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遺言無効訴訟の判決確定前に相手が「遺産を使い切る」のを防ぐ仮処分

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

遺言無効確認訴訟を起こしたものの、裁判の決着がつく前に相手(別の相続人など)が勝手に預金を引き出したり、不動産を売却してしまったりするのではないかと不安に感じている方は少なくありません。

裁判には長い時間がかかるため、判決が確定する前に遺産を散逸させられてしまうリスクは十分に存在します。このような事態を防ぐために活用できるのが、裁判所に申し立てを行う「仮処分」という法的な保全手続きです。

この記事では、遺言無効訴訟の判決が確定する前に相手が遺産を使い切るのを防ぐための「仮処分」の仕組みと手続きについて、わかりやすく解説します。

遺言無効訴訟の係属中に起きる財産の散逸リスクとは?

Q 遺言無効訴訟の最中に相手が遺産を使い切るのを防ぐにはどうすればよいですか?
A 地方裁判所に対して「不動産処分禁止の仮処分」や「預金払戻禁止の仮処分」という緊急の保全処分を申し立てることで、相手による遺産の処分や引き出しを法的に阻止することができます。

遺言無効確認訴訟は、その遺言書が有効か無効かを争う重要な裁判ですが、判決が出るまでには数ヶ月から場合によっては数年以上かかることも珍しくありません。

この裁判の最中であっても、形式的に名義変更を済ませてしまった相続人は、自身の単独名義として財産を処分できる状態にあるケースがあります。訴訟に勝ったとしても、肝心の財産がすでに使われてしまっていては、意味のない勝訴に終わりかねません。

このようなリスクを回避するためには、本訴(遺言無効訴訟)の判決が出る前に、相手の手足を縛る緊急の措置をとる必要があります。これが民事保全法に基づく「仮処分」の申し立てです。

不動産の売却を防ぐ「不動産処分禁止の仮処分」

故人が遺した自宅や土地などの不動産について、相手が勝第三者に売却してしまうのを防ぐために行うのが「不動産処分禁止の仮処分」です。

不動産処分禁止の仮処分の効果

この仮処分が認められると、登記簿上に「処分禁止の仮処分登記」がなされます。仮に相手がその不動産を第三者に売却したとしても、後から訴訟で勝訴した相続人は、その第三者に対して権利を主張(登記の抹消など)できるようになります。

これにより、相手が不動産を勝手に現金化して行方をくらますリスクを大幅に減らすことができます。

申し立ての要件と注意点

不動産の仮処分を申し立てるには、主に以下の点が必要となります。

  • 遺言が無効であることを裏付ける客観的な証拠(医師のカルテや診断書など)
  • 相手が不動産を処分しようとしている、またはその危険性があるという事情(保全の必要性)

裁判所に申し立てを行うだけでなく、一定の「担保金」を法務局に供託する必要がある点にも注意が必要です。

預金の使い込みを防ぐ「預金払戻禁止の仮処分」

遺産の大部分が預貯金である場合、相手が勝手に対象口座から引き出して使い切ってしまうリスクがあります。これに対処するのが「預金払戻禁止の仮処分」です。

預金払戻禁止の仮処分の効果

この仮処分を裁判所が認め、金融機関に決定書が送達されると、対象となった預貯金の引き出しや解約が一時的に禁止されます。

なお、以前は最高裁判所の判例により、遺産分割協議が終わる前は共同相続人の一人による預金の単独払戻しが原則として制限されていましたが、その後の判例変更や法改正により、一定の範囲内で単独払戻しが可能(預貯金債権の仮払い制度)になっています。そのため、悪質な相続人が勝手に使い込んでしまうリスクは依然として存在しており、仮処分の重要性は高いといえます。

申し立てにおけるハードル

預金の払戻禁止の仮処分は、不動産の仮処分に比べて「保全の必要性(今すぐ禁止しなければならない切迫した理由)」のハードルがやや高い傾向にあります。

単に「使い込まれそう」という主観的な不安だけではなく、相手に浪費癖があることや、すでに他の口座から不正に引き出している実績など、客観的な事実を示す証拠を揃えて申し立てる必要があります。

最新の法改正と不動産登記・保全手続きの重要性

相続をめぐる法制度は近年大きな転換期を迎えています。

2024年4月からは相続登記が義務化され、さらに2026年4月からは住所変更登記の義務化も控え、不動産の権利関係をめぐる法的な透明性と管理がより厳格になっています。また、全国の所有者不明地問題を解決するための法整備も進んでいます。

このような背景の中で、遺産分割や遺言の有効性をめぐる紛争においても、適正な手続きを迅速に行うことが不可欠です。仮処分は高度な専門知識と迅速な対応を要する法的手続きであり、誤った申し立てを行うと時間と費用が無駄になってしまいます。

仮処分の申し立てを検討される方へ

遺言無効訴訟の係属中に相手が財産を処分・消費してしまうおそれがある場合は、判決をただ待つのではなく、速やかに「仮処分」の申し立てを視野に入れることが極めて重要です。

仮処分の要件を満たしているか、どのような証拠が必要か、また担保金はどの程度用意すべきかといった問題は、個別の事案によって大きく異なります。

取り返しのつかない事態を未然に防ぐためにも、遺産相続や保全処分に精通した弁護士などの専門家に、できるだけ早い段階でご相談されることを強くお勧めいたします。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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