、早い段階で法律事務所などの専門家に相談し、万全の対策を講じることを強くおすすめします。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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