親が認知症と診断された後や、判断能力が低下した状態で遺言書が作成されているのを見つけて、「本当にこの遺言書の内容通りに相続していいのだろうか」「無効にできるのではないか」と不安や疑問を抱える方は少なくありません。
結論から申し上げますと、遺言を作成する時に遺言者に「遺言能力(自分の行為の結果を理解し、判断する能力)」がなかった場合、その遺言書は無効と主張することができます。
認知症の親が書いた自筆の遺言書は無効にできる?
自筆証書遺言の形式上の要件(自署や押印など)が形式的に満たされているように見えても、作成時の本人の精神状態に問題があった場合、法律的にはその効力が争われます。遺言を有効に成立させるためには、単に文字が書けるだけでなく、自分の財産を誰にどのように相続させるかを正常に判断できる能力が不可欠だからです。
相続人の間で話し合いがつかない場合は、家庭裁判所での調停や訴訟を通じて遺言書の無効確認を求めることになります。
意思能力がなかったことを立証するための重要な証拠
遺言書の無効を裁判などで主張するためには、単に「当時、認知症が進んでいた気がする」という主観的な主張では認められません。遺言書の作成時期における客観的な事実や、医療・介護の記録に基づいた証明が必要となります。
主に以下のような資料が強力な証拠となります。
- 病院のカルテや医師の診断書(長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の点数など)
- ケアマネジャーが作成したケアプランや介護認定調査票
- デイサービスなどの利用時の連絡帳や介護日誌
- 当時の本人の言動が記録されたメモや日記、メールなど
これらの資料には、作成当時の本人の精神状態や認知機能のレベルが詳細に記録されているため、意思能力の有無を判断するための極めて重要な証拠となります。
遺言無効確認訴訟を進める際の流れと注意点
遺言書に納得がいかず、無効を主張したい場合、まずは相続人の間で話し合いを行う「遺言無効確認調停」を申し立てるのが一般的です。調停で合意に至らない場合は、地方裁判所へ「遺言無効確認請求訴訟」を提起して裁判で決着をつけることになります。
裁判で遺言の無効を認めさせるためには、専門的な法的知識や、膨大な証拠の収集・分析が欠かせません。
また、遺言書をめぐるトラブルを解決した後は、不動産の名義変更(相続登記)を行う必要があります。2024年4月1日からは相続登記の申請が法律上の義務となり、正当な理由なく放置すると過料が科されるペナルティもありますので注意してください。さらに、2026年4月からは住所変更登記も義務化されるなど、不動産を巡る法制度は厳格化しています。
認知症の親が残した遺言書の効力について疑問や不安がある場合は、ご自身だけで判断せず、相続問題や遺言無効確認訴訟に強い弁護士などの専門家に早期に相談することをおすすめします。
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