遺言書で特定の子供に財産を渡さないことはできるのか
遺言書を作成する際、「日頃から疎遠である」「自分に対して著しく不誠実な態度をとった」などの理由から、特定の子供にだけは財産を一切残したくないと考える方も少なくありません。
結論からお伝えすると、遺言書に「特定の子供に財産を相続させない」と書くことは法的に可能です。しかし、それだけでその子供の権利を完全に奪えるわけではありません。民法で守られた権利や、正しい法的手続きを知っておく必要があります。
遺言書に「相続させない」と書いた場合の効果
遺言書に「長男の〇〇には一切の財産を相続させない」と明記することは、遺言者の最終意思として有効です。これによって、その子供は遺産分割協議に参加する必要がなくなります。
しかし、ここで大きな問題となるのが「遺留分(いりゅうぶん)」という制度です。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保障されている遺産の取得分のことです。
子供(第一順位の相続人)の遺留分は、原則として「法定相続分の2分の1」となります。 たとえば、相続人が配偶者と子供2人の場合、子供1人あたりの法定相続分は4分の1であり、その半分である「8分の1」が遺留分となります。
そのため、遺言書によって「財産を渡さない」と指定しても、その子供が遺留分侵害額請求権を行使してきた場合、最低限の金銭を支払わなければならない結果となります。
遺留分を侵害された子供からの請求リスク
遺言書によって財産をもらえなかった子供は、財産を受け取った他の相続人(配偶者や他の兄弟など)に対して、遺留分侵害額請求を行うことができます。
この請求がなされると、実質的に金銭トラブルに発展し、遺族間で長引く紛争の火種になるケースが少なくありません。 「財産を渡したくない」という理由だけで遺言書にその旨を記載するだけでは、将来の相続トラブルを完全に防ぐことは難しいのが実情です。
また、近年の法改正により、不動産の相続においては2024年4月から相続登記の申請が義務化され、正当な理由なく放置するとペナルティが科されるなど、相続手続きの厳格化が進んでいます。遺言書の内容をめぐる紛争は、不動産処分の遅延などにも直結するため注意が必要です。
完全に相続権を奪う「相続廃除」という方法
「遺留分すら一切渡したくない」「どうしても特定の子供から相続権を剥奪したい」という場合は、遺言書への記載だけではなく、家庭裁判所への「相続廃除(はいじょ)」の申し立てを行う必要があります。
相続廃除とは、被相続人(亡くなった人)に対して虐待をした、重大な侮辱を加えた、または著しい非行があった場合に、その人の相続権を家庭裁判所の審判または調停によって奪う制度です。
相続廃除が認められるには、以下のような厳格な要件を満たしている必要があります。
- 被相続人に対する暴行や虐待があったこと
- 著しい非行や、精神的な苦痛を与え続けるような行為があったこと
- 単に仲が悪い、疎遠であるというだけでは認められない
また、相続廃除は生前に行うだけでなく、遺言書の中で廃除の意思を表示することも可能です。遺言書に廃除の旨を書き、遺言執行者が死後に家庭裁判所へ申し立てを行うことで、特定の子供の相続権を法的に剥奪することができます。
まとめ:法的リスクを避けるための専門家への相談
特定の子供に財産を渡さないようにすることは、遺言書の活用や相続廃除の手続きによって可能です。しかし、要件を満たさずに感情的な動機だけで進めてしまうと、かえって大きなトラブルを招く原因となります。
遺言書の有効性を高め、将来の紛争を未然に防ぐためには、個別の事情に応じた適切な文面の作成や法的手続きの選択が不可欠です。少しでも不安や疑問がある場合は、相続問題に強い法律の専門家に早めにご相談されることを強くおすすめします。
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