遺留分侵害額請求をされたものの、手元に支払うための現金がないという状況に直面すると、どう対処すべきか途方に暮れてしまう方も少なくありません。遺留分は法律で認められた正当な権利であるため、請求を完全に無視することはできませんが、現金がない場合でも適切に対応する方法は用意されています。
ここでは、現金を用意できない場合の具体的な解決策や、2024年の法改正を踏まえた対応のポイントについて詳しく解説します。
遺留分侵害額請求の支払いに現金がない場合の解決策
遺留分侵害額請求権を行使された場合、原則として金銭での支払いが求められます。しかし、不動産が遺産の大部分を占めており、預貯金などの現金がないケースはよくあります。
現金がないからといって支払いを放置すると、遅延損害金が発生したり、財産の差押え(強制執行)を受けたりするリスクがあるため注意が必要です。現金一括で支払えない場合の主な解決策としては、以下の2つが挙げられます。
- 裁判所に「相当の期限の許与」を申請する
- 相手方と交渉または調停で「分割払い」の合意をする
それぞれの具体的な手続きと注意点をみていきましょう。
裁判所に「相当の期限の許与」を申請する
民法では、受遺者や受贈者が遺留分侵害額請求を受けた際、支払いのために相当の期限の許与を裁判所に求めることができると定めています。
裁判所がこの請求を認めると、一時的に支払いの猶予(通常は数ヶ月〜半年程度)が与えられます。この猶予期間の間に、不動産を売却して現金を作ったり、金融機関から融資を受けたりして資金を調達することが可能です。ただし、自動的に認められるわけではなく、裁判所に対して合理的な理由や資金化の計画を示す必要があります。
分割払いの調停・裁判上の和解を利用する
相手方との話し合い(協議)や、裁判所を介した遺産分割調停・訴訟の中で、分割払いによる和解を目指す方法です。
遺留分侵害額請求は原則として一括払いが基本ですが、法律上の強制ではなく、当事者間で合意ができれば分割払いも有効です。
- 毎月の返済額と支払期間を明確にする
- 和解条項に「期限の利益喪失条項(分割払いを怠った場合、残額を一括請求できる)」を盛り込む
上記のような条件を設定することで、相手も安心して分割払いに合意しやすくなります。合意内容は必ず「調停調書」や「公正証書」の形に残しておくことが重要です。
現金がないからと放置してはいけない理由とリスク
「お金がないから払えない」と相手からの請求を無視し続けることは、非常に大きなリスクを伴います。
相手が裁判を起こして勝訴した場合、最終的には自宅や預貯金などの財産が差し押さえられる強制執行の手続きに入られてしまいます。また、支払いが遅れる期間に応じて、年3%(状況によっては変動あり)の遅延損害金が上乗せされていくため、結果的に支払総額が膨らんでしまいます。
そのため、現金がないと判明した時点で、早めに弁護士などの専門家に相談し、適切な法的措置を講じることが賢明です。
不動産売却や名義変更に関する最新の注意点
遺留分の支払資金を作るために相続した不動産を売却する場合、最新の法制度にも注意を払う必要があります。
近年、相続登記の義務化をはじめとする法改正が相次いで施行されています。
- 2024年4月1日から相続登記の申請が義務化され、正当な理由なく放置すると過料が科される可能性があります。
- 2026年4月からは住所変更登記等も義務化されます。
不動産を売却して遺留分の支払いに充てる場合でも、まずは自身への相続登記を正確に完了させなければ売却手続きを進めることができません。また、所有不動産記録証明制度などを活用して、故人が所有していた不動産の全貌を正確に把握することもスムーズな解決には不可欠です。
現金がないからと焦って安易な処分をするのではなく、正確な財産調査を行った上で、計画的に解決策を実行していくことが求められます。
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