相続が発生した際、故人が遺した遺言書の内容に戸惑うことは少なくありません。特に、何度も書き直された形跡がある場合、どの遺言書が優先されるのか疑問に思う方も多いでしょう。
遺言書は何回でも書き直せる?複数の遺言書がある場合の優先ルール
故人の最終的な意思を確実に実現するため、遺言書の撤回や書き直しの法律上のルールを正しく理解しておくことが重要です。
遺言書の書き直しは何回でも可能
民法上、遺言者が自分の意思で遺言の内容を撤回・変更することに制限はありません。そのため、遺言書の書き直しは何回行っても法律上有効です。
人生の節目や財産状況の変化、家族関係の変動などに応じて、遺言者はいつでも過去の遺言を撤回し、新たな遺言を作成することができます。「一度書いたからもう変更できないのではないか」と心配する必要はありません。
撤回の方法は大きく分けて3つ
民法では、遺言の撤回方法についていくつかの規定を設けています。主に以下の方法によって撤回や書き直しが行われます。
- 新たな遺言書の作成(前回の遺言と矛盾する内容を記載する)
- 前の遺言書や遺言に記載された財産を故意に破棄する
- 生前処分の矛盾(遺言で特定の不動産を相続させると定めた後、自分でその不動産を第三者に売却してしまった場合など)
このように、わざわざ撤回用の書類を作らなくても、新しい遺言書を作成すること自体が、古い遺言書の撤回を意味するケースが一般的です。
複数の遺言書が見つかった場合の優先ルール
自宅から古い日付のものと新しい日付のものなど、複数の遺言書が発見された場合は、どのように扱われるのでしょうか。基本的なルールは「新しいものが勝つ」という原則です。
基本原則:日付が新しいものが優先される
民法では、前後する遺言の内容が矛盾する場合、後の遺言が前の遺言を撤回したものとみなすと定めています。
したがって、基本的には一番新しく作成された日付の遺言書が最優先され、古い遺言書のうち新しいものと矛盾する部分は効力を失います。
内容が一部だけ抵触する場合の解釈
複数の遺言書がある場合、すべての内容が完全に矛盾しているとは限りません。例えば、以下のようなケースです。
- 1通目の遺言書:「自宅の土地建物を長男に相続させる」
- 2通目の遺言書:「預貯金を次男に相続させる」(自宅については触れていない)
この場合、2通の遺言書に矛盾や抵触する部分がないため、両方の遺言書が有効として扱われます。長男は自宅を相続し、次男は預貯金を相続することになります。
一方で、1通目で「自宅を長男に」と書き、2通目で「自宅を次男に」と書いた場合は明らかに矛盾するため、日付の新しい2通目の内容が優先され、1通目の自宅に関する指定は撤回されたものとみなされます。
遺言書の破棄による撤回とそのリスク
遺言書を書き直すのではなく、単に「破棄」することでも撤回が可能です。自筆証書遺言の場合、遺言書をビリビリに破いたり、シュレッダーにかけたり、燃やしたりすることで、撤回したとみなされます。
ただし、遺言書の破棄による撤回には実務上大きなリスクが伴います。
- 一部のページや一部の財産だけを破棄した場合の法的解釈が複雑になる
- 相続人の誰かが都合の悪い遺言書を隠すために破棄したと疑われ、遺産分割トラブルに発展する
- 遺言書を破棄したつもりが法律上の要件を満たさず、古い内容がそのまま生き残ってしまう
安全かつ確実にご自身の意思を遺すためには、安易な破棄による撤回ではなく、専門家のサポートを受けながら正しい方式で新しい遺言書を作成することを強くおすすめします。
まとめ
遺言書の書き直し回数に制限はなく、何度でも行うことができます。複数の遺言書が見つかった場合は、原則として日付が最も新しいものが優先され、矛盾する古い内容は撤回されたものと扱われます。
ただし、部分的な矛盾の解釈や、形式の不備による無効リスクなど、相続人同士の紛争の種になりやすいポイントも多く存在します。トラブルを防ぎ、確実に自身の意思を形にするためにも、遺言書の作成や書き直しを検討する際は、相続に強い弁護士などの専門家に相談すると安心です。
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