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暗号資産(ビットコイン・イーサリアム等)の相続:取引所への開示請求と評価

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、遺産分割・遺留分侵害額請求・相続放棄・不動産登記義務化等の相続実務経験に基づき、最新の民法および裁判所実務に沿ってわかりやすく解説しています。

暗号資産の相続手続きにおける基礎知識

Q 亡くなった人が持っていたビットコインなどの暗号資産はどのように調査・評価して相続すればよいですか?
A 【調査と評価のルール】暗号資産も預貯金や不動産と同様に遺産分割および相続税申告の対象となります。まずは被相続人のスマホやメール履歴から利用していた国内外の取引所を特定し、戸籍謄本等の必要書類を揃えて取引所へ口座凍結と残高証明書の開示請求を行います。評価額は「被相続人が死亡した日の最終価格(時価)」を基準に算出します。
【注意点と対策】ウォレットのパスワードや秘密鍵が不明な場合でも、取引所口座であれば正規の相続手続きを経て払い出しが可能です。ただし、個人管理のハードウェアウォレット等で鍵を紛失した場合は資産にアクセスできなくなるリスクがあるため、自己判断せず暗号資産の相続に精通した弁護士などの専門家に早期に相談することをおすすめします。

近年、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産(仮想通貨)を保有する方が増えています。被相続人(亡くなった方)が暗号資産を生前に保有していた場合、これらも立派な相続財産となり、相続手続きを行う必要があります。

しかし、暗号資産は銀行預金とは異なり、通帳やキャッシュカードといった目に見える形がありません。そのため、「どこに口座があるのかわからない」「パスワードが不明でログインできない」といったトラブルが非常に起こりやすい財産です。

ここでは、国内外の取引所への照会方法、死亡日を基準とした正確な評価方法、そしてウォレットキーを失念してしまった場合の対策について、専門的な視点からわかりやすく解説します。

取引所への開示請求と口座の特定

生前に被相続人がどの暗号資産取引所を利用していたのかが不明な場合、まずは相続財産の調査を行う必要があります。

国内取引所への照会手順

国内の主要な暗号資産取引所(コインチェックやビットフライヤーなど)が判明している場合、相続人から取引所に対して口座凍結の依頼と残高証明書の発行請求を行います。

具体的な手続きの流れは以下の通りです。

  • 被相続人の戸籍謄本や除籍謄本など、相続人であることを証明する書類を収集する
  • 各取引所所定の相続手続きに関する請求書や申請書を取り寄せる
  • 必要書類一式を取引所に郵送または提出し、口座の特定と残高の開示を求める

取引所側で相続人であることが確認されると、被相続人のアカウントは凍結され、死亡日時点の残高が記載された報告書や残高証明書が発行されます。

海外取引所やP2P取引への対応

もし被相続人が海外の取引所や、運営実態が不明確な海外のサービスを利用していた場合、手続きは一段と複雑になります。

海外取引所では、英語や現地の言葉でのやり取りが必須となるほか、日本国内の法制度がそのまま通用しないケースも少なくありません。また、個人間で直接売買を行うP2P取引や分散型取引所(DEX)を利用していた場合、取引所のサポート窓口が存在せず、相続人が自力でブロックチェーン上の履歴を解析する必要が生じることもあります。

死亡日の市場価格による適正な評価

暗号資産は株式や不動産と同様に、相続税の課税対象となります。このとき最も重要なのが、死亡日における市場価格(時価)での評価です。

評価額算出のルール

国税庁の指針によると、暗号資産の評価額は「課税時期(被相続人の死亡日)において取引されている価額」とされています。

主な評価のポイントは以下の通りです。

  • 被相続人が利用していた国内・海外の取引所における、死亡日終値(または死亡日の最終価格)を基準にする
  • 複数の取引所で価格が異なる場合は、原則として最も信頼性や流動性の高い取引所の価格を採用する
  • 日本円に換算する際は、死亡日当日の為替レートを用いる

暗号資産は価格変動(ボラティリティ)が非常に激しい資産です。死亡日の特定と、その日の正確なレートを証明するスクリーンショットや取引履歴の保存が、のちの相続税申告において不可欠となります。

ウォレットキー失念時・アクセス不可時の対策

暗号資産の相続において最も厄介な問題が、プライベートキー(秘密鍵)やパスワードの失念です。

ハードウェアウォレットとペーパーウォレットの罠

被相続人が取引所ではなく、ハードウェアウォレット(LedgerやTrezorなど)やペーパーウォレットで自己管理していた場合、銀行のような中央管理者が存在しません。

したがって、以下のような事態が起きると、事実上、暗号資産を永久に取り出せなくなる(消失する)リスクがあります。

  • ログインパスワードやPINコードを誰も知らない
  • 復元フレーズ(シードフレーズ)のメモが見つからない
  • ウォレット端末そのものが破損している、または暗証番号を連続で間違えて初期化された

万が一アクセスできない場合の対処法

もし秘密鍵やパスワードがどうしても見つからない場合、無理にハッキングを試みるのではなく、専門家を交えた法的なアプローチや、デジタル遺品を専門とする調査会社への依頼を検討すべきです。

ただし、ブロックチェーンの暗号強度は極めて高いため、パスワードを完全に忘れてしまった場合、復元は不可能であることがほとんどです。そのため、生前の対策として、エンディングノートなどに「デジタル資産の保管場所とアクセス方法」を記しておくことが、残された家族を救う最大の生前対策となります。

暗号資産の相続は、法務・税務・ITの知識が複合的に求められる難しい分野です。自己判断で進めず、相続に強い弁護士や税理士などの専門家へ早めに相談することをおすすめします。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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