会社法361条1項と退職慰労金
2024/11/02 更新
会社法361条1項と退職慰労金
(1)会社法361条1項は、お手盛り(取締役が自分で報酬を決めれるとすると不当に高額な報酬を決めてしまう危険性)を防止するために、取締役の報酬を定款又は株主総会の決議で定めることとし、株主の判断に委ねています。
(2)退職慰労金(役員の退職金)も会社法361条1項の報酬等に該当し、定款又は株主総会の決議によって報酬の金額が定められなければ、具体的な報酬請求権は発生しません。
退職慰労金の不支給と損害賠償請求
取締役が退任したが、退職慰労金が支給されない場合、退職慰労金を支払う旨の特約と、退職金を支給しない合理的な理由がない場合には、相当額について民法709条による損害賠償請求が認められる余地があります。
過半数株主による約束
過半数を超える支配的な株主(つまり、退職慰労金支給決議を実質的に決定できる株主)が、退職慰労金を支給すると説明していたが、退職慰労金を支給する旨の株主総会決議をしない場合に、損害賠償請求を認めたものがあります(佐賀地判平成23年1月20日判タ1378号190頁)。
退職慰労金の規定
退職慰労金の金額を決める規定があり、同規定にしたがって他の役員が退職した場合には退職慰労金が支払われていた場合には、損害賠償請求を認めたものがあります(福岡地裁令和4年3月1日判タ1506号165頁)。
退職慰労金の規定があり、同規定にしたがって他の役員が退職した場合には退職慰労金が支払われていた場合には、刑事罰に該当するような行為(平手打ちの暴行を行ったこと)をしても役員としての功績を抹消するような非違行為であるとは認められないとして損害賠償請求を認めたものがあります(福岡高裁令和4年12月27日 判タ1510号208頁)。
参考
判例タイムズ1506号165頁以下
判例タイムズ1510号208頁以下