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遺言書で「遺言執行者」に指定されたのですが、辞退することはできますか?

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

遺言書を開封した際、ご自身が「遺言執行者」に指定されていることを知って驚かれる方は少なくありません。遺言執行者は遺言内容を実現するために重要な役割を担いますが、さまざまな理由からその務めを果たせないケースもあります。

結論からお伝えすると、遺言執行者に指定された場合でも辞退することは可能です。ただし、いつでも自由に放棄できるわけではなく、家庭裁判所の許可を得るなどの法的な手続きが必要となります。

この記事では、遺言執行者の辞退方法や必要な理由、辞退する際の流れについて分かりやすく解説します。

遺言執行者は辞退できるのか?

Q 遺言執行者に指定されましたが、辞退することはできますか?
A 正当な理由があり、家庭裁判所の許可を得ることで辞退(任務の辞任)が可能です。ただし、就職の承諾をした後と、承諾前では手続きの要件や難易度が異なります。

遺言書によって遺言執行者に指定された人(指定遺言執行者)は、その役割を強制されるわけではありません。民法上も、指定を受けた後に辞退する道が用意されています。

しかし、誰でもいつでも無条件に辞退できるわけではありません。また、「遺言執行者に就職することを承諾したかどうか」によって、手続きの方法が大きく変わる点に注意が必要です。

遺言執行者の就職前と就職後での違い

遺言執行者に指定された段階では、まだ法的な義務は発生していません。

  • 就職前(指定段階): 遺言者が亡くなった後、遺言執行者に指定された人は、その役割を引き受けるか(就職の承諾)、拒否するかを自由に判断できます。拒否する場合、相続人などに対して特に家庭裁判所の許可を得ることなく辞退の意思を伝えることが可能です。
  • 就職後(承諾後または一部活動開始後): 一度就職を承諾してしまった場合や、すでに執行業務に着手してしまった場合は、原則として正当な理由がなければ辞退することはできません。

遺言執行者を辞退するために必要な「正当な理由」

すでに就職の承諾をした後や業務の途中で辞任したい場合、民法上では「正当な事由があるとき」に限り、家庭裁判所の許可を得て辞任できると定められています。

ここで言う「正当な理由」として認められやすい主なケースは以下の通りです。

  • 高齢や病気・健康上の理由:心身の衰えや慢性的な疾患により、複雑な執行業務を遂行することが困難な場合。
  • 多忙や業務上の都合(過度の負担):自身の本業が非常に忙しく、物理的に遺言執行のための時間を確保できない場合。
  • 遠方に居住していることの困難さ:被相続人や相続人の居住地と自身の居住地が遠く離れており、不動産の売買手続きや金融機関での手続きに著しい支障が出る場合。
  • 相続人との関係悪化や利害の対立:相続人間で激しい紛争が発生しており、中立公正な立場での執行が著しく困難である場合。

単に「面倒だから」「自分の時間を取りたいから」といった個人的な理由だけでは、家庭裁判所から正当な理由として認められない可能性があるため注意が必要です。

遺言執行を辞退する際の手続きと流れ

実際に遺言執行者を辞退(辞任)する際の手続きは、就職の前後や状況によって異なりますが、主に家庭裁判所への申し立てが必要になるケースが一般的です。

1. 相続人等への速やかな通知

辞退を希望する場合、まずは相続人や受遺者(遺言によって財産を受け取る人)に対して、速やかに辞退の意向を伝える必要があります。特に就職前の段階であれば、書面などで「遺言執行者への就任を辞退する」旨を通知します。

2. 家庭裁判所への「辞任許可の申し立て」

すでに就職を承諾している場合は、管轄の家庭裁判所に対して「遺言執行者の辞任許可申し立て」を行います。

  • 申し立て先:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 必要書類の例
    • 遺言執行者辞任許可の申し立て書
    • 遺言書の写し(または戸籍謄本など)
    • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
    • 辞任の理由を証明する資料(診断書など、状況に応じて)

3. 家庭裁判所の審理と許可

家庭裁判所は、提出された理由が民法上の「正当な事由」に該当するかどうかを審査します。理由が妥当と判断されれば、辞任が許可されます。

遺言執行者を辞任する際の注意点

遺言執行者の辞退を検討する際には、以下の点に十分注意してください。

  • 突然の放置は避ける: 遺言執行者に指定されたことを知っていながら何の連絡もせず放置すると、相続手続き全体が滞ってしまいます。就任しない場合は速やかに意思表示をしましょう。
  • 財産の管理義務に注意: すでに執行業務の一部に着手している場合、次の遺言執行者が選任されるまでの間、相続財産の管理を怠ると損害賠償責任を問われるリスクがあります。
  • 専門家への相談を検討する: 「相続人同士の仲が悪い」「手続きが複雑で自分一人では荷が重い」という理由で辞退を考えている場合でも、弁護士などの専門家にサポートを依頼することで、辞退ではなく円滑な執行が可能になるケースもあります。

遺言執行者の辞任手続きは、法的な要件や裁判所への書類作成など、一般の方には負担が大きい作業を伴います。ご自身の健康状態や業務上の理由で辞退を希望される場合は、無理をせず、相続問題に強い法律事務所の弁護士へ早めにご相談ください。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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