遺言書に「長男にすべての財産を相続させる」と書かれていた場合、次男としては「自分は1円も遺産をもらえないのだろうか」と大きな不安を感じることでしょう。結論から申し上げますと、次男は一銭ももらえないわけではありません。
日本の民法には、遺言の内容にかかわらず一定の相続人が最低限受け取れる権利が保障されています。これが「遺留分(いりゅうぶん)」と呼ばれる制度です。
本記事では、遺言によって財産をもらえなくなった次男が取るべき対応や、遺留分の請求方法についてわかりやすく解説します。
遺言書で「全財産を長男に」とあっても次男は遺留分を請求できる
被相続人(亡くなった方)は、遺言書によって「誰に、どの財産をどれだけ譲るか」を自由に決めることができます。これを遺言の自由といいます。
しかし、残された家族の生活保障や公平性を考慮し、民法では「遺留分」という制限を設けています。そのため、たとえ「全財産を長男に相続させる」という遺言があったとしても、次男をはじめとする一部の相続人は、自分の遺留分を主張して財産を取り戻すことが可能です。
次男の遺留分はどれくらい?
今回のケース(相続人が母と長男・次男の場合など、配偶者と子2人が相続人のケース)で考えてみましょう。
法定相続分は配偶者が2分の1、子が各4分の1ずつとなりますが、今回の質問では配偶者の有無に触れられていないため、子2人のみが相続人のケース(法定相続分は長男2分の1、次男2分の1)で計算します。 子のみが相続人の場合、全体の遺留分の割合は「2分の1」です。これを人数分で分けるため、次男の遺留分は以下のようになります。
- 全体の遺留分:総財産の2分の1
- 次男の個別遺留分:総財産の4分の1(2分の1 × 2分の1)
つまり、次男は遺言によって1円ももらえなかったとしても、総財産の4分の1相当額を長男に対して請求する権利を持っています。
遺留分を請求するための重要なステップと注意点
長男に対して遺留分を取り戻すためには、正当な手続きを踏む必要があります。ここでは、具体的なアクションと注意すべきポイントを解説します。
1. 遺留分侵害額請求権を行使する
遺留分を請求する権利を「遺留分侵害額請求権」といいます。以前は「遺留分減殺請求」と呼ばれていましたが、2019年7月の民法改正により、請求された側は原則として「金銭」で支払うことになりました。
したがって、不動産そのものの持分を分けてもらうのではなく、「私の遺留分に相当する金銭を支払いなさい」と長男に請求することになります。
2. 消滅時効に注意する(期限は1年)
遺留分侵害額請求には、厳格な期限(時効)が定められています。以下のいずれかの期間を過ぎると、権利が消滅してしまうため注意が必要です。
- 相続の開始および「遺留分を侵害する遺言があったこと」を知った日から1年間
- 相続開始の時から10年間(知らなかった場合でも同様)
「長男に全財産が行く」という遺言書の存在を知った日(あるいは遺言書が開封された日)から1年が経過すると請求できなくなるため、迅速な対応が求められます。
3. 書面(内容証明郵便)で請求の意思を示す
口頭で「遺留分をくれ」と言っても、のちのトラブルに発展したり、時効の進行を止められなかったりするリスクがあります。そのため、遺留分の請求は「内容証明郵便(配達証明付き)」を利用して行うのが専門的な実務における定石です。
内容証明郵便を使用することで、「いつ、誰が、誰に対し、遺留分を請求したか」の証拠を法的に残すことができ、時効の完成を一時的にストップさせる効果も得られます。
最新の法改正と不動産が絡む相続の注意点
相続財産に自宅などの不動産が含まれている場合、近年の法改正に伴う重要なポイントを押さえておく必要があります。
遺留分侵害額請求と不動産の評価
長男が不動産を相続し、次男が金銭で遺留分を請求する場合、その「不動産の価値(評価額)」をめぐって意見が対立することがよくあります。 時価評価の基準日は原則として相続開始時となりますが、当事者間で折り合いがつかない場合は、不動産鑑定士の評価を入れるなど、専門的な交渉が必要になります。
相続登記の義務化への対応
2024年4月1日から、相続登記の申請が法律上の義務となりました。不動産を相続した人は、所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行わなければ、過料(罰則)の対象となります。 遺言書によって長男が不動産を単独名義にする場合も同様ですので、長男側においても速やかな手続きが必要です。
また、2026年4月からは住所変更登記も義務化されるなど、不動産をめぐる法制度は厳格化の一途をたどっています。次男からの遺留分請求と並行して、不動産の権利関係や名義変更についてもスムーズに進めることが大切です。
まとめ:話し合いが難航する場合は専門家への相談を
遺言書に「長男に全財産を譲る」と書かれていたとしても、次男は泣き寝入りする必要はありません。法律で認められた遺留分(4分の1等)を主張し、金銭での支払いを請求することができます。
しかし、1年という短い時効があることや、長男との感情的な対立から、当事者間での話し合いが難航するケースは少なくありません。 「正確な遺留分の金額がわからない」「長男が話し合いに応じてくれない」「内容証明郵便の書き方が不安」といった場合は、相続問題に強い弁護士などの専門家に早めにご相談することをおすすめします。法的根拠に基づいた適切なアプローチにより、スムーズな解決が期待できます。
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