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親の死後、銀行口座が凍結されるのはどのタイミングですか?

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

親の銀行口座が凍結される正しいタイミング

Q 親が亡くなった後、銀行口座はいつ凍結されますか?
A 市区町村役場へ死亡届を提出したタイミングではなく、遺族からの連絡などを通じて「銀行が口座主の死亡を把握した瞬間」に凍結されます。

「役所に死亡届を提出すると、その情報が金融機関に共有されて自動的に口座が凍結される」と思われている方が多くいらっしゃいます。しかし、これは一般的な誤解です。

行政機関と民間銀行のシステムは連動していません。そのため、死亡届を出しただけでは口座は凍結されず、「遺族が銀行の窓口や電話で死亡の連絡をした瞬間」や、新聞のおくやみ欄・地域のお知らせなどで銀行側が訃報を独自に確認したタイミングで凍結されます。

したがって、連絡をしない限り数週間〜数ヶ月間口座が動かせる状態のままになることもありますが、放置しておくことには大きなリスクが伴います。

なぜ銀行口座は凍結されるのか?その理由と影響

金融機関が口座主の死亡を知った際、即座に口座を凍結するのには明確な理由があります。

遺産保護と相続トラブルの防止

口座主が亡くなった時点で、その預貯金は単なる個人の資産から「相続人全員の共有財産」へと性質が変化します。特定の相続人が勝手に預金を引き出してしまうと、他の相続人の取り分が減り、深刻な親族間トラブルに発展するおそれがあります。銀行は無用な争いや損害賠償請求に巻き込まれるのを防ぐため、支払いをストップさせるのです。

凍結されるとできなくなること

口座が凍結されると、該当の口座に関するあらゆる取引が停止します。

  • 窓口やATMでの現金の引き出し・振り込み
  • 公共料金や家賃、クレジットカードなどの口座振替(自動引き落とし)
  • 給与や年金などの入金受け取り

一度凍結されると、原則として相続人全員による所定の手続きが完了するまで解約や引き出しはできません。

口座凍結によって発生する主なトラブル

口座が凍結されることで、遺族の生活や今後の手続きに以下のような支障が出ることがあります。

公共料金やクレジットカードの引き落とし停止

被相続人(亡くなった親)の口座を各種支払いに指定していた場合、引き落としができなくなります。電気・ガス・水道などのインフラがストップしたり、未払い請求書が自宅に届いたりするため、早急に契約名義や引き落とし口座の変更手続きを行う必要があります。

葬儀費用や当面の生活費の不足

葬儀費用や医療費の清算、残された配偶者の当面の生活費など、親の死直後はまとまった現金が必要になります。「親の口座から出せばよい」と考えて死亡連絡を遅らせたり、無断でATMから引き出したりすると、他の相続人から不当利得返還請求や遺産隠しを疑われる原因になります。

凍結された口座からお金を引き出す方法

口座が凍結されても、正当な手順を踏めば資金を確保することは可能です。

1. 遺産分割前の「仮払い制度(払戻制度)」を利用する

2019年の民法改正により、遺産分割協議が終了していなくても、各金融機関の窓口で一定額まで預貯金の払い戻しが受けられる「仮払い制度」が創設されました。

単独で請求できる金額は以下の計算式で算出されます。

  • 【単独で払い戻しできる額】= 死亡時の預金残高 × 3分の1 × 請求する相続人の法定相続分

ただし、同一の金融機関につき上限150万円までという制限があります。葬儀費用や当面の急用資金であれば、この制度を活用することで対応可能です。

2. 正式な相続手続き(遺産分割協議完了後)

全額を解約・名義変更するためには、原則として以下のいずれかの書類を銀行に提出する必要があります。

  • 遺言書がある場合:遺言書、検認調書(必要な場合)、被相続人の戸籍謄本など
  • 遺産分割協議を行う場合:遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、出生から死亡までの戸籍謄本一式など

必要な戸籍謄本を揃えるだけでも時間がかかるため、早期の準備が重要です。

相続手続き全体を見据えた注意点

預貯金の手続きだけでなく、親が残した資産全体の手続きを視野に入れて動くことが大切です。

特に不動産を所有していた場合、2024年4月1日から「相続登記(不動産の名義変更)」が義務化されました。不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行わない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。また、2026年4月からは住所変更登記の義務化も施行されるため、不動産と預貯金の手続きは並行して進める必要があります。

預貯金の解約手続きで集めた戸籍謄本一式は、不動産の相続登記や相続税の申告にもそのまま活用できます。効率よく手続きを進めるためにも、収集した書類は一元管理しておきましょう。

まとめ

親が亡くなった際、銀行口座が凍結されるタイミングは「役所に死亡届を出したとき」ではなく、「銀行が死亡の事実を知った瞬間」です。

葬儀費用などの急な出費が必要な場合は、無断でATMから引き出すのではなく、「仮払い制度」などの法的に認められた手続きを利用することがトラブル回避の鍵となります。

相続手続きは、預貯金の解約だけでなく不動産の相続登記義務化への対応や遺産分割協議など、専門的かつ複雑な知識を要する場面が多々あります。手続きに不安がある場合や、相続人同士での話し合いがスムーズに進まない場合は、早めに弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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